介護で使える心理学とは?実際に行われている心理療法について学ぼう
介護の現場では、介護スタッフに対してさまざまなストレスがかかります。自分自身の心のバランスをとるためや、利用者さんやそのご家族・その他のスタッフとのコミュニケーションを円滑に行うための有効な手段として、注目されているのが心理学です。今回は、介護現場で利用できる心理学学習のすすめや介護スタッフにおすすめの「公認心理師」という資格について解説。実際に介護の現場で行われている心理療法も紹介します。
心理職の国家資格「公認心理師」が介護職でも受けられるように
介護現場では、利用者さんや利用者さんを支えるご家族、介護施設内で働くスタッフなどさまざまな人間関係が存在します。時には複雑な人間関係となってしまう場合があり、ストレスに耐え切れず、離職を考える介護スタッフもいるほどです。
また、認知症の利用者さんから罵倒されたり介護を拒否されたりすることもあります。利用者さんが思ったように身体を動かせずイライラして、介護スタッフに当たってしまうことも。
頭ではわかっていても…
介護スタッフであれば、「認知症だから仕方がない」や「今は身体が動かせないからイライラしているだけ」と利用者さんの気持ちや状態を理解しているものです。しかし、同じような状況が長期間にわたって続くと、頭では理解しているものの、気持ちがついていかなくなるケースがあります。
心理学の必要性と、公認心理師とは?
そこで注目されているのが、心理学を学ぶことです。心理学を学ぶと、自分自身の心との向き合い方や、利用者さん・スタッフなど、自分を取り巻く人間関係でのストレスの対処法を身につけることができるでしょう。
以前から資格として存在している「臨床心理士」になるためには、指定大学院などを修了しないと受験資格が得られず、限られた方しか受験できませんでした。そんな中、誕生した国家資格が「公認心理師」です。第1回目の公認心理師試験は2018年に行われています。比較的、新しい国家資格です。
公認心理師には、国民の心の健康問題へ対応し、他の関係者や機関と連携しながら心理面での支援を行う役割があります。公認心理師の受験資格も臨床心理士のように、「心理に関する科目を修めて卒業した者」などと制限されていますが、2022年9月14日までに行われる試験であれば、受験資格が緩和されているのです。
具体的には、介護老人保健施設や介護医療院、地域包括支援センターなど実務経験証明書の分野施設コード一覧に記載されている施設となります。実務経験が5年以上あれば、現任者講習会を受講することで受験可能です。
介護現場で行われている心理療法とは?
最後に、介護現場ではどのような心理療法が行われているのか、見ていきましょう。
回想法
昔の写真や昔から大切にしている物などを見たり触れたりすることで、昔の思い出を語り合う心理療法。認知症の方の場合、新しい記憶を保つことは難しいですが、昔の記憶を思い出すことは可能です。
昔の記憶を人に話したり相手の話を聞いたりすることで、脳が活性化され、精神的にも安定すると言われています。
回想音楽
回想法と同じような心理療法ですが、回想音楽では、昔懐かしい歌謡曲や童謡を使って、思い出を語り合います。精神面の安定や意欲向上・QOLの向上を目的として実施される心理療法です。
介護職での心理学分野の資格取得はスキルアップにつながる
「介護現場では心理学は関係ない」と考えていた方もいたかもしれませんね。今回の記事を読めば、「心理学分野の資格があると、利用者さんへのサービス向上や自分自身のスキルアップにつながるかも」と思いませんでしたか?
心理学分野の知識があると、利用者さんの気持ちに寄り添い、利用者さんのご家族が介護うつにならないようにサポートすることも可能です。もちろん働く上で、上司や同僚、部下との人間関係に悩んでしまうこともあるでしょう。
そんなときにも心理学分野の知識は役に立ちます。公認心理師の受験資格緩和は、2022年9月までと、あともう少しで終了。興味のある方は早めに勉強に取り組み、公認心理師の資格取得を目指しましょう。