老人性円背についてくわしく解説!原因やリハビリ方法とは?
年齢を重ねると、背中や腰が大きく曲がった状態になってしまうことがありますが、高齢者によく見られるこの状態を「老人性円背(ろうじんせいえんぱい)」と言います。女性に多い症状で、痛みはほとんどないと言われていますが、進行すると日常生活に支障をきたす可能性も。ここでは、老人性円背の原因やリハビリ方法、使えるアイテムなど、介護スタッフなら知っておきたい基礎知識をご紹介します。正しい知識を身に付け、ぜひ介護の現場で活かしてみてください。
老人性円背とは?腰や背中が曲がる原因は?
老人性円背とは、背中や腰が大きく曲がったまま固まってしまっている状態のこと。普段の生活で痛みを感じることはほとんどなく、気づいたら老人性円背になっていたというケースも少なくありません。
老人性円背の原因はいろいろありますが、猫背の進行による場合や、筋力の低下、骨粗しょう症の影響などが挙げられます。また、骨密度の低下による圧迫骨折も原因のひとつです。
骨密度は加齢とともに低下し、骨と骨の間の軟骨も弱くなっていきます。この軟骨が、圧迫に耐えられなくなると、少しの力が加わるだけで骨がつぶれてしまうことも。このような圧迫骨折が重なることで、腰が大きく曲がったままの状態で固まってしまうのです。骨密度の低下率は、男性より女性の方が大きいとされているため、老人性円背は女性に多く見られると言われています。
進行すると、仰向けの状態になれなかったり、前が見えづらく視界が狭まったり、尻もちをつきやすくなったりすることも。痛みがなくても、これ以上進行させず、改善するようなケアを行うことが重要です。
改善方法やリハビリ法は?
一度曲がってしまった腰や背中を、まっすぐの状態に治すのはなかなか困難です。病院での治療のほか、改善方法やリハビリを行い、進行させないようにしましょう。
骨粗しょう症や骨密度の低下が原因である場合には、カルシウムなどの栄養素を意識的に摂取することが有効です。牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品はカルシウムの吸収率が良く、食べやすいのでおすすめ。ビタミンDやマグネシウムは、カルシウムの吸収を良くする働きがあるため一緒に摂取するとよいでしょう。
体を動かせる方は、無理のない範囲で適度な運動やストレッチを取り入れてみては。上半身の筋肉や骨格をほぐすように胸を張ったり、背中を伸ばしたりする運動を、ゆっくり時間をかけながら行いましょう。徐々に可動域を広げていくのがポイントです。
高齢者は、簡単なストレッチや運動などでも、予期せぬケガをする可能性があります。リハビリを行う際には、介護スタッフがしっかり見守っている状態で行うよう注意しましょう。
介護現場でも使えるアイテムは?
老人性円背は、ほとんど痛みはないとされていますが、背中が曲がることで首・腰回りに負担が生じる場合もあります。介護を行う際には、注意しながらゆっくり行うことが大切です。介護現場にあるアイテムも、老人性円背の方を介護する際に役立つ場合があるので、紹介しましょう。
椅子
椅子が大きすぎると、老人性円背の方が座った場合、背中と背もたれの間に大きなすき間ができます。腰の部分に支えがない状態になり、背中が丸まりやすくなってしまうのです。さらに、このすき間を埋めるために深く腰掛けると、今度は頭の重さで背中が丸まってしまう可能性も。老人性円背の方が負担なく椅子に座るためには、腰と背もたれの間にクッションや丸めたタオルを置くのがポイントです。足の裏を床にしっかり固定し、頭がなるべく垂直になるようにゆっくり腰掛けるようサポートしましょう。
クッション
クッションは、椅子に座る際や横になった際に、とても役立つサポートアイテムです。前述したように、椅子の背もたれの腰部分に設置してすき間を埋めることで、痛みや筋肉への負担を軽減することができます。
サポーター、コルセット
正しい姿勢を保つには、サポーターやコルセットも有効です。背中や骨盤をしっかり支えてくれるため、自然と背筋がまっすぐになり、正しい姿勢を楽にキープできます。ただし、巻き方は正しいか、きつく巻きすぎていないかなどを介護スタッフは常に確認しましょう。体調が優れないときには使用を止めるなど、無理をせず続けることが大切です。
杖
老人性円背の方が杖を使用するときには、高さに注意が必要です。高さを決める基準はいくつかありますが、杖を持ったときに肘の屈曲が30度くらいになる高さがベストとされています。杖で床をついたとき、肘関節の安定性がもっとも高まると言われている角度だからです。角度が30度以上になると安定性が下がり、円背が進行する可能性も。杖の高さの確認なども行いながら使うようサポートしましょう。
介護現場での老人性円背への対応方法
老人性円背は、ほとんど痛みはないと言われています。しかし、背中が曲がっている方を介護する際はいくつかの配慮が必要です。負荷をかけてしまうと、痛みが出たり、円背が進行したりする可能性もあるため、介護の際には注意して対応しましょう。
通常、寝返り介助の際は、仰向けの状態を経て寝返りを行いますが、老人性円背の方は仰向けの体勢が困難です。そこで仰向けの代わりに、長座位を利用すると、スムーズに寝返り介助が行えるでしょう。
立ち上がり介助の場合は、重心移動がポイントとなります。老人性円背の方は、腰が曲がり前傾姿勢のような体勢なので、他の方に比べて立ち上がりにくいことも。立ち上がる際には、バランスを崩さないようサポートすることが重要です。
まず、椅子やベッドに浅く腰掛けてもらい、両足を後ろに引いて、上体を少し倒してもらいます。このとき、足元がぐらついていないか、しっかり踏ん張ることができているかも確認しましょう。介護スタッフは、利用者さんの脇の下に一方の手を入れ、もう一方の手で腰を支えて立ち上がり介助を行います。
老人性円背の方も快適に過ごせるようサポートすることが重要
老人性円背は、痛みがほとんどないとはいえ、動きづらさや進行すると日常生活にも支障をきたす可能性があります。介護スタッフは、円背をなるべく進行させず、そして改善できるように、正しい知識を身に付けてできる限りのサポートを行うことが大切です。老人性円背の原因は人それぞれなので、その原因も踏まえた上で、まわりの介護スタッフと協力しながらサポートしていきましょう。