デイサービス(通所介護)とは?施設形態や配置人員の規定について解説

デイサービスとは、「通所介護」とも呼ばれる高齢者のための施設です。介護関係の仕事に就いている方が気になるポイントは、デイサービスにおける人員配置の規定や仕事内容についてでしょう。2019年の厚生労働省の調査よると、通所介護を展開している事業所は全国で約1万5000箇所あります。施設数が多いということは、それだけ利用者さんも多いということです。記事を読んで、デイサービスについて知識としてしっかり身につけませんか?

簡単に説明!デイサービス(通所介護)とは?

デイサービスとは、簡単に言うと要介護の利用者さんの生活の質の向上を目指すサービスや、機能訓練が行われている施設のこと。利用者さんの状態に合わせたさまざまなサービスが提供され、利用者さんは日帰りで利用します。

要介護状態になった方が、デイサービスに通いながら最低限の入浴や食事などの生活動作を自宅で行えるようにするために、生活面の機能の維持や向上を目指す機能訓練が行われています。

また、デイサービスの利用は、利用者さんのご家族への精神的サポートになる面もあります。デイサービスの利用中は、日頃の介護から解放されて気分転換や仕事に打ち込むことが可能です。

これらは、厚生労働省の「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護」内に、通所介護における基本指針として記されています。

提供されるサービス内容は精神的負担の軽減を図るものも

食事や入浴などの、生活面のサポートはもちろん、利用者さん同士の交流の場を設けて社会からの孤立感などを解消する目的もあります。各サービス内容の詳細と、それぞれの目的を確認していきましょう。

機能訓練

利用者さん一人ひとりの目標に合わせて、各デイサービスの機能訓練指導員が指導を行います。目標として設定されるのは、生活に必要とされる動作で、例として入浴・トイレに行くこと・食事を作ることなどです。デイサービスの機能訓練指導者には、理学療法士や作業療法士などが挙げられます。デイサービスでの機能訓練によって、利用者さんが生活動作を維持・獲得することが目的です。

食事

デイサービスの利用時間中は、施設で食事を提供する場合があります。その際に食事介助が必要な利用者さんには介助を行い、食事の摂り方について形態や食器などの福祉用具貸与の提案を行う場合も。厚生労働省の通所介護における人員基準によると、管理栄養士の配置基準はありませんが、栄養バランスの整った食事メニューを提供している施設がほとんどです。中には、デイサービス利用後にお弁当の販売を行っている施設もあります。

入浴補助

利用者さんの入浴をサポートするのも、デイサービスの提供内容のひとつ。自力での入浴が難しい利用者さんは、介護職員のサポートのもと入浴を行う場合が多いです。施設内に大浴場や浴室が用意されているケースが多く、利用者さんが自力でできる動作を加味しながら必要なサポートのみを行います。機械浴といって、介護度が重い利用者さんには、座ったまま・横になったまま入浴可能な介護専用の入浴マシーンで入浴を行う施設もあるようです。

レクリエーションや交流の場

デイサービスでは、利用者さんの気分転換や、認知機能の低下予防を目的としたレクリエーションを実施しています。カラオケや作品作りのような個人でできる内容のもの、演劇やジェスチャーゲームなど団体で行う内容のものとさまざまです。施設によって沢山のアイデアを出しながら、楽しいレクリエーションが企画・実施されているため、利用者さんは自分の参加したいレクリエーションが行われる日に利用する場合もあります。

送迎

自宅からデイサービス施設までの送迎も、提供サービスのひとつです。普通の乗用車での送迎や、バリアフリー車での送迎など、利用者さんのニーズに応じて施設で送迎車を用意しています。施設職員が送迎する場合もありますが、送迎専門の運転手を雇って送迎を行っている施設も多いです。利用者さんやご家族の負担を軽減するためのサービスとなっています。

厚生労働省が定める通所介護の加算制度とは?

通所介護のサービス提供時間や事業所の体制によって評価される、厚生労働省が定めた基準によって、各施設にさまざまな加算がされます。医療・看護体制などを整備している施設を評価したり、利用者さんの個別機能訓練を行ったりしたときに加算されるポイントのことです。ほかにも、認知症の利用者さんに対する「認知症加算」や、利用者さんの口腔内の健康を維持するための「口腔機能向上加算」などの種類があります。

それ以外にも、「入浴介助加算」といって、入浴介助を行うことができる職員の配置や設備の設置によって評価される項目も。医療体制や個別指導の体制を整えた通所介護施設は加算されるポイントも高くなるため、サービスの向上に直接繋がる制度です。入浴介助や個別機能訓練などを行った利用者さんには、この加算ポイントが利用料として反映されます。

職員の種類と人員配置の詳細|仕事内容も合わせて確認

デイサービスで働く上で最も気になるポイントとなるであろう、通所介護施設の職員の人員配置と仕事内容についてです。まずは、厚生労働省の通所介護の概要をもとに人員配置の表を確認してみましょう。それぞれの職種のデイサービスでの仕事内容も紹介します。

職種必要人員数
生活相談員施設ごとにサービスの提供時間に応じて専従で1人以上
看護職員単位ごとに専従で1人以上
介護職員単位ごとにサービスの提供時間に応じて専従 ①利用者数が15人以下の場合1人以上 ②16人以上の場合は15人を超える利用者数の0.2人以上の職員数を加える
機能訓練指導員1人以上

生活相談員

生活相談員は、社会福祉士・社会福祉主事・精神保健福祉士のいずれかの資格を持つ人のことを指します。地域によっては、介護福祉士の資格保有者のみでも可能です。仕事内容は、利用者さんの生活面の相談や指導などを行います。ソーシャルワーカーと呼ばれる場合もあります。

看護職員

看護師または、准看護師の配置も必要です。仕事内容は、利用者さんの健康状態を把握すること、健康面でのサポートを行うことなどがあげられます。デイサービスは医師の常駐がない施設のため、緊急の場合には率先して利用者さんの対応にあたることが必要です。

看護職員の人員基準は、2015年度の介護報酬等制度改定により緩和されています。施設に1人以上の看護職員が居れば、専従でなくても良いという改定内容です。ただし、病院や訪問看護ステーションとの連携が必要になります。

介護職員

デイサービスでの介護職員の仕事内容は、主に食事や入浴の介助などです。送迎や、レクリエーションの準備なども行います。デイサービスでの利用者さんのサポート全般が介護職員の仕事です。介護職員と言うと、不規則な勤務形態が多いように感じます。しかし、デイサービスは基本的に日中に提供するサービスであるため、夜の勤務がない施設がほとんどです。介護職員または、生活相談員のどちらか1人は常勤する必要があります。

機能訓練指導員

通所介護施設を利用してもらう目的のひとつとして、利用者さんの機能訓練があると上記で説明しました。機能訓練のサポートを行う人員として、機能訓練指導員の配置が必要です。機能訓練指導員としての勤務で必要な資格は、理学療法士・言語聴覚士・作業療法士、さらに、看護職員・柔道整復師または、あん摩マッサージ指圧師などがあげられます。機能訓練指導員は、同じ施設内で他の職務と兼任することが可能です。

デイサービスの設備は?種類や利用時間も合わせて確認

厚生労働省「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護」の資料内、通所介護における設備基準は以下の通りです。

設備 基準内容
食堂合計した面積が利用定員人数×3.0平方メートル以上
機能訓練室合計した面積が利用定員人数×3.0平方メートル以上
相談室相談内容の漏洩を防ぐための部屋

この基準を満たしていることが運営基準条件となります。

その他にも、事務室や静養室、トイレや浴室など基本的な設備の用意、緊急呼び出し用のボタンの設置も必須です。機能訓練の器具は、施設によってさまざまな種類があります。送迎車は利用者さんのニーズに合わせて、バリアフリー車を準備することも必要です。

デイサービスの種類

デイサービスの種類は、大きく分けて大規模型や小規模型があります。大規模型は、「機能訓練特化型」「リハビリ特化型」のように何かに特化した施設もあり、定員19名以上と比較的多いのが特徴です。各自治体では「介護予防特化型」のデイサービスも展開されているケースもあります。

小規模なものには、「地域密着型」とも呼ばれるタイプがあり、利用定員が18名以下の比較的小規模なデイサービスです。また、認知症の専門的なケアを行う「認知症対応型」の施設もあります。

デイサービスの利用時間の目安

デイサービスの利用時間は、以下の通りです。

  1. 3時間以上4時間未満
  2. 4時間以上5時間未満
  3. 5時間以上6時間未満
  4. 6時間以上7時間未満
  5. 7時間以上8時間未満
  6. 8時間以上9時間未満

上記の利用時間は、「サービス提供時間区分」として定められており、この区分に従って、利用料の請求額が決定されます(出典:厚生労働省「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護」)。

利用者さんの費用感は?利用対象者の介護度によって変わる?

利用者さんの費用感は、施設によって変わってくるので、各施設で確認するのが一番です。介護職に就く職員が知っておくべき点は、なぜ施設ごとに費用感が異なるのかということでしょう。利用者さんが支払う利用料は、介護保険が適用される費用と、適用外の費用の合算によって確定されます。さらに、費用の内訳として「利用料」と「サービス加算」という項目があります。

利用料の内訳

介護保険の適用項目概要
適用利用料デイサービスへの滞在費や送迎・レクリエーションの費用
適用サービス加算入浴や個別機能訓練を行った場合はその分加算されます
適用外食費昼食やおやつなどの食費
適用外その他の費用おむつやお弁当の購入などで発生する追加費用

介護保険適用がされるサービスと適用外のサービス費用どちらも合わせた金額が利用者さんの負担額です。さらに大規模型、小規模型によっても費用感が異なります。

利用料の目安

1単位が10円の場合の、通常規模のデイサービスの介護費の目安を確認してみましょう。

要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
3~4時間368421477530585
4~5時間386442500557614
5~6時間567670773876979
6~7時間5816867928971,003
7~8時間6557738961,0181,142
8~9時間6667879111,0361,162

(単位:円)

上記の金額に、入浴や個別機能訓練を行った際のサービス加算・昼食代やおやつ代の食費がプラスされた金額が合計の負担額となります。

デイサービスは利用者さんの日常を支える施設

利用者数が多く、施設も全国に多数あるデイサービス。今回は、デイサービスとはなんなのか、理解を深めるための基本的な情報をお伝えしました。配置人員の職種や仕事内容の理解を深めていただくことができたでしょうか?数多くある介護施設の施設形態の理解を深めることは、介護の仕事に就く上で糧になる知識でしょう。

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