「管理者常駐要件」緩和へ、介護業界でリモート勤務が可能になる?

2022年10月17日に開かれた「社会保障審議会介護保険部会」にて、介護サービスを提供する事業所の管理者常駐・専任要件を緩和する意向が示されました。これにより利用者さんに直接かかわらない介護職の方は、今後テレワークが可能となるかもしれません。そこでこの記事では、管理者常駐・専任要件の緩和がもたらす変化や今後の流れについてくわしく解説していきます。

2024年度に管理者常駐要件の緩和へ!介護業界はどう変わる?

まずは、管理者常駐・専任要件の緩和がどういった変化につながる可能性があるのか、具体的に見ていきましょう。

変化1:利用者さんに直接かかわらない業務のテレワークを検討

今回議論されている管理者常駐・専任要件とは、次のような概念です。

【常駐】

常に事業所や現場にとどまることを物理的に求める規制、テレワークなどの遠隔での関与は不可

【専任】

所属する事業所は1人1現場であることを求める規制(例:施設の管理者は1つの施設で別の業務を兼務することできるが、複数の施設で同じ役職を兼務できない)

介護現場の管理者などは、これまで常駐・専任要件を満たすために制約の中で仕事をしていました。しかし、これらの要件が緩和されると必ずしも現場にいる必要がなくなります。これにより、テレワークができる可能性も高まり、現場を離れなければできない業務も行いやすくなっていくでしょう。

変化2:生活相談員や栄養士などの常駐も見直しに

今回の管理者常駐・専任要件の緩和は、介護職に限った話ではありません。特別養護老人ホームに勤務する、生活相談員や栄養士などの常駐・専任要件も見直されることが提言されました。これらの基準が緩和されることで、介護業界の人材不足が解消されることが期待されています。

デジタル化がカギに!段階的な緩和が検討されている

今回検討が進められている管理者常駐・専任要件の緩和の背景の1つは、デジタル化です。介護の業務の中でも、インターネットを介すれば物理的にいる必要がなくなる業種があるのでは、すると複数施設の業務を兼務する余地が広がるのでは、と考えられています。デジタル庁が公表する「常任・専任規制の一括的な見直しについて」によると、現在検討されているのは次のような段階的な緩和です。

PHASE1:常駐・専任規制を課している状態

PHASE2:デジタル技術などによる見直し

PHASE3:常駐・専任規制の撤廃へ

PHASE1はこれまでの常駐・専任要件で規制されている状態、PHASE2が現在の段階、PHASE3が今後目指していく状態です。PHASE3の先行事例としては、サービス付き高齢者向け住宅における配置基準の緩和が挙げられるでしょう。

【サービス付き高齢者向け住宅における配置基準の緩和】

現行基準:夜間を除き、有資格者である看護師や介護スタッフなどが施設内もしくは500メートル以内に近接する建物に常駐する

改正基準:緊急通報装置を居室内に設置、1日1回以上の現地訪問、電話などでの生活相談の提供の条件を満たせば、日中の職員常駐は不要

サービス付き高齢者向け住宅以外の介護施設でも常駐・専任要件の規制がなくなれば、このような人材配置における変化があるものと見込まれています。

2040年度に約280万人の介護人材確保を目指す

管理者常駐・専任要件の緩和が推進されているもう1つの背景には、生産人口の減少があります。とくに団塊の世代が75歳以上になり、高齢者人口が増加する2025年から2040年にかけては、さらに人手不足が深刻になるとのこと。2040年度には約280万人の介護人材が必要だといわれています。今回の管理者常駐・専任要件の緩和が進めば、複数の施設の業務を兼務できる職種の方が増え、介護人材不足が軽減される可能性があるでしょう。

介護業界のさらなる業務改善が進む可能性大!

デジタル化が進む中、さまざまな業界でこれまでの規制を緩和する動きが高まっています。介護業界も例外ではなく、管理者常駐・専任要件が緩和されることで、今後はリモートワークができる職種が出てくるかもしれません。2024年度の介護報酬改定に合わせて具体的な検討が進められていくと見込まれているため、ぜひ今後の動きにも注目しておきましょう。

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