新人作業療法士さんにインタビュー!訪問リハビリテーションのやりがいとは?

利用者さんの日常生活を支えると言っても過言ではない作業療法士の仕事。毎日の暮らしを送る中で必要な「作業」を、利用者さんの意向に沿いながらサポートする作業療法士の役割は、とても重要です。今回は、広島市の「訪問看護ステーションかがやき」で、訪問作業療法士として働く大西優美さんにインタビューしました。訪問リハビリテーションの仕事内容や仕事のやりがいなどを詳しく知りたい方は、ぜひ一読くださいね。

※インタビュー実施日:2022年7月

プロフィール

大西優美(おおにし・ゆみ)さんプロフィール

大学在学中に、作業療法士の資格を取得。大学院卒業後、総合病院(急性期・回復期)に7年間勤務したのち、2022年4月から「訪問看護ステーションかがやき」に入職

2022年4月より訪問作業療法士として、訪問看護ステーションで働き始めた大西さん。作業療法士を目指した経緯や、訪問リハビリテーションへ転職した理由などを伺いました。

作業療法士とは?

作業療法士(OT)は日常生活に関わるすべての活動を「作業」ととらえ、障害やケガなどが原因で難しくなってしまった作業を、生活が送れるようにサポートするリハビリテーションの専門職です。食事や料理、字を書くといった生活動作だけでなく、復職に向けたリハビリや、地域活動への参加など社会的適応能力に対する支援も行います。

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作業療法士を目指したきっかけは?

(大西さん)母が作業療法士をしていたことが大きく影響しています。仕事の話を聞くこともあったので、職業のイメージがつかめていました。中学生の時、近所に発達障害のお子さんがいて、そうした子供たちをサポートする職種の人を見る機会が多かったことも、目指した動機のひとつになっています。

作業療法士の仕事内容は?

(大西さん)利用者さんにとっての大切な「作業」を、ご本人が満足する形でできるようにサポートする仕事です。ここで言う「作業」というのは、仕事だったり、家事だったり、趣味だったり、個々で異なります。着替えたり、顔を洗ったり、トイレに行ったりという生活動作も「作業」です。身体に麻痺のある方や、精神障害のある方、骨折した方など、いろいろな原因で日常の「作業」が難しくなった方に対してリハビリテーションを行います。

訪問リハビリテーションへ転職したきっかけは?

(大西さん)今の職場に転職するまで、ずっと病院勤務でしたが、いつかは利用者さんの生活場面に関わりたいと思っていました。生活に直結する作業をサポートする職業だからこそ、訪問リハビリは作業療法士が一番活躍できる場だと思うので転職を決意しました。

訪問リハビリテーションへ転職して感じていることは?

(大西さん)利用者さんが実際に生活しているその現場で、普段から使っている道具を使ってリハビリができるので、毎日がとても新鮮です。時間もあっという間に過ぎます。自宅で練習出来たり、ご家族と密に関わったりできるのは、訪問リハビリの強みだなと実感しています。生活の工夫など、利用者さんから学ぶことも多いですよ。

訪問リハビリテーションだからこそ必要な能力は?

(大西さん)一人で訪問するので、リスク管理はもちろん、臨機応変さなどが求められます。ですが、分からないことは職場の人にすぐ聞くようにしているので安心です。身体のことなら理学療法士さんが得意だし、薬のことなら看護師さんに相談しています。仕事の時は一人で訪問しますが、現在の職場は、他の職種の方ともLINEで情報交換したり、相談したりできる環境なので心強いです。

訪問リハビリテーションでの作業療法士の仕事内容は?

(大西さん)今は多くて1日5~6軒を訪問しています。時間は、1軒につき約40分~1時間ほどですね。車で利用者さん宅を訪問し、終了後にiPadで報告書を書いて終了という流れです。

利用者さんは70~80代の方が多いですが、中には脳卒中のため身体に麻痺のある50~60代の方もおられます。麻痺があっても「家事がしたい」「料理がしたい」とおっしゃる方も多いです。

ただ、作業療法でのリハビリは、身体の機能を回復させることがすべてではありません。大切なのはその方の「生活」です。機能回復に固執しすぎるとご本人もしんどいので、道具を使ったり、環境を整えたりして生活に目を向けてもらうことが作業療法士の仕事だと思っています。

例えば、利き手に麻痺がある方には、反対の手を使う訓練をしたり、「自助具」を使ったりして工夫します。箸がうまく持てない方には、トングのように繋がった箸を使ってもらったり、腰が痛くてかがめない方には、靴を履くときに靴ベラを使ってもらったり、お風呂掃除には、柄の長いブラシをすすめたり…。工夫次第でできるようになる作業は多いので、利用者さんの状態に合わせた提案をしています

あとは、利用者さんの在宅生活を支えているご家族とのコミュニケーションや、ご家族に対するケアを同時にすることも、作業療法士の役割だと思っています。ご家族から「この方法どう?」とアドバイスを求められる場面も多いです。介護に対するストレスを抱えているご家族も少なくないので、お話を聞くだけでもストレス軽減に繋がっているのではないかと思っています。

作業療法士の仕事のやりがいは?

(大西さん)訪問の頻度は週に1~3回のことが多いですが、利用者さんから「前できなかったことができたよ!」とか「言われた通りにやってみたらできた」と言ってもらえるのがうれしいですね。アドバイスしたことを、生活の中で実践してもらえて、すぐにフィードバックが来るのが、訪問リハビリのいいところです。これが病院だと、その場で実際に試すことができませんから。長い生活の中の、僅かな時間の関わりだからこそ、難しさはありますが、利用者さんの笑顔や良い変化を聞けた時はとっても嬉しく、やりがいがあります!

作業療法士として難しいと感じている場面は?

(大西さん)利用者さんに継続して練習してもらうことが大切なので、どうやったらモチベーションをあげてもらえるかな?と考えることが難しいです。リハビリの基本は、ご本人の希望に沿って介入することです。単に指示するだけだと続かないので、まずは共感するところから始めて、利用者さんの気持ちに沿った対応を心がけています

これからの目標は?

(大西さん)大学院に在学していた時、脳卒中の患者さんのご家族に対するサポートの研究をしていました。ご家族にどんな能力が必要なのかなどを研究していたので、その研究内容を今後仕事に生かしていけたらいいなと思います。あと、認知症の方へのリハビリにも携わってみたいです。
また、今後はリハビリ中の方の復職(職場復帰)をサポートするための制度を知る必要があるなと実感しています。復職に向けて、パソコン入力する練習や、電車に乗ったり、職場までのルートを一緒にまわったり…そうした復職サポートができるようになりたいです。以前働いていた病院では関わることがなかったケースなので、これから勉強しなきゃいけないなと思っています。

作業療法士の仕事の範囲はとても広いです。生活が豊かになるなら、どんなサポート方法でもいいと思うんですが、利用者さんだけでなく、ご家族との関わりなどもより必要だと思っています。その方の生活が豊かになることであれば、どんなサポートでも、どんな方法でも考えていきたいです。なので、訪問リハビリに必要な自分の知識の幅を、もっと増やしていきたいと思います。

これから作業療法士を目指す方、興味のある方へのメッセージ

作業療法士は、利用者さんの生活に直結したアドバイスをするので、リハビリに対するダイレクトな反応が返ってくることに、やりがいを感じます。
私はいまだに、毎回緊張しながら訪問しています(笑)。一人で訪問するので、臨機応変さが必要だったり、何があっても一人で対処しないといけなかったりすることも…毎日ドキドキで緊張感はありますが、楽しいです!

実は、訪問リハビリって、私にはまだ早いと思っていました。もっと経験を積んでから…とも考えていたんですが、実際に今の職場に入ってみたら、周囲の方もやさしいし、すぐに相談できるし、転職して本当によかったです。

新人作業療法士さんのインタビューを終えて

総合病院の勤務から、訪問看護ステーションへ転職された大西さん。ほかのスタッフさんとも連携を取りながら、やりがいを持って働いている様子が目に浮かぶインタビューでした。訪問リハビリならではのケースを経験され、もっと学びを深めたいと意欲的に仕事に取り組んでおられるようですね。利用者さんの日常生活を、自宅という生活に直結した現場でサポートしてみたい方は、訪問リハビリテーションの作業療法士に挑戦してみてはいかがでしょうか。

【訪問看護ステーションかがやき】

所在地広島市安佐南区祇園2-47-8
電話番号082-875-6752
対応エリア広島市(中区、東区、西区、安佐北区、安佐南区)
公式サイトhttps://www.lsi-kk.co.jp/
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