認知症介護基礎研修が義務化!無資格なら2024年度までに受講する必要
2021年度の介護報酬改定で、医療・福祉関係の資格を持たない介護職を対象に、「認知症介護基礎研修」の受講が義務化されました。介護職として働く方の中には、すでに会社から「認知症介護基礎研修を受けてほしい」と提案されているかもしれませんね。しかしながら、「認知症介護基礎研修とは一体どのようなもの?」という疑問の声も…。そこでこの記事では、認知症介護基礎研修の概要や受講するメリットなどについて、くわしく紹介します。
【簡単に解説!】認知症介護基礎研修とは?
まずは、認知症介護基礎研修の概要について見ていきましょう。
認知症介護基礎研修とは、介護事業所などで働く方が認知症に対する理解を深め、ケアに必要な基礎知識や技術を学ぶための研修です。2021年度の介護報酬改定にて義務化された取り組みで、厚生労働省主導のもと都道府県ごとに開催されています。
認知症介護基礎研修の対象となるのは、介護保険施設や事業所で直接介護に携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を持たない方です。介護労働安定センターが公表した「令和2年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査」の2020年データによると、8.3%の方が該当しています。
6時間の研修!eラーニングで対応する自治体も
認知症介護基礎研修にかかる時間は、講義が3時間、演習が3時間の計6時間が想定されています。講義方法は、各都道府県の自治体に任されていることも特徴です。インターネットを使った学習スタイル「eラーニング」を採用する自治体もあるため、住んでいる地域によっては職場や自宅でも受講できるでしょう。研修を受ける際は、各自治体の公式ホームページにて、受講方法を事前に確認しておくと安心です。
認知症介護基礎研修の研修内容と費用は?
認知症介護基礎研修では、認知症の方を理解するための基礎知識と対応方法、そして認知症ケアを実践する上での留意点について学びます。ほとんどの場合、1日で研修が終了し、合否を決める試験もないため、難易度は高くありません。実際に受講した方の感想などを知りたい場合は、自治体から委託を受けた研修センターの公式ホームページなどに掲載されているものが参考になるでしょう。
また受講料は、無料で行うところもあれば、3,000円程度の費用がかかるなど、自治体や研修実施校によって異なります。そのため、こちらも各自治体の公式ホームページにて、事前に詳細を確認しておきましょう。
認知症介護基礎研修が義務化された理由とは?
認知症介護基礎研修が義務化された背景にあるのは、急速に進む高齢化です。厚生労働省が認知症に対する施策として公表した「新オレンジプラン」によると、2025年には約700万人(65歳以上の約5人に1人)が認知症を発症すると推定されています。
しかし、認知症の方が増えると見込まれる一方で、現行の制度には認知症ケアの基本を学べる研修はなく、人材育成の面で懸念がありました。そこで創設されたのが、認知症介護基礎研修です。ここからは、同制度が今後どのように進んでいくのかなどについて、くわしく見ていきましょう。
2021年4月から3年は経過措置に!2024年度からは完全義務化
認知症介護基礎研修が義務化されたのは、2021年度の介護報酬改定からです。2023年までは経過措置期間とされています。つまり、この間は移行期間のため、「義務」ではなくあくまで「努力義務」という位置づけです。そのため現在、医療・福祉関係の資格を持たない受講対象の方は、この期間のうちに受講しておくと良いでしょう。2024年度からは完全に義務化される方針のため、早めに受講しておいたほうが安心です。
また、資格を持たない新入社員や中途採用職員については、採用後に1年間の猶予期間が設けられています。今後、該当する職員の方は、1年以内に研修を受講する必要があるでしょう。
認知症介護基礎研修の対象から外れるのはどんな人?
医師や看護師など、以下の資格を有する方は、認知症介護基礎研修の対象から外れています。
看護師、准看護師、介護福祉士、社会福祉士、薬剤師、医師、歯科医師、理学療法士、言語聴覚士、作業療法士、精神保健福祉士、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ指圧師、きゅう師、はり師、介護支援専門員、生活援助従事者研修修了者、実務者研修修了者、訪問介護員養成研修一級課程・二級課程修了者、介護職員初任者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、認知症介護実践者研修修了者、認知症介護指導者養成研修修了者 など
このほか、養成施設や福祉系高校で認知症にまつわる科目を受講した方や、介護事業所で働きながらも直接介護に携わらない方は義務化の対象外です。
受講対象外にならない資格も!外国人介護職員も対象に
他研修修了者でも、認知症介護基礎研修を受けなければならないケースもあります。その対象講座が、「認知症サポーター等養成講座」です。この講座の修了者は、認知症介護基礎研修を受ける必要があります。これは、それぞれの研修目的と内容が異なるため、受講が必要と判断されたためです。認知症サポーター等養成講座修了者の方は注意しましょう。
また、直接介護に携わる可能性がある場合は、資格を持たない外国人介護職員の方も認知症介護基礎研修を受講しなければなりません。もちろん、外国人介護職員でも、EPA介護福祉士候補者や医療・福祉関係の有資格者は対象外です。一方、資格を持たない場合は在留資格にかかわらず義務化の対象となるため注意しましょう。
認知症介護基礎研修を受講するメリット
認知症介護基礎研修は、認知症の方やそのご家族を正しく理解しながらケアするための第1歩です。自治体にもよりますが、おおむね6時間の研修で終了するため、受講ハードルもそこまで高くないでしょう。ここからは、認知症介護基礎研修を受講するメリットについて見ていきます。
認知症介護の基礎的知識と技能が身につく
認知症介護基礎研修を受講すると、認知症ケアを行うための基礎知識や技能が身に付きます。受講後に実務経験を積んでいけば、「認知症介護実践者研修」や「認知症介護実践リーダー研修」など段階的なスキルアップも可能です。認知症介護基礎研修をきっかけに、専門性の向上が目指せるでしょう。
仕事でのポジションを有利にしていく第一歩
認知症介護基礎研修を修了後、さらに認知症介護実践者研修を修了できれば、仕事上でのポジションを有利にしていくことも可能です。グループホームや認知症対応型の施設では、認知症介護実践者研修修了者の配置義務があり、通所介護でも認知症ケア加算の観点から同研修修了者を配置する必要があります。このように、認知症介護基礎研修は仕事でのポジションを有利にする第一歩です。これから介護職でのキャリアアップを目指したい方は、受講しておいて損はないでしょう。
認知症介護基礎研修の対象者は2024年度までに早め受講しよう!
認知症介護基礎研修は、介護事業所などで働く医療・福祉関係の資格を持たない方を対象にした研修です。研修は6時間が想定されているため、1日で終えられることがほとんどでしょう。自治体によってはeラーニングの導入も行っているため、受講環境も多様です。該当する方は、ぜひ早めに受講しておきましょう。