勤務先の介護施設が倒産!未払い給与や転職に悩まないための対応策
2022年、多くの介護施設が経営難に陥り、厳しい状況に置かれています。中には、多くのスタッフや利用者さんを抱えたまま、突然倒産を迎えてしまうケースも。介護職として働く方は、いざ勤務先が倒産しても落ち着いて行動できるよう、知識を身につけておく必要があるでしょう。そこで今回は、介護施設が倒産した場合の流れや未払い給与、転職への対策についてご紹介していきます。
増え続ける介護施設の倒産、その理由は?
介護施設の倒産件数が過去最多に
2022年10月、東京商工リサーチが公開した調査結果によると、老人福祉・介護事業者の倒産件数が9月末までで100件に到達。これまで過去最多だった2020年の118件を更新する可能性が高いと発表されました。これは、2021年同時期の51件と比較すると、約2倍の水準です。
介護施設の相次ぐ倒産、その理由は?
介護施設の倒産件数が過去最多で増加している背景には、さまざまな要因があります。
ひとつは、慢性的な人材不足や介護スタッフの高齢化。一方で、他事業所との競争激化や他業種からの新規参入も増えつつあり、経営不振に陥った施設も多いようです。そして、ここ数年のコロナ禍によって、多くの施設が打撃を受けることに。利用控えが相次ぎ、感染防止費用などの臨時支出もかさんで、倒産する介護施設が急増しました。
2021年にはコロナ対策支援策や介護報酬のプラス改定など、介護事業者のための救済措置によって倒産件数は激減しています。しかし、2022年に入ると支援策の縮小とともに再び深刻な状態に変化しました。原油価格の高騰や深刻な円安によって運営コストが大幅に増えてしまったことも、介護事業者への負担増へつながったようです。
勤務先の介護施設が倒産!その後の動きは?
仮に勤務先の介護施設が倒産してしまったら、どのような状況に立たされるのでしょうか。
他の介護施設への引継ぎがある場合
介護施設が倒産した場合、他の施設への引継ぎ(事業譲渡)が行われるケースが一般的です。事業譲渡となっても運営元が変更になるだけで、利用者さんはそのまま利用継続・スタッフも働き続けられる場合がほとんど。ただし、運営元が変わると施設の方針が大きく変更され、業務内容が一新される可能性もゼロではないでしょう。
他の介護施設への引継ぎがない場合
倒産した介護施設の中には、残念ながら引継ぎ先が見つからず、そのまま閉鎖に追い込まれるところもあります。
そうなると、利用者さんは退去を余儀なくされ、介護スタッフも別の勤務先を探さなくてはならなくなるでしょう。ただ、介護の現場は、常に求人であふれている状況にあります。特に時期を気にせず転職活動できる点は介護職のメリットといえそうです。
勤務先の倒産による突発的な転職活動では、退職日までに次の仕事が決まらないこともあるでしょう。そうなると転職活動中は貯金を切り崩しながら、生活することになるかもしれません。
ただ、勤務先が倒産したケースでは、失業手当を当面の生活費に充てることが可能です。自主退職の場合、失業手当を受けるには、離職票の提出から受理までに約7日、さらに支給までに4ヶ月程度の待機時間があります。しかし、倒産などの会社都合によって退職となる場合は、待機時間が免除に。退職から約1ヶ月で受給できます。
倒産したときの未払い給与は戻ってくる?
勤務先が急に倒産したら、給与が支払われる前に退職となることもあります。そのような場合に備えて、「未払賃金立替払制度」について知っておきましょう。
未払賃金立替払制度とは、給与が未払いとなっている退職者に対して、本来支払われるはずの賃金の一部を立て替え払いするために、国が定めた制度です。
この制度の対象となるためには、
- 勤務先の施設が1年以上、事業活動を行っていた実績がある
- 労働者の退職日が倒産した日の6ヶ月前~2年の間である
- 勤務先が法律上の倒産、または事実上の倒産をしている
といった条件を満たすことが必要。立て替え払いされるのは、定期賃金と退職金のうちの未払い賃金の8割です。ただし、未払い賃金総額が2万円に満たない場合は対象外になります。賞与や年末調整の還付金、解雇予告手当などは含まれないので注意しましょう。
安定して働ける勤務先選びが重要に!
今や、どの介護施設も倒産のリスクを抱えている状態。介護の現場で働いている方にとっては、決して他人事ではないでしょう。そのため倒産した際の対処について今のうちから考えておくことはもちろん、倒産の可能性がありそうかどうか勤務先の動向をしっかりと見ておくことも大切です。そしてこれから就職先を探すという方は、安定して働ける職場かどうか慎重に判断するようにしましょう。