老人ホームでのボランティア活動。受け入れるメリットと注意点とは
人手不足が問題視される老人ホームでは、介護スタッフだけだと目や手が行き届きにくいシーンも。その解決策のひとつとして、ボランティア活動を受け入れる方法があります。今回は老人ホームでのボランティア活動をメインテーマに、「活動自体がどんなものなのか」「どんなメリットがあるのか」という疑問にスポットを当てていきましょう。ボランティアを受け入れる際の注意点についても注目です。
老人ホームでのボランティア活動って何?
普段老人ホームで生活する方々は、介護スタッフや他の入居者さんなど、いつも変わらない顔ぶれの中で日々を送っています。そんな外部との関わりが少ない生活に変化をもたらすのが、“ボランティア活動の導入”。人との関わりを求める入居者さんにとって、ボランティアスタッフとの交流は、地域コミュニティとのつながりの場といえるのです。
補助業務や傾聴など。ボランティア活動事例をチェック
老人ホームでのボランティア活動は、介護スタッフの補助業務がメインです。食事の補助や居室の掃除、敷地内にある花壇の手入れなど、普段介護スタッフが行う業務の一部を補助します。
ボランティア活動には、一人ひとりの入居者さんに合わせて行う“個別対応”と、複数の方々に対して行う“複数対応”があります。個別対応のボランティア活動は、傾聴や散歩の付き添い、囲碁の相手など。入居者さんに寄り添うことで、気持ちの充足と快適な暮らしをサポートします。複数対応のボランティア活動は、歌やフラワーアレンジメント、工作、書道などです。複数人でひとつの活動を行うことになるので、個別対応よりもレクリエーション要素が強くなります。
ボランティア活動の狙いは、介護スタッフの日頃の仕事負担を減らすこと、入居者さんの満足度を高めることなどです。入居者さんの生活の質を向上すれば、老人ホームでの暮らしがより充実したものになると期待できます。
ボランティアを受け入れるメリットは?
老人ホームでボランティアを受け入れると、介護施設側と入居者さん側のそれぞれにメリットがあります。
介護施設側のメリット
日々多くの業務をこなす介護スタッフにとって、ボランティアによる補助業務が入ることは負担軽減につながります。
<介護スタッフの声>
担当業務をすべてこなそうと思うと、どうしても細かいところまで手や目が行き届かなくなる。ボランティアさんが補助に入ってくれると、一つひとつの業務を確実にこなしながら質も維持できると思う。
「もっと入居者さんに寄り添った対応ができれば…」「時間に追われて業務が雑になっていないか心配」といった介護スタッフの不安を解消することも、ボランティアを受け入れるメリットのひとつです。
入居者さんのメリット
入居者さんへのメリットには、精神的な癒し、コミュニケーション能力を維持すること、認知機能の向上などが挙げられます。
<入居者さんの声>
ボランティアのお茶会が開かれたとき、初めて見る茶道の作法に興味がわきました。他の方も「抹茶が美味しくて心がほっとする」と言っていたり、ボランティアスタッフと楽しそうに話していたり…新鮮味のあるイベントの開催はいい刺激になったと感じました。
お茶会のボランティア活動を例に見てみると、抹茶を飲むことで心が癒される、ボランティアスタッフや他の入居者さんとコミュニケーションを取れる、などのメリットがあります。ボランティア活動を機に新たな趣味が見つかれば、認知機能の向上にもつながるでしょう。
ボランティアを受け入れる際の注意点は?
老人ホームでボランティア活動を行うには、資格や経験は特に必要なく、年齢も関係ありません。そのため、ボランティア活動を通して何らかのトラブルが起こるケースも考えられます。
ボランティアスタッフの体調管理
老人ホームの入居者さんの中には、免疫力が落ちていたり、病気が重症化しやすかったりする方もいます。ボランティアスタッフから入居者さんへ病気がうつることのないように、入居者さん・ボランティアスタッフの体調管理には、じゅうぶんに目を向けておきましょう。
高齢であることへの配慮
ボランティアスタッフには、入居者さんが高齢であることをきちんと理解してもらったうえで対応してもらうようにしましょう。理解できていないと、トラブルになる可能性もあります。入居者さんの立場や気持ちを尊重するという心構えの確認が必要です。
リスク回避に!社会福祉協議会への登録
老人ホームでのボランティア活動においては、予期せぬ事故の発生も有り得ます。万が一のリスク回避案として、“ボランティア活動保険”への加入を検討するのもおすすめです。
ボランティア活動保険は、活動中に起こる事故をはじめとするさまざまなリスクに備えるために作られた制度。自身のケガ、他人に損害を与えて損害賠償問題が発生したシーンなどが補償対象です。保険に加入するためには社会福祉協議会への登録が必要になります。補償内容についての詳細、登録方法などを知りたい場合は、最寄りの社会福祉協議会に問い合わせてみましょう。
ボランティアを受け入れるなら準備を整えてから
知識や経験のある介護スタッフにとっては当たり前のことでも、ボランティアスタッフだとわからない、というケースもあります。老人ホームでボランティアを受け入れる場合は、ボランティアスタッフに依頼する業務に対しての事前説明や、確認をきちんと行うことが大切です。老人ホーム側と入居者さん両方にとってのメリットを実感できるよう、ボランティアを受け入れる準備を整えることからはじめてみましょう。