介護業界は残業が多い少ない?本当のところを徹底リサーチ!

介護業界で働きたいと思ったときに、勤務形態は気になるところ。「できれば、残業が少ないほうがよい」「実際はどのくらい働くの?」と、要望や疑問が膨らんでいる方もいるのではないでしょうか?そこで、この記事では介護業界の残業事情を徹底リサーチ。職種別の残業時間や他業種との比較、具体的な残業内容についてまとめました。これから介護職として働きたい方、介護業界の残業事情を知りたい方はぜひご覧ください。

介護職の残業時間はどのくらい?

まずは、公益財団法人 介護労働安定センターが行った「令和2年度介護労働実態調査」の「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」をもとに、介護職の残業時間数について見ていきましょう。

訪問介護員の残業時間

訪問介護員は、訪問介護を行う専門職のこと。ホームヘルパーと呼ばれることもあります。訪問介護員の1週間の残業時間数は、以下のとおりです。

<訪問介護員の1週間の残業時間数>

無期雇用社員有期雇用社員
残業なし68.6%71.2%
5時間未満13.8%11.9%
5時間以上10時間未満6.5%4.6%
10時間以上15時間未満2.1%1.1%
15時間以上20時間未満0.5%0.4%
20時間以上0.4%0.4%
無回答8.1%10.4%

なお、今回参考にしたデータでは、契約期間に期限がない「無期雇用社員」と期限がある「有期雇用社員」で分けて調査が行われました。簡単にいうと、無期雇用社員が正社員の方、有期雇用職員が契約社員の方で、データが分けられています。

このデータによると、無期雇用社員の訪問介護員の平均残業時間は1.1時間。有期雇用社員の訪問介護員では平均0.8時間と残業がほとんどないことが分かります。

サービス提供責任者の残業時間

サービス提供責任者は、訪問介護事業所を運営する上で要となる役職です。略称で「サ責」とも呼ばれます。サービス提供責任者の1週間の残業時間数は、以下のとおりです。

<サービス提供責任者の1週間の残業時間数>

無期雇用社員有期雇用社員
残業なし51.0%46.5%
5時間未満22.2%27.2%
5時間以上10時間未満13.1%12.4%
10時間以上15時間未満5.5%5.7%
15時間以上20時間未満0.9%0.5%
20時間以上0.8%0.7%
無回答6.6%6.9%

先ほどの訪問介護員よりも残業する割合は高いものの、ほぼ半数は残業がないと回答しています。無期雇用社員のサービス提供責任者の平均残業時間は2.3時間。有機雇用社員のサービス提供責任者の平均残業時間も2.3時間です。

介護職員の残業時間

介護職員は、利用者さんに直接介護サービスを提供する役職のこと。介護職員の1週間の残業時間数は、以下のとおりです。

<介護職員の1週間の残業時間数>

無期雇用社員有期雇用社員
残業なし59.7%72.1%
5時間未満24.0%16.5%
5時間以上10時間未満8.0%4.0%
10時間以上15時間未満1.9%1.0%
15時間以上20時間未満0.3%0.2%
20時間以上0.3%0.2%
無回答5.7%5.9%

残業なしの割合が半数以上で、とくに有期雇用社員のほうがその傾向が高いことが分かります。無期雇用社員の介護職員の平均残業時間は1.3時間。有期雇用社員の介護職員の平均残業時間は0.8時間です。

介護支援専門員の残業時間

介護支援専門員は、利用者さんのケアプランなどを作成するケアマネジャーのこと。介護支援専門員の1週間の残業時間は、以下のとおりです。

<介護支援専門員の1週間の残業時間>

無期雇用社員有期雇用社員
残業なし63.6%63.9%
5時間未満16.9%19.7%
5時間以上10時間未満10.4%6.9%
10時間以上15時間未満3.0%2.4%
15時間以上20時間未満0.4%0.3%
20時間以上0.5%0.2%
無回答5.2%6.6%

介護職員同様、半数以上が残業なしであり、雇用条件によってもあまり差がないことが分かります。無期雇用社員の介護支援専門員の平均残業時間は1.6時間。有期雇用社員の介護支援専門員の平均残業時間は1.3時間です。

介護業界は残業が多い?それとも少ない?

ここまで見てきて分かるように、介護業界のすべての職種で、「残業なし」である割合が高くなっています。全職種の1週間の平均残業時間数は1.5時間です。この数値を見る限り、介護業界は残業が少ない職種ではあることが分かるでしょう。さらに、厚生労働省が公表する「毎月勤労統計調査 令和4年5月分結果確報」にて、他の業界とも比較してみます。

産業名所定外労働時間(時間)
調査産業計9.7
鉱業、採石業等15.6
建設業12.0
製造業12.9
電気・ガス業13.7
情報通信業14.7
運輸業、郵便業21.2
卸売業、小売業7.3
金融業、保険業12.1
不動産・物品賃貸業10.6
学術研究等12.8
飲食サービス業等5.1
生活関連サービス等6.1
教育、学習支援業10.7
医療、福祉4.9
複合サービス事業8.9
その他のサービス業10.2

この表は、17産業の1ヶ月の残業時間数を調査したデータをもとに作成しています。介護職は「医療、福祉」に該当し、全産業の中でも残業時間数が1番少ない結果となりました。この結果からも、介護業界は残業の少ない職種といえるでしょう。

介護職に多い残業内容とは?

全産業と比べて残業時間が少ない介護業界ですが、時間外勤務を行う場合にはどんな仕事をしていることが多いのでしょうか。全国労働組合総連合が公表した「介護労働実態調査 報告書」をもとに、残業内容について見ていきましょう。

介護記録や介護計画などの作成

介護職は、利用者さんのケアを行うことが主な業務ですが、介護記録や介護計画などの書類を作成する仕事も日々発生します。利用者さんのケアで手いっぱいになると、こうした書類仕事を時間内に終わらせることは非常に困難です。そのため、勤務時間外に作業を行う方が多いといいます。また、終業後ではなく、早めに出勤してこうした業務を終わらせている方もいるようです。

利用者さんのケア

利用者さんの体調や不測の事態が発生するなど、日々のケアも毎日同じとは限りません。そのため、日によっては利用者さんのケアが長引き、勤務時間外に対応している方も。また、訪問介護の場合は、勤務時間外にご家族への対応を行うこともあるようです。

ケアの事前準備や片付け

勤務時間内で効率的にケアを行うため、ケアの事前準備や片付けを、始業前や就業後に対応することもあります。とくに、終業後よりも、始業前に事前準備を行う割合が高い傾向です。終業後だけでなく、始業前の時間外勤務が想定されることも、介護職の特徴といえるでしょう。

研修や会議など

全国労働組合総連合の調査に回答した介護職の3人に1人は、施設内で行われる会議や資格取得のための研修などで残業をすると答えています。人手不足などから、こうした業務を勤務時間内に組み込むことが難しいようです。

介護職は残業が少ない職種!勤務時間外対応を減らす取り組みも

さまざまな機関が行った調査により、介護職は残業が少ない職種であることが分かりました。とはいえ、介護記録の作成やケアの事前準備など、勤務時間外に取り組んでいる業務もあるようです。こうした業務が効率化されているかも、残業の有無を分けるでしょう。介護職での就業を考えている方は、こうした基準を施設選びの際に確認してみてはいかがでしょうか。

この記事をシェアする