介護職ができる生活リハビリとは?具体例からメリットまで詳しくご紹介
介護スタッフができる「生活リハビリ」という訓練をご存じですか?リハビリ専門スタッフが行う機能回復訓練などとは違い、日常生活の中の動作をリハビリにすることが特徴です。この記事では生活リハビリについて詳しくご紹介。生活する中でリハビリを行うメリットも合わせて解説していきます。できないことをサポートするのが介護だと思っている方は、生活リハビリの重要性を理解し、ぜひ現場へと活かしてみてください。
生活リハビリとは?
生活リハビリとは、高齢者の方が生活していくために行う動作をリハビリと捉え、自力でできるよう支援することを指します。理学療法士や作業療法士といったリハビリの専門家だけでなく、介護スタッフや看護スタッフでも実施者の役割を担うことが特徴です。
高齢者にとって、加齢にともない落ちていく筋肉や体力を、集団で行う体操や運動だけで維持させることは困難です。さらに、運動習慣のない高齢者に無理に運動をすすめても継続させることは難しいもの。
しかし生活リハビリなら、日常的に行う動作を利用するため、無理なく自分の力で続けていくことが可能です。できる限り自力で生活したい!という高齢者は多いため、ADL(日常生活動作)の維持を目的とする生活リハビリは一石二鳥とも言えるでしょう。
特養や老健施設などで介護スタッフができる生活リハビリとは?
つぎに、介護スタッフが施設やデイサービスなどで実践できる生活リハビリをご紹介します。
排泄介助シーンでできる生活リハビリ
トイレまでの移動が不安という利用者さんも多いはずです。そんなときはポータブルトイレをベッドサイドに設置し、移動距離を短くすると効果的でしょう。おむつでの排泄を習慣化させると、動く機会が減ってしまい寝たきり状態へとつながってしまいます。工夫次第で、寝たきり予防ができることを念頭に置いておきましょう。
また、ズボンの上げ下げや、排泄後に陰部を拭くという行為も、利用者さんの尊厳を守るという点で重要な生活リハビリになります。利用者さんの動きがおぼつかないと、つい手を出してしまいがちですが、見守るという姿勢が大事です。
食事介助シーンでできる生活リハビリ
箸が上手く使えなくなってきた利用者さんには、食事補助具の活用がおすすめです。箸が使えないからと、すぐに介護スタッフが食事介助をすることは、利用者さんのためにはなりません。食事をするという日常的な動作も、毎日しなければ腕の筋力が衰え、食事を口へ運ぶことが困難になります。スプーンやフォーク・箸・コップ・お皿など工夫できる食事補助具は多いため、どんなものがあるか事前に学んでおくとよいかもしれません。まずは、利用者さんが使える食事補助具を検討し、時間がかかっても自力で食べるという動作ができるようサポートしていきましょう。
入浴介助シーンでできる生活リハビリ
入浴時に、自分で体を洗う動作も生活リハビリになります。利用者さんが自力で体を洗うためには、安定した姿勢を作ることが重要です。滑りにくいバスマットの活用や、シャワーチェアに座ってもらうなど工夫して、転倒や転落といった事故に配慮しましょう。また、入浴は体調不良が生じやすい場所でもあります。利用者さんの変化に気づけるよう、適宜声掛けをしながら見守る姿勢が重要です。
その他のシーンでできる生活リハビリ
そのほか、ひとりで着替えが難しい場合は前開きの服を準備する、歩行に不安がある場合は、手すりや歩行器の使用を促すというのも、生活リハビリになります。できる限り自立した生活ができるよう、利用者さんに合わせた提案をしていきましょう。利用者さんによっては、生活リハビリに対し、意欲的な方、そうではない方もおられるはずです。現状維持を目的とするか、さらに改善できるよう介入していくか、利用者さんに合ったペースでサポートしていくよう心掛けましょう。
生活リハビリを介護スタッフが行うメリットとは?
では、生活リハビリを介護スタッフがすることによるメリットとは何でしょうか?
利用する施設に関係なくリハビリができる
通常、リハビリ専門スタッフが在籍する施設は、老健やデイケア施設など限りがあります。入所する施設によっては、リハビリを受けたくても受けられないといった利用者さんがいることも事実です。
介護スタッフでもできる生活リハビリなら、ADLを維持させたい!という利用者さんの希望に沿うことができます。日常的に接する機会が多い介護スタッフだからこそできるのが生活リハビリなのです。
寝たきりを予防できる
高齢になると病気やケガといった要因だけでなく、活動すること自体が億劫になる、という事態がしばしば起こります。
そこで必要とされるのが、介護スタッフによる日常的なサポートです。普段から関わりの多い介護スタッフという点を活かして、利用者さんそれぞれに適した声掛けや介助を行いましょう。信頼関係を保ちつつ、利用者さんの活動意欲を損なわないように関わることがポイントです。
利用者さんが持つ身体機能を最大限に発揮できる
「自分できることはやってもらう」というスタンスで行うのが生活リハビリですが、どこまで無理なくできるのかを見極めることも大切です。できないことを無理強いすると、利用者さんの意欲を損なってしまうかもしれません。
そこで、重要な役割を果たすのが日常的に利用者さんを知る介護スタッフです。「この利用者さんはポータブルトイレを設置するとよいだろう」「ここに手すりを置けばさらに立ち上がりやすくなるかもしれない」といった、「できる」につながるサポートが可能です。
生活リハビリで利用者さんのQOLを上げていこう
生活リハビリへの取り組みは、利用者さんのQOL(生活の質)を上げる結果へとつながるはずです。どのような手段があるのかもっと詳しく知りたい方は、文献や事例を検索してみるとよいでしょう。介護スタッフだからこそ可能な生活リハビリは多くあります。過度に介助することだけが介護という仕事ではありません。適度に介助をすることが生活リハビリへとつながることを忘れないでおきましょう。