アニマルセラピーを介護施設に導入するメリットと注意点
動物とふれあうことで人々に癒しを与える「アニマルセラピー」をご存知ですか?近頃は、レクリエーションに取り入れている介護施設もあるほどです。しかし中には、アニマルセラピーの方法やメリット・デメリットについて、詳しく理解できていない方もいるでしょう。また、利用者さんや利用者さんのご家族の中には、アニマルセラピーについて不安に思う点がある方もいるかもしれません。今回は、アニマルセラピーを介護施設に導入する際のメリットや注意点などを見ていきましょう。
アニマルセラピーとは?
アニマルセラピーとは日本で生まれた言葉で、「アニマル=動物」、「セラピー=療法」を組み合わせたものです。動物とふれあうことで、精神的に落ち着いたり、動物との散歩により身体機能の向上が期待できたりするともいわれています。身も心も満たされることで、生活の質が向上していくというわけです。
アニマルセラピーの活動は、以下の3つに分類されます。
- 動物とふれあう「動物介在活動」
- 医師などが動物を介在させる「動物介在療法」
- 主に子供を対象とした「動物介在教育」
介護施設などでは動物介在活動がメインで、一定時間動物とふれあうことによってアニマルセラピーを行います。一部の介護施設では、ペットと一緒に暮らすことでアニマルセラピーを導入しているところも。ただし、ペットと暮らせる介護施設は、まだまだ少ないのが現状です。
一般的には、アニマルセラピーでは犬を用いますが、犬に限らず猫やうさぎ、モルモットなどを用いる場合もあります。
介護施設にアニマルセラピーを導入するメリット
介護施設にアニマルセラピーを導入するメリットについて見ていきましょう。主なメリットは4つです。
気持ちが安定する
動物にふれると温もりを感じ、抱っこすると鼓動を感じますよね。温もりや鼓動によって、人間はゆったりとした気持ちになり、孤独感が薄れるとされています。赤ちゃんを抱っこしたときのような幸福感を得られるのです。
このような幸福感がストレスを解消し、気持ちが安定するといわれています。
身体的機能の向上
アニマルセラピーの一環で散歩に行くこともあります。自分のためとなると面倒に感じる利用者さんも、「動物のために散歩しなければ…」という気持ちになり、自然と身体を動かすようになるのです。
歩けない利用者さんに関しても、動物とボールなどのおもちゃで遊ぶことで、座ったままでも腕や指を使って遊べます。アニマルセラピーによって、運動不足の解消や筋肉の強化が期待できるのです。
認知症のリスクが低下
利用者さんは、介護施設ではサポートを受ける立場となり、どうしても受動的になりやすいといえます。しかし動物がいれば、動物の世話のために利用者さんが自ら行動する機会も増えるでしょう。
お世話を必要とする存在がいることで意欲が高まり、ごはんを与える時間や散歩の時間などを積極的に覚える利用者さんもいます。動物の世話によって単調な毎日に刺激が生まれ、認知症のリスク低下にもつながるでしょう。
コミュニケーションが増える
普段無口な方が、動物とふれあい、動物に話しかける様子を見たことはありませんか?動物に対する愛おしさやかわいらしさ、賢さに感心することで、自然と言葉が出て、笑顔になりますよね。
動物とふれあう中で、動物に話しかけ、動物のしぐさで笑顔が増える利用者さんもいるでしょう。また、動物という共通の話題があることで利用者さん同士の会話も弾み、コミュニケーションが増えるというメリットもあります。
アニマルセラピーのデメリット
アニマルセラピーは、メリットだけではありません。やはりデメリットもあるので、確認しておきましょう。主なデメリットは2つです。
ケガや感染症の危険
しつけをしている動物や普段は大人しい動物であっても、やはり生き物です。ちょっとした環境の変化やストレスを感じ取り、意図しない行動をする場合があるかもしれません。また、高齢者は抵抗力や免疫力が落ちている場合もあります。人獣共通感染症に感染してしまうリスクは、健康な方よりも高いでしょう。
アニマルセラピーを行う際は、飼い主や動物を管理する方を近くに配置し、動物の検診や予防接種など衛生管理を事前に行っておく必要があります。動物が利用者さんの口をなめないように注意したり、アニマルセラピーが終わったら利用者さんの手をしっかり洗うように促したりしてください。
動物が苦手な利用者さんもいる
アニマルセラピーはすべての方にメリットがあるわけではありません。例えば、動物が苦手な方や動物に対してトラウマがある方にとっては、苦痛となることもあります。利用者さんの気持ちを大切にして、無理強いをしないようにしましょう。
アニマルセラピーの導入で注意したいこと
最後に、アニマルセラピー導入の際に注意したいことを紹介します。
動物との関わりを持ちたいか事前に確認
アニマルセラピーを定期的に行っている介護施設や、イベントの一環で導入しようと検討している場合は、事前に利用者さんにアンケートをとりましょう。例えば以下のとおりです。
- 動物を飼っていたことがあるか
- 動物とふれあいたいか
- 動物を眺めるだけで良いか など
このアンケートで動物が苦手な方がいれば、動物が苦手な方を集めて違うイベント企画するなど、他の対策をとるようにしましょう。
動物アレルギーの確認と体調のチェック
動物が好きでも動物アレルギーがある方もいます。また、普段はアレルギー症状が出なくても、体調の変化でアレルギーを発症するケースもあるため、注意が必要です。
利用者さんの当日の体調が芳しくない場合は、アニマルセラピーを延期したり中止したりすることも検討しましょう。
動物の安全の確保
利用者さんへの配慮は最優先ですが、動物に対する配慮も忘れてはいけません。アニマルセラピーで癒される方もいますが、中にはパニックになって動物に暴力をふるう方もいます。
人との関わりが少ない子犬やストレスを感じやすい高齢犬などの場合は、アニマルセラピーへの参加が、身体的・精神的に負担となる場合も。動物の安全や健康にも注意しましょう。
アニマルセラピーで利用者さんを笑顔に
アニマルセラピーを介護施設で導入するためには、さまざまな項目をクリアする必要があります。介護スタッフが飼っている犬をそのまま連れてくる、というわけにはいきません。アニマルセラピーへの正しい理解のもと、環境を整え、利用者さんや利用者さんのご家族に理解を得た上で導入しましょう。