2024年度介護保険改正でケアプラン有料化が議論される理由とは
ケアプランは、要支援や要介護の状態にある利用者さんが、介護保険サービスを利用するために欠かせないもの。現状では利用者さんの自己負担は0円となっています。介護保険制度の改正は3年に1回のペースで行われていますが、今議論されている案件がケアプランの有料化です。今回は、なぜケアプラン有料化が議論されるのか、ケアプランの有料化のメリットやデメリットなどについて見ていきましょう。
議論白熱の「ケアプラン有料化」とは?
冒頭で説明したとおり、現在は、ケアプラン作成にかかる費用は実質無料です。しかし、地域や利用者さんによって異なるものの、利用者さん1人あたり月1万円以上の費用がかかっているのが現状。ケアプラン有料化とは、この費用を利用者さんに負担してもらおうという話です。
2020年の介護保険制度改正の際にも議論されましたが、ケアプランの有料化は先送りされました。これは、ケアプラン有料化によってさまざまなデメリットが考えられるためです。一般社団法人 日本介護支援専門員協会などが反対の声を挙げています。
2019年に大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員会が公表した「ケアプラン有料化問題 大阪市内居宅介護支援事業所 緊急アンケート結果報告書」でも、ケアプラン有料化に反対する方が9割近くを占めていました。
こういった経緯から前回の改正では見送られたものの、再び議題に上がっています。では、どうしてケアプランの有料化が必要なのでしょうか。次で見ていきましょう。
ケアプラン有料化が必要な理由について
ケアプラン有料化の大きな理由は、社会保障制度の見直しが必要になっているためです。少子化で現役世代が減っているにもかかわらず、高齢化によって高齢者が増加しています。
つまり、介護保険料の収入は減りつつあるのに、給付としての支出が増えていることを意味しているのです。現役世代の負担を少しでも減らすために、他のサービスと同じように、ケアプラン有料化が必要といわれています。
また国は、新型コロナウイルス蔓延の影響で莫大なお金を使いました。これにより国の財政が厳しくなったこともケアプラン有料化を必要とする理由に含まれると考えられます。
ケアプラン有料化のメリット
ケアプラン有料化によるメリットを見ていきましょう。主なメリットは以下の2つです。
- 公費の削減
- サービスの質の向上
介護保険における居宅介護支援費は、5,000億円ほどです。例えば、ケアプラン有料化によって1割負担をした場合、500億円の公費削減につながります。今後高齢者が増え、介護保険の利用者が増えることが容易に想定できる日本。すべての国民に公平な介護サービスを提供するためにも、また、現役世代の負担を減らすためにも公費を減らす必要があるでしょう。
サービスの質の向上に関しては、ケアプラン有料化によって、ケアマネジャー間の競争が起きるのではないかと考えられています。ケアプラン有料化によって、利用者さんやそのご家族が「せっかく費用を負担するのであれば、ケアマネジャーを選びたい」と思うケースも出てくる可能性も。ケアマネジャーも選ばれる人材になろうと努力することで、ケアマネジャーの質が向上し、サービスも良い方向に向かうでしょう。
ケアプラン有料化のデメリット
ケアプラン有料化のデメリットは主に3つです。
- 利用控え
- 権利意識を強くする
- セルフプランの拡大
ケアプランがなければ介護保険サービスは利用できません。現状はケアプランの作成が無料のため、気軽に相談できました。しかしケアプラン有料化になると、費用的な負担があることから、介護保険サービスの利用控えが起こる可能性があります。
利用控えが起きると、本来は介護保険サービスが必要にもかかわらず、サービスを削る方も出てくるでしょう。それによって、要支援の方が要介護になるなど、介護度の重度化が懸念されます。
また、ケアプラン作成のために費用負担していることが分かれば、「負担に見合ったサービスを提供してほしい」と、利用者される方が権利を主張して、トラブルになるかもしれません。
ケアプランの作成は、ケアマネジャーに依頼せず自分で作成するセルフプランも可能です。セルフプランは難易度の高い作業です。しかしケアプランの有料化により、ケアプランの作成費用を節約しようと、セルフプランを選択する方が増える可能性があります。
もし、専門的な知識を持っていない方がセルフプランをした場合、必要な介護を受けられず現場とトラブルになるリスクもあるでしょう。
2024年ケアプラン有料化は見送りへ
ケアプラン有料化にはメリットとデメリットがあります。日本の少子高齢化のスピードを考えると、ケアプラン有料化の議論は今後も白熱するでしょう。2024年度のケアプラン有料化は見送り、という見方が濃厚です。今後も介護保険制度の改正時期にはどうなるのかをチェックしていきましょう。