介護施設の「困ったスタッフ」どう対応したらいい?正しい対処法をご紹介
介護スタッフのストレス原因のひとつが、職場での人間関係。特に、遅刻や無断欠席、暴言を繰り返すような問題スタッフに悩まされているという話も少なからずあるようです。みなさんの中にも「トラブルを起こす同僚に手を焼いている…」という方はいるのでは?そこで今回は、介護スタッフの問題行動事例とその対処法を紹介します。ぜひこの機会に正しい対応を学んでおきましょう。
目次
あなたの職場にもいませんか?問題スタッフの行動事例
まずは、実際によくある介護スタッフの問題行動事例を見てみましょう。
- 急な欠勤や遅刻が多い
- 周囲の介護スタッフや利用者さんに暴言を吐く
- パワハラ行為(逆パワハラを含む)をする
- 業務に支障をきたすほど、著しく能力に欠ける
- 仕事中の居眠りや、業務以外の行動を繰り返す
- スタッフ本人との交渉や話し合いに家族や親族が介入してくる
とはいえ、このような行動が一度みられただけでは問題スタッフとは認められません。問題行動を繰り返すうえに、自らの非を認めようとせず、他人のせいにするような態度が見られたら要注意でしょう。
問題スタッフへの対応を間違えるとどうなる?
問題スタッフへの対応を間違えると、次のような状況に発展することもあるため、注意が必要です。
職場の雰囲気が悪くなる
問題スタッフが施設内で暴言を吐いたり、パワハラ行為をしたりすることで、スタッフの間では不穏な空気が流れるようになるでしょう。さらに業務中の居眠りや私語が増えてくると、職場内の規律が乱れ、周囲のスタッフの意識もゆるみやすくなるかもしれません。
他の介護スタッフが離職してしまう
普段から問題スタッフと関わることが多いと、次第に精神的なストレスから体調を崩すスタッフも出てくるでしょう。そうなると、問題スタッフが原因となって他スタッフが離職してしまうという残念な結果を招くこともあります。
安全配慮義務違反になってしまうことも…
もし問題スタッフによる暴言やパワハラなどによって他スタッフが何らかの疾患にかかった場合には、介護施設側が「安全配慮義務違反」に問われる可能性が高いです。安全配慮義務とは、施設側がスタッフの労働によって利益を得る代わりに、スタッフの安全や健康に配慮する責任を負うもの。施設の対応が違反とみなされると、損害賠償などさまざまな罰則の対象となることがあります。
介護スタッフの問題行動にはどう対応すればいい?
問題スタッフには、次のような手順で対応するといいでしょう。
注意指導を継続する
まずは、粘り強く注意指導を続けることが大切です。その際、自ら辞めるよう仕向けるために嫌がらせをしたり、孤立させたりするような対応はしてはいけません。これらの行為は「追い込み型退職」と呼ばれ、パワハラ行為に該当する場合があります。
配置転換する
注意指導を続けても改善されない場合には、他施設や他部署への異動を検討してみましょう。ただ、働き続けられることに変わりはないので、根本的解決にはならない可能性もあります。また、配置転換の必要性が認められない場合には、人事権の濫用とみなされる場合もあるため、慎重にすすめるようにしましょう。
懲戒処分を検討する
注意指導や配置転換が効きそうにない場合には、懲戒処分を行います。懲戒処分には戒告やけん責といった軽いものから、減給・出席停止・降格などの重いものまであり、場合によっては懲戒解雇の措置がとられることも。ただし、処分の程度が重ければ重いほど、スタッフ側から不当な対応だと訴えられる可能性が高くなります。そのため、段階を踏んで処分を検討し、実施することが大切です。
自主的な退職をすすめる
懲戒処分を段階的に行ったとしても業務態度が改善されない場合には、自主的な退職を促すことになります。スタッフ本人の意向による退職となれば、事後のトラブルや法的なリスクを最小限に抑えることができるでしょう。
ただ、退職強要にならないように、本人の意思を尊重し、慎重にすすめなくてはなりません。また、本人との合意のうえでの退職だと証明するために、やり取りを記録しておくことも大切です。
解雇に踏み切る
さまざまな策を講じても解決できなかった場合には、最終手段として普通解雇、または懲戒解雇に踏み切ることになります。ただし、施設側がスタッフを解雇するためには、それ相応の理由とそれを裏付ける証拠が必要です。当然、曖昧な理由から一方的に解雇することは労働契約法によって認められていません。解雇が認められる正当な理由には、「勤務態度が極めて悪い」「指導を続けても改善が期待できない」「周囲と良好な人間関係が築けない」など。ただし、これらの理由を訴えたとしても、証拠を提示できなければ、問題スタッフの解雇が無効となる場合もあります。
対応を間違えると事業所が訴えられることも…!?
問題スタッフへの対応次第では、施設側が法律に違反したとして訴えられることも。実際過去には、注意指導しても改善が見られなかった問題スタッフを普通解雇したところ、不当に解雇されたとして施設側が訴えられた裁判事例もあります。そうなれば、トラブルが長引き、施設側も疲弊することになるでしょう。さらに、裁判で施設側が敗訴となったら、問題スタッフへ多額の賃金支払いや雇用継続に迫られるだけでなく、世間のイメージダウンも免れません。
そのためにもまずは、段階を踏んで正しく対応することが大切です。そして、いざというときに証拠として提示できるよう、問題スタッフとのやり取りはすべて、書面やメール、録音など細かく記録しておくようにしましょう。場合によっては、弁護士などの専門家へ相談し、サポートしてもらうことも有効な方法です。
他スタッフや利用者さんを守るためにも問題スタッフには適切な対応を!
スタッフの問題行動を放置したり、間違った対応をしたりすると、他スタッフや利用者さんへ悪影響が及ぶ場合もあります。そのためにもまずは、正しい手順で適切に対応することが大切です。そして、どうしても解決の糸口が見られない場合には、弁護士など専門家へ相談することも検討するといいでしょう。