デイサービスの仕事の魅力と求められる人材とは?広島の通所介護運営者にインタビュー
近年、ユニークなコンセプトを持つデイサービスが増えてきました。広島市安佐南区・西区に開所したデイサービス「ゆめか大町」「ゆめか古江」は、「昔やってきたことで活躍するデイ」がコンセプト。また同じく2021年に開所した「フィットネスデイ Yスタ西原」は、「明日の動ける体は今日から」をコンセプトにしています。今回は広島市安佐南区と西区で、ユニークな通所介護(デイサービス)を運営する、株式会社KD.SEVEN代表の桒原芳崇さんにお話を聞きました。介護職に就くまでは保育の仕事に携わっていた桒原さんが、介護業界に転職した理由や、仕事のやりがい、経営者として求める人物像などを語っていただきました。
プロフィール
桒原芳崇さん
保育関係の仕事を経て、2014年11月に通所介護「ゆめか川内」を開所。現在、広島市安佐南区大町・西原、西区古江の3か所に地域密着型通所介護「ゆめか大町」、通所介護フィットネスデイ「Yスタ西原」(ゆめか川内から移転・改称)、通所介護「ゆめか古江」を運営。
今回、桒原さんのインタビューを行ったデイサービス「ゆめか古江」(広島市西区)は、約40人の方が利用しています。日常的な活動とマシントレーニングを取り入れているのが特徴で、利用者さんに料理や掃除などの「家事」を手伝ってもらったり、専用マシンで楽しみながら運動能力や脳機能を向上させたりすることを重視しています。
介護が必要な方に向けて、居宅生活を続けられるように残存能力に応じた支援を行うサービスです。食事や入浴などの介助、機能訓練などを日帰りで行います。通所介護(デイサービス)は孤独感の解消や、利用者さんのご家族の身体的・精神的な負担軽減を図ることに役立っています。
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目次
介護の仕事を始めたきっかけは?
広島市内の通所介護では珍しい運動器具を導入
(桒原さん)もともと保育について学べる専門学校に通っていたので、卒業後は個人運営の無認可保育所で働いていました。介護の仕事を意識するようになったきっかけは、祖母が脳梗塞で倒れたことです。祖母は遠方に住んでいたので、私が介護をする機会はありませんでしたが、祖母の出来事を機に、介護の仕事に興味を持つようになりました。
ちょうどそんな折に、知り合いから「デイサービスの仕事をしないか」と声をかけられたのです。
(介護の仕事は未経験ながらも、専門学校の授業の一環で介護実習に行っていた経験がある桒原さん。転職を考えていたことや、実習での経験も後押しして、介護の道へ進むことに。)
(桒原さん)当初は資格を持っていなかったので、働きながらヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)、介護福祉士、ケアマネジャーの資格を取得しました。さまざまな利用者さんやご家族、スタッフの思いを聞くうちに、「昔やっていたことで活躍できる環境を作り、さまざまな高齢者の方が通えるデイサービスを作りたい」と思い、通所介護(デイサービス)を運営する株式会社KD.SEVENを立ち上げました。
介護の仕事をする中で、難しかったことは?
脳刺激と反射・注意力を鍛えるためのトレーニング
(桒原さん)仕事で大変さを感じるのは、利用者さんの思いと、ご家族の思いが一致しないときです。たとえば、利用者さんは「自分の体力を考えてデイサービスではゆっくり過ごしたい」と思っているけれど、ご家族は「しっかり運動して動けるようになってほしい」と思っているときなどです。
どちらの思いもよく分かるので、両者の納得がいくように調整するのは簡単ではありません。そんなときは、利用者さんとご家族の思いを丁寧に聞くことを心がけています。本音をうまく打ち明けらない利用者さんもいるので、ふとしたときにこぼした本音を見逃さないようにしています。
介護の仕事をされる中でうれしかったこと、やりがいを感じることは?
(桒原さん)やはり、利用者さんの変化を実感できたときです。「トイレまで歩いて行けるようになった」「立って洗濯物が干せるようになった」のような声を聞くと、とてもうれしく思います。また精神的に不安定な方がデイサービスに通い、落ち着きを取り戻すことも。穏やかな姿を見られたときも、やってよかったと感じますね。
印象に残っている利用者さんの中に、90代の方で「ゲームセンターの『太鼓の達人』(リズムに合わせて太鼓を叩くゲーム)がやってみたい」とおっしゃった方がいます。そこでデイ以外の日に食事会を企画し、その帰りにゲームセンターへ寄れるように計画しました。念願のゲームで遊べたときのとてもうれしそうな顔を見て、自分もうれしかったのを覚えています。デイサービスでは一見難しそうなことでも、利用者さんが「やりたい」と思ったことを叶えられるようにしていきたいですね。
介護の仕事をされる中で大切にしていることは?
(桒原さん)お互いが「ありがとう」と言い合える関係を大切にしていきたいです。そのために、「ゆめか古江」では利用者さんに食器洗いや洗濯・掃除などを手伝ってもらっています。ゲームやレクリエーションもいいですが、昔から馴染みのある家事をする方が落ち着く方もいますからね。
また、何歳であってもやりたいことを叶えてあげられるような支援も心がけています。私が運営している「フィットネスデイ Yスタ西原」(広島市安佐南区)は、運動機能訓練に特化したデイサービスです。柔道整復師やスポーツトレーナーを配置し、さまざまなトレーニングを行える施設にしました。最初、当施設を作ったときは「高齢者の方には難しいのでは?」と心配されました。でも、当施設に通う方の多くはトレーニングを通してスタッフや利用者さん同士の交流を楽しんでいます。中には、脳卒中が原因で身体の自由が利きにくいけれど「また車を運転できるようになりたい」と目的を持って通う方もいるほどです。
何歳でも、どんな状態でも、やりたいことができるような支援、施設づくりに力を入れていきたいですね。
これからの目標や取り組みたいことは?
(桒原さん)今後は認知症対応型生活介護(グループホーム)を開設できればと思っています。今の施設では、認知症の進行が進むと利用できなくなる方もいるからです。他の施設へ移るとなると、スタッフも利用者さんも変わりますから、どんなに素晴らしい場所でも不安になりますよね。
うれしいことに、利用者さんやそのご家族から「KD.SEVENの認知症対応型生活介護(グループホーム)があれば」と言われることがあります。もし認知症対応型生活介護(グループホーム)が開設できれば、同じ理念のもとで長期的な支援ができるのが魅力ですね。
介護のお仕事を目指している方や興味がある方へのメッセージ
調理を手伝う利用者さん
(桒原さん)周りの方から「介護の仕事は大変でしょう」とよく言われることがあります。たしかに大変なことはありますが、それ以上のやりがいがあると実感しています。私が特に魅力を感じるのは、利用者さんの人生に触れられるときです。利用者さんに出会うたび、その方が歩んできた人生を知ることができます。これまで出会った利用者さんの数を合わせると何十年、何千年分の長い歴史です。戦争の体験や仕事の体験など、自分の人生にはない出来事が聞けて、自分の人生観が深まっていくのを感じます。
経営者として現場に求める人材は、明るくて、やる気のある方です。介護職は人と接する仕事ですから、気持ちのよい方がいいですよね。あとは周りへの感謝ができているかどうか。それを確かめるために、私は面接でよく「ツイていますか?(あなたは運がいいですか?)」と聞くようにしています。これはパナソニック創業者である松下幸之助さんの言葉です。「自分はツイている」と自覚があるのは「周りに助けてもらった」という意識がある方だと思います。つまり、周りに対して感謝の気持ちが持てているという証拠です。反対に、「自分はツイていない」と思っている方は、周りに十分目を配れていない可能性があります。周りに目を配れるかどうかも、採用を決めるときのポイントです。
介護施設経営者である桒原さんのインタビューを終えて
終始穏やかな雰囲気でインタビューに応じてくださった桒原さん。利用者さんに常に優しく寄り添う姿が印象的でした。どんな仕事にも大変な部分はありますが、「多くの人生に触れられる」のは、介護職ならではの魅力ですよね。この記事を読んで介護の仕事に興味が湧いた方は、ぜひ介護の仕事について調べてみてはいかがでしょうか?
【ゆめか古江(通所介護)】
所在地 | 広島県広島市西区古江東町5-26 |
電話番号 | 082-507-5515 |
公式サイト | https://www.kd-seven.com/ |