自立支援介護を行うための4つのポイント!注意点もおさらいしよう

自立支援介護は、近年注目を集めている介護の方法です。介護が必要な方が自立した生活を送れるよう、具体的な目標を掲げ、複合的な視点でサポートを行っていきます。そこでこの記事では、自立支援介護とはどのような方法か、また具体的な事例について見ていきましょう。厚生労働省が推進するケア方法でもあるため、介護職の方はぜひ1度ご覧ください。

自立支援介護とは?

自立支援介護とは、介護が必要な方が自立した生活を送れるよう支援するケア方法のことです。これまでの介護との違いは、利用者さんが日常生活を自主的に取り組む機会をできるだけ奪わないようサポートするところにあります。

自立支援介護が注目され始めたのは、厚生労働省が社会保障費の削減を目指し、保険者機能の抜本強化を公表したためです。介護保険法等の一部を改正し、地域共生社会の実現・維持が図れるよう自立支援介護を推進し始めました。

また、一般社団法人日本自立支援介護・パワーリハ学会では、自立を「身体的自立」「社会的自立」「精神的自立」の3つから成り立つと考えています。なかでも、高齢者の自立で重視しているのは身体的自立とのこと。身体機能を改善し、日常動作を再び自主的に行えるよう生活を整えていけば、生活の質も向上していくとの考えを示しています。

自立支援介護を行うための4つのポイント

自立支援介護を行うと、利用者さんの生活の質が高まったり、介護をする家族の負担が軽減されたりといったメリットがあります。ここからは、一般社団法人日本自立支援介護・パワーリハ学会が提唱する、自立支援介護における4つのポイントを見ていきましょう。

こまめな水分摂取を促す

自立支援介護を実現する1つ目のポイントは「水分補給」です。高齢者は若い頃よりも体内の水分量が約10%減っており、身体全体で約50%しかありません 。さらにのどの渇きを感じる機能も低下するため、水分摂取が遅れやすく、脱水症状が引き起こされやすいのです。

そのため、自立支援介護では水分補給を基本のケアとしています。目安となる水分摂取量は、1日に1500ミリリットル以上です。十分な水分量の摂取が難しい方は、おやつにゼリーを提供するなど工夫を加えてもよいでしょう。

噛める食事で1日1500カロリー以上の摂取を目指す

自立支援介護を実現する2つ目のポイントは「食事」です。年齢を重ねると口腔機能は低下し、唾液の分泌量も減ってきます。これらの変化により、食べ物を噛む力が衰え、食欲が減退してしまう方が少なくありません。

そこで自立支援介護では、噛むことを意識した食事で1日1500カロリーの摂取を目指していきます。加えてタンパク質や食物繊維など、高齢者が不足しやすい栄養を積極的に摂れるようサポートしていきましょう。1回で食べられる量が少ない方は、間食を加えることで食事の量と質を改善していきます。

適度な運動を促す

自立支援介護を実現する3つ目のポイントは「運動」です。運動の出発点は離床ですが、車いす生活を送る方などは、ベッドから物理的に離れているだけで、日常的に運動していないことが少なくありません。運動が不足した生活習慣が積み重なると、糖尿病や脳卒中、認知症などのリスクを高める可能性もあるでしょう。

そのため自立支援介護では、利用者さんに適度な運動を促すことで、全身の筋肉や脳によい刺激を与えることを重視しています。目安としては、休憩を挟みながら1日2キロメートル歩くことを目標にしていくと、運動不足解消につながるでしょう。

自然な排便リズムを定着させる

自立支援介護を実現する4つ目のポイントは「排便」です。高齢になると便秘に悩む方が多くなり、下腹部の不快感や腹痛などを訴えることも少なくありません。排便トラブルの要因は、加齢に伴う食事量や日常生活動作の低下などが考えられるでしょう。

そのため、自立支援介護では3日に1回以上の自然な排便リズムを定着させるようなサポートを重視していきます。ここまで見てきた水分・食事・運動のケアが十分に行われていると排便リズムも整いやすくなるでしょう。

自立支援型のケアマネジメントの事例

ここでは、厚生労働省が公表する「高齢者の自立を支援する取り組みについて」をもとに、介護現場で求められる具体的なケアについて見ていきましょう。

<従来型と自立支援型のケアマネジメントの例>

利用者さんの状態:要支援2、家にいることが多くなり下肢機能が低下
利用者さんの課題:入浴ができない(入浴ができる余地はある)
認定期間:6ヶ月

従来型のケアマネジメント

目標清潔の保持に努める
サービス内容・デイサービスで週2回入浴を行う

自立支援型のケアマネジメント

目標6ヶ月後に自分で入浴できる
サービス内容・歯科医師や管理栄養士など専門家が集まりケア会議
・デイサービスで下肢筋力強化と入浴動作訓練の実施を提案
・自宅の浴室に入浴補助用具の導入を提案
・食生活の見直し
・口腔内の状態を確認 ・服薬状況の把握

出典:厚生労働省「高齢者の自立を支援する取り組みについて」

従来型のケアマネジメントでは、介護がスタートすればサポートなしでの生活は考慮されず、定期的な介助を前提としてサービスが展開されていました。一方、自立支援型のケアマネジメントでは、具体的に評価できる目標を立て、自立した生活が取り戻せるようなサービスを検討していきます。このように利用者さんによってアプローチ方法を変えることで、介護の重度化を助長せずに改善を図ることもできるでしょう。

自立支援介護を行うときの注意点

利用者さんにとってもさまざまなメリットがある自立支援介護ですが、実際に行うときには以下の注意点を考慮しておく必要があるでしょう。

バランスよくケアを行う

自立支援介護で重視されやすいのは、運動だといわれています。そのため、介護職の中には「運動を重視することが重要」と偏ったケアを行うケースも少なくありません。しかし、自立支援介護で大切なのは4つのケアをバランスよく行うことです。どれか1つに偏ったケアとならないよう注意しましょう。

利用者さんの希望を伺う

自立支援介護では、利用者さんが自立した生活を送り、自分らしく生きることを大切にしています。しかし、この方法がすべての利用者さんに適切であるとは限りません。まずは利用者さんの希望や身体機能などの状態を把握し、適したサポート方法を検討することが大切です。

利用者さんに合わせたケアプランを行う

自立支援介護の指針には、1日に必要な食事量や水分量など、数値で提示されている目標があります。しかし、これはあくまでも一般的な目安であり、すべての方にあてはまるとは限りません。そのため、実際にケアを行うときには利用者さんの生活習慣や体格、持病の有無などを考慮しながらプランを立てる必要があるでしょう。

自立支援介護で利用者さんの自主性を尊重しよう!

自立支援介護では、利用者さんが自立した生活を送ることを目指し、適切なサポートを行っていきます。これにより要介護度が改善し、介助がいらない生活を取り戻す方も増えるかもしれません。近年の介護ではこうした自立を促す方法が広がり始めているため、改めて理解を深め、業務に活かしてみてはいかがでしょうか。

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