ユニットケアの理念は個別ケア!考え方やメリット・デメリットを解説
最近増えてきているのが、ユニットケアを取り入れている介護施設です。ユニットケアは個別ケアを前提とし、少人数での共同生活を行います。しかし、ユニットケアも増えつつありますがまだ従来型の施設も多く、違いや働き方が把握できないという声もあるよう。そこで今回は、ユニットケアの理念や考え方について解説していきます。自分の働き方を検討しているなら、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ユニットケアとはどんなもの?
まずは、ユニットケアについての基本事項を押さえていきましょう。
ユニットケアの定義とは
ユニットケアの定義は、利用者さん一人ひとりの生活リズムに合わせてサポートする介護ケアのこと。10人ほどの少人数をひとつのユニットとして、固定された利用者さんと介護スタッフが共同生活を送ります。プライベートの時間は個室で過ごし、リビングスペースではユニットの仲間や介護スタッフと交流するといったように、利用者さんは介護ケアを受けながらも自宅での生活とあまり変わらない住環境で過ごすことができるのが特徴です。
ユニットケアが本格的に取り入れられるようになったのは2001年から。比較的新しい介護の形です。ユニットケアは主に特別養護老人ホーム(特養)で取り入れられていますが、現在はほかの介護施設でも導入が進められています。
ユニットケアの理念は個別ケアの実現
介護が必要になっても、今まで通りの生活を送りたいと望む利用者さんもたくさんいます。ユニットケアの理念は、一人ひとりのプライバシーと尊厳を大切にすること。助けが必要なところはサポートしながら、好きな時間に寝て好きな時間に起きる、趣味の時間を持つ、家族との食事など、これまでの暮らしを継続できる環境を目指します。自宅と近い環境の中、利用者さんそれぞれの生活リズムを把握し、利用者さんらしいライフスタイルを保てるよう個別ケアを行う、これがユニットケアの特徴です。
ユニットケアの実践には3つの要素が必要
ユニットケアを上手く機能させるためには、ハード(環境面)、ソフト(生活のサポート)、システム(運営の仕組み)の3つの要素が重要になります。この3つが上手くかみ合うことで、快適な暮らしの提供につながるでしょう。
ハード(環境面)
利用者さんそれぞれの個室があることは、ユニットケアの大前提です。共有空間を囲うように個室を配置することで、利用者さん同士がコミュニケーションをとりやすくなるそう。利用者さんのプライベート空間である個室は、これまで使っていた家具などの持ち込みなどにより、なじみのある環境作りを目指します。
ソフト(生活のサポート)
ユニットケアは、利用者さんのこれまでの暮らしを把握し継続できるようサポートするのが目的です。働く介護スタッフがユニットケアの理念を理解したうえで、個別ケアを行う必要があります。社会とのつながりも感じられるよう、利用者さん同士のコミュニケーションをサポートするのも重要な役目です。
システム(運営の仕組み)
ユニットケアで重要になるのが、組織力と自立してケアを提供できる介護スタッフです。スタッフがそれぞれ力を発揮できる環境と個々の力を組織として取りまとめる仕組み作りが、ユニットケアを実践するための最重要ポイントになります。結果として効率的な組織運営につながるでしょう。
ユニットケアと従来型の違いとは?
ユニットケアが個別ケアを行うのに対し、従来型は集団ケアを行います。ユニットケアと従来型の施設の大きな違いは、ハード面である部屋の構造。従来型はひとつの部屋を複数人で利用する多床室が主ですが、ユニット型は完全個室で共有スペースを囲むような配置となっています。また、従来型の場合、効率的に介護できるようスケジュールはすべて管理された集団ケアです。それに対してユニット型は、スケジュールの決定権は利用者さんにあり、タイムスケジュールは比較的ゆるやかな傾向があります。
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ユニットケアのメリット
ユニットケアを行う施設で働く介護スタッフにとってのメリットを確認していきましょう。
利用者さんのプライベートが保てる
従来型の多床室の場合、カーテンで区切られた個人スペースがあるだけで、利用者さんのプライベートはないに等しいケースがほとんどです。それに対し完全個室のユニットケアは、利用者さんのプライベートが確保しやすいのがメリット。おむつ交換や服の着替えといった場面のプライバシーを守れるため、介護スタッフとしても安心です。
ユニット内の距離が近い
ユニットケアはユニット単位で介護スタッフが固定されており、基本的に同じメンバーです。少人数のため、利用者さんも介護スタッフもお互いにどんな人か理解しやすくなり、距離も縮まりやすいでしょう。信頼関係が構築しやすく家族のような関係性を築けるのは、ユニットケアのメリットのひとつです。
利用者さん一人ひとりに寄り添ったケアができる
利用者さんそれぞれに合わせた個別ケアが提供できるのは、ユニットケアの大きなメリット。見守る人数が少ない分目も行き届きやすく、一人ひとりをしっかりと見て状況に合わせたきめ細かな対応ができます。ユニットケアでは利用者さんが生活スタイルを決めるため、一律に対応するわけではありません。必要に応じて柔軟な対応ができるため、質の高いケアを提供しやすくなります。
ユニットケアのデメリット
ユニットケアのデメリットについてもきちんと把握しておきましょう。
距離が近い分人間関係のトラブルの対処が難しい
距離が近いのはユニットケアならではの特徴でいいことでもありますが、問題になるケースもあります。例えばユニット内で人間関係のトラブルが起きた際、距離が近い分対処が難しくなるでしょう。一度問題が起こると居心地の悪さを感じるようになり、日常生活に支障をきたす可能性もあります。利用者さん同士だけではなく、利用者さんと介護スタッフ間でトラブルが生じることもあるでしょう。
介護スタッフの負担が大きい
ユニットケアは少人数の介護スタッフで対応していくため、ひとりの負担が大きくなりがちです。個別ケアは効率よりも利用者さんのペースが優先になるため、ひとりで複数のケアを同時に行うような場面も少なくありません。効率的に動くにはどうすればいいか、介護スタッフの自立した対応力が必要になります。
ユニットケアで働くときに意識したいことは?
ユニットケアの施設で働く場合、以下のような点を意識しましょう。
困ったらすぐにユニットリーダーに相談
1~2ユニットを1人で対応する場面もあり、自分で判断して対応しなければならないこともあります。介護業務の傍らユニットを取りまとめるのが、ユニットリーダーの役目です。どうすればいいか判断できない場合は、すぐにユニットリーダーに相談して判断を仰ぐようにしましょう。ユニットリーダーを頼りながら経験を積んでいくことが、スキルアップにつながります。
少人数だからこそこまめなコミュニケーションは欠かせない
利用者さんとのつながりが重要なユニットケアでは、些細な変化を敏感に察知することが求められます。そのためには、こまめなコミュニケーションが欠かせません。利用者さんをよく観察し対話をすることが、些細な変化を見逃さないためのポイントです。コミュニケーションを通して得た利用者さんの情報は、きちんと記録し介護スタッフ同士で共有できるようにしておきましょう。
個別ケアに魅力を感じたらユニットケア導入の施設を検討して!
ユニットケアは家で過ごすような環境で過ごしてもらえる、介護の新しいスタイル。現状課題はありますが、ユニットケアを行う施設は今後主流になると言われています。利用者さんとの距離が近い分従来型とはまた違った対応が必要な場面もありますが、やりがいも大きいでしょう。アットホームな空間で利用者さんに合わせたサポートをしたい方には、ユニットケアを導入している施設での仕事を検討するのもおすすめです。