小規模多機能型居宅介護とグループホームの違いとは?メリットなども解
小規模多機能型居宅介護とグループホームの違いをご存知でしょうか?介護職に就いていても、意外と知らない方が多いかもしれません。この記事では、他の職業から介護職に転職を考えている方や、介護業界でスキルアップをはかりたい方に向けた内容になっています。それぞれの施設の特色に加えて、メリットとデメリットについても詳しく解説をしているので、ぜひ参考にしてください。
目次
【簡単に解説】小規模多機能型居宅介護とは?
小規模多機能型居宅介護は、中重度の要介護の認定を受けても、在宅での生活を続けたい方の支援を行っている小規模な居住系施設です。2006年4月の介護保険法改正によって、地域密着型の介護保険サービスとしてスタートしました。
具体的には、デイサービスを中心に、ショートステイや訪問介護サービスを組み合わせて、自宅で生活を送れるように支援を行うサービスのことです。自宅と小規模多機能型施設を行き来しながら、利用者さんが住み慣れた地域で生活を続けるためのサポートをします。
参考:厚生労働省 「どんなサービスがあるの? - 小規模多機能型居宅介」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group11.html
【簡単に解説】グループホームとは?
グループホームは、認知症と診断された高齢者を対象とする介護施設です。5〜9人の少人数で利用できる共同住宅の形態でサービスを提供しています。
認知症の方の中には、環境の変化に弱い方も多いため、小規模多機能型居宅介護とは違っていつも同じメンバーで生活するグループホームは、認知症の方にとってより良いケアを提供できる点が特徴です。
参考:厚生労働省「どんなサービスがあるの? - 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group18.html
小規模多機能型居宅介護とグループホームの違いを一覧でチェック!
小規模多機能型居宅介護 | グループホーム | |
---|---|---|
入居対象者 | 介護認定を受け、原則として施設のある市区町村に住民票のある方 | 認知症の高齢者など |
目的 | 利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう支援する | 利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう支援する |
施設の利用人数 | (通い)概ね15人以下 (宿泊)概ね9人以下 | 18人以下 (1ユニット5~9人) |
費用の目安 要支援1・2 | 利用者負担(1割) (1月につき) 3,066円~6,877円 | 要支援2のみ利用可 利用者負担(1割) (1日につき) 743円~755円 |
費用の目安 要介護1~5 | 利用者負担(1割) (1月につき) 9,298円~26,849円 | 利用者負担(1割) (1日につき) 747円~852円 |
サービス | デイサービスを中心に、必要に応じて訪問介護とショートステイを併用 | 家庭的な環境と地域住民との交流の元、食事や入浴などの生活支援や、機能訓練など |
厚生労働省HPより作成
小規模多機能型居宅介護とグループホームのサービス内容の違いについて解説!
表でもわかるように、小規模多機能型居宅介護とグループホームの目的は同じですが、利用できる人数や対象者などが違います。
では、サービス内容について詳しく解説していきましょう。
小規模多機能型居宅介護
施設を運営しているのは、基本的に社会福祉法人や医療法人などです。
通常、デイサービスや訪問介護サービスなどを利用する際は、サービスを変えるごとに介護スタッフも変わります。しかし小規模多機能型居宅介護では、デイサービス、ショートステイ、訪問介護などすべてのサービスをよく知っているスタッフから受けられることが特徴です。また少人数制(登録者数1事業所29名以下)なので家庭的な雰囲気の中、利用者さんが安心して利用しやすい環境が整っています。
施設では、利用者さんが自立した日常生活を送れるよう、一人ひとりに合わせたサービスを提供しています。24時間365日利用可能なので、ご家族にも大きな安心感があるでしょう。また、日常生活費(食費・宿泊費・おむつ代など)などは別途負担が必要ですが、介護サービス費は介護度に応じて定額利用が可能です。
グループホーム
グループホームではユニットという単位が使われており、1つのユニットは5〜9人まで入居可能です。グループホーム1施設につきユニットは原則2ユニットまでなので、最大18人までしか入所できないことになります。少人数制で介護が受けられることが特徴です。
グループホームが少人数制なのには理由があり、これは認知症の高齢者の性質と深く関係しています。認知症の高齢者は、生活環境の変化に対応することや、新しいもの・新しいことの記憶・整理などが比較的困難です。そのため、利用者数が多い大規模な施設に入居し、大きな変化に触れながら生活すると、症状の悪化やトラブルの原因になる恐れがあります。したがって、小規模で運営されているグループホームでは、環境の変化が小さく、落ち着いた環境の元、認知症の高齢者が穏やかに過ごせるのです。
小規模多機能型居宅介護や有料老人ホームとは違い、運営母体はさまざま。半分程度の運営元は、民間企業による運営ですが、他にもNPO法人・医療法人・社会福祉法人などの施設もあります。
地域密着型、小規模多機能型居宅介護のメリットとデメリット
小規模多機能型居宅介護の一番のメリットは、グループホームと違い、在宅介護を受けながら、デイサービス、ショートステイ、訪問介護の3つのサービスが回数の制限なしで利用できることです。また24時間365日体制で注意を要する在宅介護は、介護をする家族の負担も大きくなってきます。利用者さんの急な体調変化や、家族の急用や体調不良などがあっても、必要な際はすぐにサービスが受けられることが魅力です。デイケアに通っている最中に、当日のショートステイを申し込むことも可能で、その都度必要なサービスを柔軟かつすぐに受けられることがポイントと言えるでしょう。また、利用対象者は要介護の認定を受け、かつ事業者と同じ市町村が住んでいる方が対象。地域密着型と言われるように、地域に根差したサービスが受けられることが特徴です。
一方で、柔軟で手厚いサービスを提供するために、定員数が少なく設定されている点がデメリットにもなっています。希望する事業所で小規模多機能型居宅介護のサービスを申請しても、定員に達している場合は利用できません。さらに、定額制はメリットでもありますが、利用回数が少ないと割高になることもあります。また3つのサービスの中の1つに、希望や不満があった場合でも1つだけの変更はできないため、変更したい場合は契約自体を解除しなければなりません。また個別で介護サービスを利用する場合は、自由に必要なサービスを組み合わせることが可能です。しかし、小規模多機能型居宅介護は、併用するサービスに制限がある点がデメリットと言えるでしょう。
認知症に特化したグループホームのメリットとデメリット
一番のメリットは認知症の症状を和らげられることでしょう。通常、認知症を発症しても、すぐに日常生活が困難になったり、さまざまな記憶を失くしてしまったりするわけではありません。薬の処方はもちろん、利用者さんの自発性を引き出すような支援をすることで、症状の進行を抑えられる可能性もあります。グループホームに入ると、スタッフのサポートを受けながら日常生活を送ることが可能なので、認知症をケアするには効果的な施設です。
グループホームは「地域密着型サービス」なので、入居対象者は施設の所在地と同じの市区町村に住民票がある利用者さんだけ。そのため、それまで暮らしてきたなじみのある地域で、継続して生活を続けることが可能です。また、看取りサービスのニーズが高まっていることを背景に、2009年に介護保険法が改正され、看取り対応をする施設に対して「看取り加算」が認められるようになりました。これにより、近年では看取り対応施設は増加傾向にあります。
一方で、デメリットとしては、グループホームも小規模のため満室の場合が多く、待機期間が長くなるケースも少なくありません。また、介護認定を受けていても、ある程度自力で日常生活を送れることが必要です。そのため、長期入院が必要な場合や他の病気が悪化して医療行為が必要になった場合などには、施設から退居を促されることもあります。
同じ介護施設でも利用の仕方はさまざま
今回は、小規模多機能型居宅介護とグループホームの違いについて紹介しました。どちらも少人数サービスという点が共通しています。その点において、2つの施設で仕事をする際は、一人ひとりに合わせた丁寧なサポートを提供できることが魅力と言えるでしょう。親身にサポートをすることで、仕事のやりがいにもつながります。この記事を転職やスキルアップの参考にして、自分にあった仕事を見つけてくださいね。