【高齢者の排泄ケア(コンチネンスケア)】介護職が知っておきたいポイントは

介護の仕事において、排泄ケアは欠かせない仕事のひとつです。しかし、本来なら一人で行うはずの排泄がうまくできなくなることは、利用者さんにとって尊厳に関わるデリケートな問題になります。そのため、本人のプライバシーと自尊心を尊重しつつ、適切なケアを提供しなければなりません。今回は、排泄ケアで介護職が知っておきたいポイントを確認していきましょう。

排泄ケア(コンチネンスケア)とはいったい何?

排泄ケアについて詳しく確認していきましょう。

排泄ケア(コンチネンスケア)とは

排泄ケアは、別名コンチネンスケアと呼ばれることもあります。コンチネンスとは排泄がきちんとコントロールできる状態を表す言葉。よって、排泄ケア(コンチネンスケア)とは、快適な排泄ができるようサポートし、排泄にまつわるトラブルをできるだけ改善、予防することです。

加齢とともに日常生活動作能力が衰えてしまうのは避けられない自然の流れですが、誰しも認めたくないことでもあります。特に失禁などの排泄障害は、自尊心を傷つける出来事です。「トイレが近くて不安だからできるだけ外出しない」など、生活範囲を狭めるきっかけになることもあり、生活の質の低下につながります。

排泄ケアにはさまざまなアプローチ方法があり、原因に見合った対処法により改善を図ることも可能です。

排泄ケア(コンチネンスケア)の流れ

トイレの声かけや同行で排泄できる段階から、トイレに誘導しないとできない、おむつとの併用が必要というように、一般的に排泄障害は段階的に進行していきます。そこで重要になるのが、利用者さんそれぞれの状態の見極めです。利用者さんにとってどの排泄方法が適しているのかを判断し、どこまでできるのか、どこまで介助するのかを明確にしておく必要があります。

排泄ケア(コンチネンスケア)で重要なポイントは

排泄ケアで重要なポイントについて、詳しく確認していきましょう。

プライバシーを確保できる排泄環境を整える

介助しなければならない場合であっても、排泄している様子が周りの目に触れないようプライバシーが確保できる排泄環境が理想です。例えば手すりがあれば、利用者さんのサポートになり、介助の負担も軽減できます。ポータブルトイレを使う場合も、カーテンなどで仕切ってリラックスできる空間を作りましょう。

加えて、転倒などの事故が起きないよう、段差をなくす、ドアは引き戸もしくは外開きにするなど、安全に配慮した空間にすることも大切です。

排泄ケア時の声かけや視線に気を配る

排泄介助の間は、楽しい会話を意識するのが良いでしょう。見られていることを意識させないよう、排泄中の視線にも気を配る必要があります。何か異常がないか判断するために排泄物や皮膚をチェックする必要がありますが、排泄物の量や臭いについての言及は避けておきましょう。

できるだけ自分でやってもらう

利用者さんの自立排泄を促すため、手を出し過ぎないようにすることも大切です。トイレに座る、ズボンの上げ下ろしなど、自分でできる部分は手伝わず見守るようにしましょう。そのためには、利用者さんの状態を正しく見極めなくてはなりません。会話ができる利用者さんなら、どこまでサポートするべきか話し合っておくのがおすすめです。

排泄サイクルを把握しておく

利用者さんの排泄サイクルを把握しておくことも大切です。トイレに誘導するタイミングをある程度決めておくなどルーティン化すると、失敗の頻度も減らせるかもしれません。

利用者さんの排泄サイクルを把握できるよう排泄記録をつけるのもひとつの方法です。排泄のタイミングやかかる時間、量、状態を記録してスタッフ間で共有しておけば、トイレに誘導するタイミングもつかみやすくなるでしょう。

利用者さんを急かさない

加齢により腹圧が弱まると、トイレに座っているのになかなか用が足せないこともあります。しかし、利用者さんを急かすような言葉かけをするのはNGです。プレッシャーがかかってしまったり、トイレに行くことを嫌がるようになってしまったりすることもあるかもしれません。焦らないような声かけを意識して、出るまで待ってあげましょう。

こまめな水分補給を促す

利用者さんの中には、排泄介助への申し訳なさから水分を控えようとする方もいます。しかし、きちんと水分補給しておかないと、脱水症状や便秘になってしまうこともあるかもしれません。水分を控えることがないよう、こまめに水分補給を促しましょう。

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排泄ケア(コンチネンスケア)にまつわる民間資格3つ

適切な排泄ケアができるようになるため、資格取得を目指すのもひとつの方法です。排泄ケアにまつわる代表的な民間資格を3つご紹介します。

排泄機能指導士

排泄機能指導士は、NPO愛知排泄ケア研究会と名古屋大学排泄情報センターが実施する認定資格です。全10回の講習会を受け、試験に合格すると排泄機能指導士として認定されます。排泄機能指導士は、適切な排泄ケアを行うことに加え、尿失禁にまつわる技能も備えた存在です。介護や看護の現場で広く活躍できるでしょう。

コンチネンスアドバイザー

コンチネンスアドバイザーは、排泄ケアのスペシャリストであることを認定する資格。日本コンチネンス協会が認定する排泄ケア専門員(コンチネンスケアワーカー)のトップにあたります。排泄ケアの教育や啓発にも貢献し、排泄ケアの重要性を広める役目でもある存在です。

おむつフィッター

「おむつフィッター」は、排泄用具の情報館むつき庵が行う認定資格です。3級、2級、1級の3段階があり、おむつフィッター研修を受講しテストに合格すると、おむつフィッターの認定を受けることができます。おむつだけでなく、医療や住環境、食事といった広い視点から、排泄にまつわる困りごとに対応できる排泄ケアのスペシャリストです。

利用者さんの尊厳を守る排泄ケアを提供しよう

適切な排泄ケアは、利用者さんの尊厳を守るために欠かせないポイントのひとつです。プライバシーや羞恥心に配慮しつつ、安心して排泄できる状態を整えることが、介護職の役目。急かしたり手を出し過ぎたりすることのないよう、利用者さんそれぞれの状況に合わせて、必要な排泄ケアを提供することが大切です。

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