介護報酬とは?誰が決める?今さら聞けない介護保険の基本を解説!
介護報酬とは、介護事業所の貴重な収入源であり、介護職の給料の財源となるものです。ただ、その仕組みには国や地方自治体が関わることもあり、複雑に感じられることも多いでしょう。そこで今回の記事では介護報酬にまつわる基本的な知識を解説します。2024年に迫る介護報酬改定についても分かりやすくまとめているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
介護報酬とは?
まずは、「介護報酬とは?」について概要をお伝えします。
介護報酬とは「サービスへ支払われる費用」
介護報酬とは、介護事業者が要介護・要支援の利用者さんに介護サービスを提供したときに、対価として支払われるサービス費用のことです。介護事業者にとって介護報酬は事業収入にあたり、介護職にとっては給料の財源となります。
介護報酬の流れ
厚生労働省が公開する「介護報酬について」によると、「介護報酬は、介護保険法上、厚生労働大臣が社会保障審議会(介護給付費分科会)の意見を聞いて定めることとされている」とあります。つまり、介護報酬を決めるのは国であり、事業所が勝手に決めることはできません。
介護報酬が支払われる流れは、こちらの厚生労働省が公開している図をご覧ください。
介護報酬とは、介護保険の被保険者である利用者さん・サービスを提供する介護事業者・保険者である市町村の3つが関わる制度です。
要介護・要支援の利用者さんへ介護保険サービスが提供された場合、サービス費用の1~3割は利用者さんから事業所へ自己負担分として支払われます。そして、残りの7割~9割については事業所から市町村へ請求が行われ、それを受けて市町村から介護給付費として事業所へ支払われるのです。
なお、この市町村が支払う介護報酬のうち半分は介護保険料から、もう半分は公費からまかなわれています。これは介護報酬の基本的な知識として覚えておきましょう。
介護報酬が決まる仕組み
介護報酬とは、介護保険サービスごとに厚生労働省が設定する基準によって算出される費用です。仕組みとしては、基本金額をベースに、各事業所のサービス提供体制や利用者さんの状況などに応じて加算や減算が行われます。
介護報酬を決めるのは、
- 厚生労働省が定める「地域区分」
- 提供される介護サービスの種類(人件費)
- 利用者さんの要介護度(要支援度)
といった要素です。これらの条件を掛け合わせることで、実際の介護報酬額や自己負担額が割り出されています。
介護報酬の単位とは
介護報酬とは金額表示されるものではなく、「単位」と呼ばれる独自の表示形式によって設定されています。単位とは、地域区分やサービスの種類などによって決められた点数のことです。この点数に1単位ごとの単価(1単位=10円)を掛け合わせたものが介護報酬であり、計算式にすると「単位数×単価=介護報酬」で求められます。ただし、単価は一定ではありません。地域やサービスの種類の違いによって最大11.4円まで加算される場合があります。
なお、介護報酬が単位換算を採用しているのは、地域による物価や人件費の格差を埋めるため。物価や人件費は年々変動していくため、3年毎に見直しが実施されています。
介護報酬の計算方法
介護報酬の算出に必要な単価を決めるのは、地域区分と各サービスの人件費割合の2つです。
地域区分とは、1級地から7級地、その他の地域の計8区分のことを指し、区分の数字が小さければ小さいほど単価への上乗せ額が上がる仕組みです。
例えば、1級地である東京都23区の場合、上乗せ割合は20%に設定されています。中四国地方でみてみると、広島県の広島市・府中町が最も高い5級地で、上乗せ割合は10%です。島根県・鳥取県・愛媛県・徳島県・高知県の5県は“その他の地域”に区分されているため地域区分による加算はありません。
また、奄美群島や小笠原諸島といった離島・北海道などの豪雪地帯では特定の介護サービスを提供する場合に限り、特別地域加算が追加されるようです。
次に、各サービスの人件費割合を見てみましょう。介護報酬の算出には、地域によって物価や人件費が違うことを考慮し、単価による調整が必要です。この人件費の加算率は、70%・55%・45%・0%の4つの区分に分けられます。
例えば、訪問介護や訪問看護といったサービスでは、人件費割合が70%に設定されています。このサービスを1級地に該当する地域で提供した場合、地域区分の上乗せ割合が20%となるため、単価(10円)×上乗せ割合×人件費割合=10×0.2×0.7=1.4円が加算額です。つまり、単価は10円+1.4円=11.4円となります。
なお、居宅療養管理指導や福祉用具貸与など、介護報酬に人件費が含まれないケースでは人件費割合は0%です。
その他にも、介護報酬の算出にはあらゆる条件を掛け合わせる必要があり、難しいと感じる方も多いでしょう。その場合には厚生労働省が公開する「介護サービス概算料金の試算」がおすすめです。無料で利用できるので、ぜひ活用してみましょう。
介護報酬は3年ごとに改定される
介護報酬は、2006年からの介護保険制度の施行以来、3年毎に改定されています。
これまでの改定内容
直近2回にあたる、2018年・2021年の改定では、介護報酬がプラスに改定されました。その背景には現場の人材不足や物価上昇などの影響があると考えられています。介護サービスを必要とする高齢者数も年々増えているため、介護報酬の値上げは介護施設経営者や介護職にとって重要な改定であると言えるでしょう。
厚生労働省の「平成30年度介護報酬改定の主な事項について」によると、2018年の介護報酬は+0.54%の改定率でした。
その他にも、
- 地域包括ケアシステムの推進
- 自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現
- 多様な人材の確保と生産性の向上
- 介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保
という4つの軸で整備されています。
続いて、2021年の改定では、厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」によれば、介護報酬は+0.70%の改定率でした。
この年の改定では、
- 感染症や災害への対応力強化
- 地域包括ケアシステムの推進
- 自立支援・重度化防止の取組の推進
- 介護人材の確保・介護現場の革新
- 制度の安定性・持続可能性の確保
について整備され、新型コロナウイルス感染症の拡がりや各地を襲った大災害の影響で新たに追加された取り組みもありました。
なお、2022年には臨時改定として、介護職などの給料を3%程度引き上げることが行われています。
次回は2024年!どう改定される?
次回の介護報酬改定は2024年に予定されています。この年には、介護報酬だけでなく、医療保険や障害者総合支援法の改定も同時に行われるため、国の制度に大きな変化が起こる年とも言われているようです。
改定が間近に迫った今、活発に議論がなされている最中ですが、その中でも以下のようなポイントが重視されています。
- 在宅サービスの基盤整備
- 財務状況等の見える化
- 住まい支援システム構築
- 利用者負担額の判断基準の見直し
- 科学的介護(LIFE)の推進
2025年には“団塊の世代”が75歳以上になり、さらなる介護人材不足や介護保険料の増加が懸念されています。2024年度の改定はそういった状況への抑制策となるか、注目が集まっているようです。
介護の現場が大きく変わる!2024年の介護報酬改定に注目しよう
介護報酬とは介護事業所や介護職にとってとても身近な制度です。しかし、詳しい内容までしっかり把握できていないという方も多いでしょう。3年ごとの改定内容にまで注目すると今後の介護の現場がどう変わっていくか予測できるため、改定の動向に注目していくことをおすすめします。今回お伝えした内容をもとに、ぜひ介護報酬の知識を深めてみてください。