介護施設で起こりやすい苦情事例!知っておきたい対処法とは
日頃どれだけ丁寧に利用者さんと向き合っている介護施設であっても、ちょっとした誤解などから苦情やクレームが発生する可能性があります。そのため介護職の方は、苦情への対処法を知っておくと安心です。この記事では、介護施設で起こりやすい苦情事例から、発生したときの対処法までくわしく解説します。苦情が発生したときに慌てないよう、事前に対策しておきましょう。
苦情(クレーム)とは?
苦情やクレームとは、得られなかった欲求を満たすために起こす言動のことです。介護施設では、「もっと丁寧に接してほしい」「サービスの費用を下げてほしい」などが苦情やクレームの1つといえます。苦情とクレームの違いに明確な定義はありませんが、次のように使われることが多いようです。
- 苦情:不快な思いを今後しないよう、建設的な改善を求める言動
- クレーム:返金や賠償などの実質的な補償を求める言動
苦情とクレームのニュアンスに微妙な違いはあるものの、これらが発生したら、介護施設は何らかの対応が求められる点においては共通しているといえるでしょう。
介護施設で発生した苦情事例
ここからは、介護施設で発生しやすい苦情の事例を5つ見ていきましょう。
事例1:貴重品などの紛失
共同生活の場所である介護施設には、高価なものや大切なものを持ってこないよう、利用者さんにお願いしていることが多いでしょう。しかし、中にはカバンにこっそりと貴重品を入れてくる方もいます。そのため、これらを介護施設のどこかで紛失したり、置き忘れたりして苦情に発展する事例は少なくありません。利用者さんが自分の非を認めていることもありますが、「責任は施設にある」と決めつけ、ご家族から弁償を求められるケースもあるようです。
事例2:施設内でのケガや転倒
利用者さんのケガや転倒には、日頃から十分に配慮している介護施設がほとんど。しかし、どれだけ気をつけていたとしても、ケガや転倒がすべて防げるとは限りません。中には、利用者さん同士のけんかから、お互いに手が出てしまいケガにつながることもあるようです。介護施設ではこうしたとき、医療機関への診察や利用者さんのご家族への謝罪などで苦情に対応する事例が多いでしょう。一方で、ケガに対する苦情だけでなく、「介護負担料を支払わない」とクレームに発展するケースもあるようです。
事例3:サービスの質
「介護施設に期待していたサービスが受けられなかった」という苦情も、頻発しやすい事例です。例えば、入浴を希望する方が多いデイサービスやショートステイでは「入浴できなかった」という苦情が多く見られます。一般的に介護における入浴は、血圧や体温などを事前に測定して問題がない場合に行えるもの。しかし、「家族が許可するから入浴させてほしい」「血圧や体温が高いほうだから入浴したい」と言われるケースも多いようです。このように、利用者さんが望んでいるサービスを受けられなかったときは、苦情へとつながる可能性があるでしょう。
事例4:説明や情報の不足
介護施設からの説明や情報提供が不足していることが、苦情やクレームへとつながる事例もあります。例えば、施設内で衣類が汚れたことを家族に伝え忘れたケースや、利用者さん本人に知らせない事柄を話してしまうなどの例があるようです。さらに、退所の時期や段取りについて十分な説明を行わず進めたことで、苦情に発展した介護施設も。十分な説明が行われないことはもちろん、守秘義務を果たさない場合も苦情に発展しやすくなるでしょう。
事例5:介護職員同士の情報共有不足
介護施設の利用者さんからの要望を、介護職員同士で情報共有していないことが、苦情の原因となる事例もあります。例えば、一部の介護職員で決めた介護方法やご家族への対応方法が共有されておらず、それぞれ違う言動をとったことで苦情となったケース。また、ご家族からの要望に無責任に回答してしまい、結果として要望を果たせなかった例もあるとされます。対利用者さんへの配慮はもちろん、チームワークの有無も苦情の発生には大きな影響を与えているでしょう。
介護施設で苦情が発生したときの対処法は?
ここからは、介護施設で苦情が発生したときの対処法について見ていきましょう。
相手が訴えたいことや興奮度を把握する
介護施設で苦情が発生した場合には、まず相手の声に耳を傾けましょう。人によっては興奮して大声を出したり、何度も同じ話を繰り返したりすることもありますが、その奥には満たされていない欲求が隠れています。相手の態度に左右されず、「どうしたら満足がいくのか」という点に注目しながら、冷静に対応していきましょう。また、このときすぐに責任者を呼ばず、相手の興奮が治まってから引き継ぐことも重要なテクニックです。
話はできるだけ遮らず傾聴する
介護施設で苦情が発生したときの基本姿勢は、話を遮らずに聞く「傾聴」です。話の腰を折ることなく最後まで聞くことで、相手をクールダウンさせる可能性が高まるでしょう。このとき注意したいのは、「でも」「ですから」「だって」など、不用意な一言で相手の怒りに火をつけてしまわないことです。これらの言葉は、反抗的な態度や上から目線の姿勢、逃げ腰な印象などを与えるため、怒りをヒートアップさせる要因となります。ときには相手から侮辱的な発言をされる可能性もありますが、ぐっとこらえて傾聴し、その日は答えを出さずに一旦持ち帰るとよいでしょう。
お詫びをクッション言葉にする
苦情やクレームには、すぐにお詫びの言葉を求めるケースが少なくありません。しかし、事実関係がはっきりしない状態で苦情やクレームへの謝罪をしてしまうと、全面的に非を認めたと思われる可能性があります。そのため、苦情の内容そのものへのお詫びを即座にすることは避けたほうが良いでしょう。ただし、「話を伺うことが遅くなった」など、気持ちに沿えなかったことへのお詫びはクッション言葉として有効的です。苦情に発展するまで気持ちの変化に気づけなかったことなどへの謝罪は、すぐに行うと関係性を修復する一助となりやすいでしょう。
利用者さんなどの立場に共感しつつ現状を説明する
話を傾聴し、相手の興奮が治まったら、話の内容を整理して現状説明に入ります。答えられる範囲で、自分たちの立場や事情などを説明していきましょう。重要なのは、利用者さんやご家族の要望に理解を示しながら、現状を伝えていくことです。加えて、できるだけ要望に沿う姿勢があることを示していきます。よほど悪意のあるケースでなければ、介護施設側の事情や立場への理解が深まり、相手の方も落とし所を見つけやすくなるでしょう。
介護施設ごとのマニュアルに沿って情報を共有する
介護施設によっては、苦情の事例ごとに、最終的に報告する担当者や責任者が異なることもあります。そのため、利用者さんやご家族との話し合いが終わったら、施設ごとのマニュアルに沿って情報共有していくことが大切です。相手の訴えや自分の対応などを的確に伝えることで、今後の運営に活かしていきましょう。
介護施設の苦情事例から対処法を知っておこう!
介護施設では、利用者さんやご家族の要求に沿えなかったときに、苦情に発展する事例が少なくありません。そのため適切な対処法を知っておくと、より安心して仕事に望めるでしょう。また苦情には、働いていると気がつかない改善点が隠れていることがあります。前向きに捉えて真摯に対応することで、利用者さんの満足度をより高めていきましょう。