ターミナルケアとは?介護施設における役割と今後の展望
近年耳にする機会が増えた「ターミナルケア」とはどのようなものなのでしょうか。「言葉として知ってはいるけれど、詳しい内容までは把握していない」といった方もいるかもしれません。本記事ではターミナルケアの概要を分かりやすく解説し、介護施設に取り入れる意義や今後の需要の傾向について考えていきます。人生の終末期におけるターミナルケアの重要性を確認しましょう。
ターミナルケアとは
近年ではターミナルケアの需要が介護施設でも増えています。ターミナルケアがどのようなもので、どのようなタイミングで行われるのか、理解を深めていきましょう。
ターミナルケアの概要
ターミナルケアのターミナルとは「終末期」を指し、ケアは「医療や看護、介護」を表します。つまり、ターミナルケアとは終末期におけるケアです。ターミナルケアでは精神と身体、両面における苦痛を緩和して、QOL(Quality of life:生活の質)を保ちます。
老衰や病気などで終末期を迎えた方が穏やかに過ごせることが目的となるため、延命を目的とした治療や、痛みや苦痛が伴うような治療は基本的に行いません。痛みを和らげたり症状に応じた医療的な処置を行ったりします。
ターミナルケアの開始時期
ターミナルケア開始のタイミングはご本人の意思がベースです。2018年に公表された厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」では、人生の最終段階における意思決定には医療・ケアチームとの話し合いが重要としています。この医療・ケアチームには介護従事者も含まれ、大切な役割を担っているのがポイントです。
ご本人の意思が確認できないケースでは、ご家族との話し合いや複数の専門家を含めた話し合いで決定されるケースもあります。
ターミナルケアを行う「終末期」は、施設でどう判断したら良いのでしょうか。公益社団法人全日本病院協会の2016年発表資料「終末期医療に関するガイドライン ~よりよい終末期を迎えるために~」では、終末期を以下のように定義しています。
- 複数の医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること
- 患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師等の関係者が納得すること
- 患者・家族・医師・看護師等の関係者が死を予測し対応を考えること
引用元:公益社団法人 全日本病院協会
終末期医療に関するガイドライン ~よりよい終末期を迎えるために~
一般的には、病気の回復が見込めない、寝たきりとなり食事が摂れない、こんな状態をターミナルケア開始時期の目安としている医療機関や施設が多いようです。
どんな場所でターミナルケアが行われているの?
ターミナルケアはおもに「病院」「自宅(在宅介護)」「入居型介護施設」の3つの場所で行われています。
「病院」でのターミナルケア
ターミナルケアを行う医療施設は「ホスピス」が代表的です。余命が限られたがん患者さんやエイズ患者さんなどが入院しています。
「入居型介護施設」でのターミナルケア
入所型の介護施設で行われるターミナルケアは、介護スタッフ、ケアマネジャー、医師、看護師などが連携してケアし、ご家族と情報共有します。
「自宅」でのターミナルケア
自宅でのターミナルケアは、入院や介護施設に入所するケースと異なり医師や訪問看護師、訪問介護スタッフとともにご家族が連携して行うことが特徴です。点滴や酸素吸入といった医療処置とともに、褥瘡などのケアが行われます。
介護施設においてターミナルケアを行う重要性
人生の最終段階における意思の決定では、医師や看護師といった医療チームだけでなく、介護スタッフからのサポートも重視されているのが近年の傾向です。また、急激な高齢化に伴い、ターミナルケアや看取り介護を受けられる介護施設の需要も高まっています。
ターミナルケアをはじめとした利用者さんの理想とする人生の最終段階の過ごし方について検討し、質の高いケアを提供できるよう、介護施設は体制を整えていく必要があるでしょう。