服薬介助のマニュアルを作るメリット!注意点を網羅し情報共有しよう

服薬介助は、介護職に認められている医療行為の1つです。しかし、利用者さんの命にも関わるサポートのため、実施するときには十分な配慮が求められます。そこでこの記事では、介護職が行える服薬介助とはどんなものか、また注意点などをご紹介。さらに、服薬介助のマニュアルを作成するメリットについても解説していきます。服薬介助に課題を感じている介護職の方は、ぜひご覧ください。

服薬介助とは?

服薬介助とは、利用者さんが医師から処方されている薬を正しく服用できるようサポートすることです。通常であれば服薬のサポートも医療行為にあたるため、看護師などが行わなければなりません。しかし、事前に介護職が服薬介助にあたることを利用者さんとご家族に伝え、次の条件を満たす場合のみ介護職が服薬介助することができます。

  1. 患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
  2. 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと
  3. 内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと

引用元:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)

実際に服薬介助を行う際は、医師や薬剤師による服薬指導と、看護師からの保健指導を遵守した適切な対応が求められます。あらかじめ注意点などを確認し、服薬介助を行いましょう。

▽介護職が行える医療行為についてくわしく知りたい方は、こちらの記事もおすすめ

服薬介助の注意点

服薬介助は、利用者さんの命に関わりかねないサポートのため、対応には十分な注意が必要です。ここでは、服薬介助の具体的な注意点について見ていきましょう。

介護職が行えない服薬介助がある

服薬介助は一定の条件を満たした場合のみ、介護職が行うことが認められています。その範囲は次のように定められています。

<介護職にできる具体的な服薬介助>

  • 一包化された内用薬の準備
  • 服薬時の声かけ
  • 飲み残しや飲み忘れの確認
  • 軟膏の塗布
  • 湿布の貼りつけ
  • 坐薬挿入
  • 点眼
  • 鼻腔内に噴霧する薬剤を使用する際の介助

一方、次のように利用者さんの状態や薬の種類などによっては、介護職が行えない服薬介助もあることを確認しておきましょう。

<介護職がしてはいけない服薬介助>

  • 入院・入所が必要な治療を受けており、容態が安定していない場合
  • 副作用の危険性・投薬量の調整など、医師または看護師が連続的に容態の経過観察をしなければならない場合
  • 専門的な配慮が必要な場合
  • PTPシートからの薬の取り出し

このように、体調が急変する可能性がある利用者さんへの服薬介助は、介護職の対応範囲から外れています。また、PTPシートからの薬の取り出しも介護職が禁止されている医療行為のため注意しましょう。

飲み間違いや飲み忘れに注意

薬によっては、指定より多くの数を飲んでしまったり、飲み忘れてしまったりすると体調が悪化してしまうことがあります。そのため、薬の飲み間違いや飲み忘れには十分注意しましょう。対策としては、1回で飲むべき薬を一包化しておくことが考えられます。

ただし、介護職は薬をパッケージから取り外すことは禁止されているため、利用者さんが通う薬局などで一包化を依頼してもらうことが必要です。薬局によっては若干費用が高くなる可能性もあるため、利用者さんやご家族に利点を説明し、検討してもらうよう働きかけてみると良いでしょう。

また、服薬介助の手順などをまとめたマニュアルを作成することも、飲み間違いや飲み忘れを防ぐ対策の1つです。施設ごとに適した方法で服薬介助が行えるよう、手順や注意点をまとめていくと良いでしょう。

水分の種類にも注意が必要

内用薬の場合、基本的には水またはぬるま湯で服用しなければなりません。どうしても水で飲めない方に限り、お茶での服用を検討していきます。この場合は、カフェインの含有量が少ない、玄米茶や麦茶を選びましょう。

利用者さんの中には、薬の苦みなどを緩和するため、ジュースでの服用を希望する方もいるかもしれません。しかし、ジュースでの服用は副作用や効果の減少につながる可能性があるため、安易に応じることは危険です。この場合は水分の種類を変えるのではなく、より飲みやすいタイプの薬がないか、医師に相談してみるほうが良いでしょう。

飲み込み確認・飲んだ後の変化にも気を配る

内用薬は、できるだけ体を起こして薬を飲んでもらい、誤嚥に気をつけることも大切です。起き上がれない利用者さんは、姿勢を横向きにしたり頭を持ち上げたりして飲みやすくなるよう配慮しましょう。

また、服薬後の変化にも気を配っていきます。体調に変化がないか、薬を吐き出していないかなど、確実に服薬できているかを確認しましょう。万が一体調に変化が見られた場合には、医師や看護師に知らせ、適切な対応をとることが大切です。

服薬介助のマニュアルを作成した事例

利用者さんの服薬介助を安全に行うためには、マニュアルを作成し、介護職同士での情報共有を適切に行うことも対策となります。実際に服薬介助のマニュアルを作成した介護施設では、飲み残しや飲み忘れが起こる要因を分析したところ、次のような問題点が明確になったようです。

  • 薬の取り扱いについて不安をもつ介護職が少なくない
  • 薬の名前の確認が徹底されていない
  • 服薬の方法を見直したい
  • 服薬中の観察が十分されていない

これらの課題に対し、同施設では看護師による服薬介助の勉強会を開催したり、配薬の方法についてマニュアル化したりといった対応を行いました。これらの取り組みが徹底されたことで、誤薬ゼロを達成したといいます。このように服薬介助の問題点を見直し、マニュアル化していくことは、利用者さんのサポートを安全に行うためにも大切だといえるでしょう。

服薬介助のマニュアルを作るメリット

介護施設での服薬介助など、ケアのマニュアルを作ることは、利用者さんにとっても介護職にとってもメリットがあります。ここでは、服薬介助のマニュアルを作るメリットについて見ていきましょう。

事故やトラブルを未然に防ぐ

服薬介助のマニュアルを作ることは、介護職個人の判断による、事故やトラブルを未然に防ぐ役割を果たします。ケアの基本をマニュアルにまとめておけば、個人の勘や経験に頼らずに済むため、正しい手順と方法で利用者さんの服薬介助にあたれるでしょう。

また、服薬介助にマニュアルを導入することは、介護職の方を守る役割も果たします。万が一事故やトラブルが生じたときでも、マニュアルに沿ったケアをしていることが示せれば、個人を守ることにもつながるでしょう。

業務を的確に効率よく進められる

服薬介助の手順がマニュアル化されていれば、業務を的確に進められるため、生産性が上がりやすいでしょう。介護職の負担を減らすことはもちろん、利用者さんの個別ケアの時間を増やすこともできるため、お互いにとってメリットが高いといえます。また、新しく入ってきた方にも指導が行いやすくなるため、早期育成の一助にもなるでしょう。

服薬介助のマニュアルを作り情報共有していこう!

一部の服薬介助は、介護職が行うことが認められています。ただし薬によっては、誤薬や飲み忘れが体調を悪化させる可能性もあり、十分な配慮が必要です。そのため、服薬介助の基本手順をまとめたマニュアルを作成すると、トラブル防止や生産性向上につながるでしょう。まだ作成していない介護施設は、服薬介助のマニュアルを作り、安全性を高めてみてはいかがでしょうか。

この記事をシェアする