介護現場での「自立支援」とは?わかりやすい解説と4つの基本ケア

介護の現場で、「利用者さんができないことは全て介助してしまう」ということはありませんか?しかし本来は、利用者さんができないことを全て介助するのではなく、自立を促すよう手助けする自立支援介護が必要です。今回は介護現場における自立支援について、わかりやすい解説とともに4つの基本ケアを紹介します。利用者さんの自立に向けてより良い介護ができるよう、ぜひ参考にしてください。

介護における「自立支援」とは

病気や加齢によって介護が必要になった方に対して、自立した生活ができるように手助けすることを「自立支援介護」と呼びます。介護が必要になった利用者さんは、生活における全ての動作ができなくなったわけではありませんよね。できることが少なくなったため、介護を必要としているはず。

わかりやすい例にたとえると、排泄の介助では「ズボンの上げ下げは利用者さん」「便座に移るのは手すりの位置を誘導しながら介助」などです。介護スタッフが全て介助するのではなく、自分でできる部分は自分でしてもらうことが自立につながります。利用者さんができることまで奪ってしまわないよう、あくまでも一人では難しい部分を介助することが大切です。

介護における自立は、「身体的自立」「精神的自立」「経済的自立」の3種類。

  • 身体的自立/生活に必要な入浴・食事・排泄などが自分自身で行える
  • 精神的自立/自分自身の生活や寺院性について考えて行動に移したり判断したりできる
  • 経済的自立/生活に必要な費用を本人の収入で賄い、管理ができる

これら3種類の自立は、どれが欠けてもバランスが悪くなります。

介護現場では、身体的自立につながる日常生活動作や運動機能に関する自立支援を行うことが多いのではないでしょうか。
厚生労働省の「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」 にも、「自立支援・重度化防止の取組の推進」という項目が盛り込まれています。ADL(日常生活動作)維持等加算が拡充されるなど、政府としても自立支援を重要視していることがわかりますね。

自立支援介護における4つの基本ケア

ここからは、自立支援介護における基本となる4つのケアについて解説します。わかりやすい数値の指標もあるので、目安にすると良いでしょう。

水分ケア/1日あたり1,500ミリリットルの水分摂取

自立支援介護では、1日あたり1,500ミリリットルの水分を摂取する必要があるとされています。人間の身体の大部分は水分が占めており、成人の場合は身体の60%以上、高齢者では身体の50%~55%が水分です。水分を摂る量が不足すると脱水症状になるだけでなく、身体の動きや脳の覚醒基準にも影響します。これらは認知症の原因になる可能性があるため、注意が必要です。意識して水分摂取を促すとともに、水を飲むのが苦手な方には好きな飲み物や水分の多いゼリーなど、摂取しやすい工夫をしてみましょう。

栄養ケア/1日あたり普通食で1,500キロカロリー摂取

自立支援介護では、普通食で1日あたり1,500キロカロリーの摂取を推奨しています。栄養が不足すると体力がなくなり、身体を動かさないことで筋力が低下し、さらには寝たきりの状態になることも。栄養ケアでは、自分でしっかり噛んで食べ、1日に1,500キロカロリー以上栄養を取ることが目標とされています。噛む力が衰えると、やわらかい食事に頼りがち。噛んだり飲み込んだりするときに使う筋力を低下させないためにも、できるだけ普通食にして、しっかり噛んでもらうようにしましょう。

運動ケア/1日2キロメートルの歩行

自立支援介護の運動ケアでは、1日あたり2キロメートルの歩行が必要とされています。毎日の運動は体力や筋力の維持につながり、自立した日常生活を送るには欠かせないことです。しかし、突然「1日に2キロメートル歩きましょう!」と言っても、難しい利用者さんもいるでしょう。利用者さんの意志や状況に合わせて、まずは短い距離から始めて、少しずつ距離を伸ばすことが大切。また、1日の合計が2キロメートルになればよいので、一度に長い距離ではなく細切れで運動する習慣をつけると良いですね。

排便ケア/3日以内の自然排便

高齢になり食事量や運動量が減ると、排便の回数も少なくなりがちです。自立支援介護では3日以内に自然排便があることを理想としていますが、腸の動きが悪くなると難しいこともあるでしょう。自然排便には、食事や運動、水分摂取などトータルでのケアが必要です。

自立支援介護を行うメリットと注意点

介護現場で自立支援介護を行うと、さまざまなメリットがあります。一方で、自立支援介護を押し付けすぎると、利用者さんとの信頼関係が悪化することも。メリットと注意点をしっかり押さえて、より良い自立支援介護につなげましょう。

QOL(生活の質)の向上

自立支援介護を行う大きなメリットは、利用者さんが自分でできることが増えて生活の質が向上することです。自分でできることが増えると、自分の意志で行動できるため、何事にも意欲的に取り組むようになれます。

介護度の改善

自立支援介護により自分でできることが増えると、介護度が変化するほどの効果があることも。日常生活を介護スタッフの介助に頼り切っていると介護度は下がる一方かもしれませんが、自立を促す自立支援を続けることで、介護度が改善することもあるのです。

介護負担の軽減

本人のQOLの向上や介護度の改善により、介護する側の負担も軽減します。自立支援介護を始めたばかりの頃は、わかりやすい効果は得られないかもしれませんが、毎日習慣として続けていくうちに変化を感じられるでしょう。

無理なリハビリや運動

特に運動ケアでは、個人によってできることが異なるので注意が必要です。無理なリハビリや運動をしてしまうと、利用者さんとの信頼関係にひびが入るだけでなく、ケガにもつながりかねません。利用者さんの状況に合わせた、適切な自立支援介護を心がけましょう。

本人の希望や意思の尊重

自立支援介護は、長い目で見れば利用者さんのためになることです。しかし、本人にやる気がない場合や、ハードルが高いと感じていることを無理強いするのは禁物。最初に「どれくらいのことなら無理なく続けられるのか」を利用者さんと話し合ってから取り組むようにしましょう。

自立を促すよう手助けする自立支援介護を

介護の現場では、利用者さんができるだけ快適に過ごせるように介助をすることが多いかもしれません。決して悪いことではありませんが、利用者さんのためには自立支援介護をすることが大切です。基本ケアではわかりやすい数値の指標もあるので、習慣となるよう心がけてみましょう。

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