介護食士とは?介護職・介護福祉士・調理師から注目を集める認定資格
介護施設の利用者さんにとって、なくてはならない介護食。介護スタッフの中には、介護食についての知識を深め、利用者さんに食の安心を提供したいと願う方もいるのではないでしょうか。そんな方におすすめの資格が、介護食士です。資格取得のための学習では、介護食の基本はもちろん、栄養状態の判定や食品と薬剤の関係性などの専門性の高い知識を身に付けることができます。介護食士について詳しくご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
【簡単に解説】介護食士とは?国家資格?
介護食士とは、内閣総理大臣認定「公益社団法人 全国調理職業訓練協会」が介護職に関わる方々の調理技術を向上させる目的で設立した資格。国家資格ではなく、同協会による認定資格です。
介護食士の資格は、要介護者向けの食事を提供できる専門知識を習得した者に与えられます。資格には1級から3級までの3段階あり、各級の介護食士が有する知識や技術は以下のとおりです。
介護食士3級
栄養素や調理する際の衛生管理、高齢者の身体的機能の特徴などについての基礎知識を学びます。また、美味しい・食べやすい・飲み込みやすい基本の介護食を作る技術も習得。
介護食士2級
介護食士3級が基礎的な学習内容だったのに対し、介護食士2級では医学的基礎知識や高齢者の心理、食材の衛生管理など、専門性の高い知識を学びます。介護食についても、美味しい・食べやすいだけでなく、普通食からの介護食への展開方法や生活習慣病予防食の知識を身に付けるのが特徴です。
介護食士1級
より医療レベルの高い知識を有するのが、介護食士1級です。栄養状態の判定や低栄養を考慮した献立作成、さらには、食品と薬剤の関係や身体機能、疾病を想定した献立作成・調理などのハイレベルな技術を身に付けます。
介護現場で役立つ介護食士資格取得のメリット
介護施設で働く調理師にとって介護食士は、仕事内容に直結する実用的な知識やスキルを身に付けられる資格と言えます。では、介護スタッフが介護食士の資格を取得する主なメリットを3つご紹介しましょう。
メリット1:介護食の知識が身に付く
介護食士の資格取得のための学習では、介護食に関する深い知識を身に付けることが可能です。どんな栄養素が含まれているか、美味しい・食べやすい介護食にするためにどのような工夫を施すのかなどを理解することで、食事の提供・介助ができるようになります。
もちろん、介護食に関する知識を独学で身に付ける方もいるでしょう。しかし資格を取得すれば、知識や技能を有する証が得られるため、介護現場でも自身のスキルとしてアピールできます。
メリット2:利用者さんの健康を手助けできる
介護食士は、高齢者の健康状態を考慮し、一人ひとりに適した食事を提供できる知識やスキルを有しています。栄養面や食べやすさ、飲み込みやすさなど、利用者さんの健康面に配慮した食事を提供することが、その方の健康の手助けをしていることにほかなりません。
メリット3:働きながらでも比較的取得しやすい
介護食士は認定資格であり、調理師や栄養士などの国家資格に比べると、取得ハードルは低い傾向にあります。そのため、介護施設で働きながら、資格取得を目指すことも可能です。
ただし、介護食士資格取得のための通信教育は実施されていません。実会場での講習会受講が難しい場合は、通信教育で取得可能な介護食アドバイザーや介護食コーディネーターなどの資格取得を検討してみるのもよいかもしれませんね。
介護食士の受験資格は?資格の級によって受験資格は違う?
介護食士の資格を取得するには、「公益社団法人 全国調理職業訓練協会」の認定施設で実施される介護食士講習会を受講し、修了試験を受験して合格する必要があります。修了試験の受験は、講習会の出席率80%以上が必須条件です。
なお、講習会受講の方法は、以下の2パターンから選べます。
- 指定の専門学校などの生徒となって受講する
- 一般の方対象の講習会を開講している施設で受講する
では、各級ごとの受験資格と講習内容をご確認ください。
介護食士3級の受験資格・講習内容
- 受講資格:不要(誰でも受講可能)
- 講習:学科25時間および実習47時間の計72時間
- 学科内容:介護食士概論、医学的基礎知識、高齢者の心理、栄養学、食品学、食品衛生学
- 実習内容:調理理論・調理実習Ⅰ、調理理論・調理実習Ⅱ
介護食士3級の講習会は、北は青森、南は沖縄まで全国各地で開講されているのでチャレンジしやすいでしょう。
介護食士2級の受験資格・講習内容
- 受講資格:介護食士3級を取得した方
- 講習:学科16時間および実習56時間の計72時間
- 学科内容:医学的基礎知識、高齢者の心理、栄養学、食品学、食品衛生学
- 実習内容:調理理論、調理実習
一般の方を対象とした講習会を開講している施設数は、全国に十数校のみとなっています(2022年2月時点)。
介護食士1級の受験資格・講習内
- 受講資格:介護食士2級を取得したのち、2年以上介護食調理の実務に従事した25歳以上の方
- 講習:学科32時間および実習40時間の計72時間
- 学科内容:医学的基礎知識、高齢者にかかわる制度、栄養学、食品学、食品衛生学
- 実習内容:調理理論、調理実習
一般対象の講習会を開講している施設は、浜松調理菓子専門学校(静岡県)、奈良調理短期大学校(奈良県)、愛媛調理製菓専門学校(愛媛県)の3校のみです(2022年2月時点)。
講習会の開講施設の最新情報については、「公益社団法人 全国調理職業訓練協会」公式サイトでご確認ください。
介護食士資格試験の合格率・難易度・費用は?
「公益社団法人 全国調理職業訓練協会」公式サイトによると、介護食士の筆記試験・実技試験ともに60点が合格ラインです。合格率は公表されていませんが、講習会受講者のほとんどが修了試験に合格可能と言われており、難易度は低い資格と言えるでしょう。
資格取得に要する費用は、講習会を開講する施設や資格級によって異なります。一般的に6万円~9万円台の費用で受講することができるようです。詳しくは、講習会受講を希望する施設の公式ホームページを確認してみてください。
介護食士は介護の仕事をしながらでも取得できる認定資格
介護食士は、介護食の基礎知識だけでなく、身体機能や疾病を想定した献立作成・調理方法などについても学ぶことができます。つまり、利用者さんの健康の手助けができる有用な資格ということ。「介護現場で活かせる資格を取得したい」「介護食に関する知識を深めたい」と考えている方は、ぜひ介護食士を目指してみてくださいね。