【2024年度~】今からどう備える?介護事業所にて財務諸表の公表義務化へ

2024年度の介護保険制度改正にて、すべての介護事業所を対象に財務諸表の公表義務化が予定されています。制度改正には介護事業所の経営改善や介護職の処遇改善といった前向きな目的もあるようですが、「新たな業務が増えれば現場の負担が増えそう…」といった懸念もあるようです。そこで今回は、財務諸表の公表義務化について詳しく解説。介護事業所が今からしておくべき備えについても、分かりやすくお伝えします。

2024年、介護保険制度改正で変わることは?

介護職の方は、2024年度から施行となる介護保険制度の改正内容についてご存じでしょうか。
2022年12月に実施された「第104回社会保障審議会介護保険部会」にて、すべての介護事業所に対し、財務諸表などの経営状況が明示されている資料の公表を義務化することが提示されました。

これまで財務諸表の公表義務化は社会福祉法人や障害福祉事業者のみが対象でしたが、2024年度からは介護事業所も加わることになります。制度改正後、介護事業者は財務諸表を定期的に各都道府県へ提出しなくてはなりません。そのデータを、国がデータベース上で管理します。

財務諸表の公表が義務化された背景

財務諸表の公表義務化に至った背景には、介護業界が抱える人材不足があります。介護業界では、以前から介護職の負担増や給与水準が低いことがたびたび問題視されていました。このままでは介護職の離職が増え、ますます人手が足りなくなる悪循環に。そこで、介護現場の処遇改善への第一歩として、介護事業所の経営状況の“見える化”が目指されるようになったのです。

制度改正によって介護業界がどう変わるか?

まず、財務諸表の公表義務化によって今後期待される主なメリットとしては「介護業界への施策検討の精度向上」があります。介護業界の財政状況を正確に国が把握できるようになれば、今後、介護職を対象としたさまざまな政策も、より現場に寄り添った的確な内容となるでしょう。

また、介護施設経営者にとっても、介護業界全体の財政状況が公表されれば、自事業所の経営課題の分析に活用できるはず。経営改善につながる事業所がひとつでも増えれば、介護事業所の倒産件数が減少し、介護職の処遇も少しずつ改善していくことでしょう。その結果、人材不足という深刻な問題も改善に向かうのでは、と期待されているのです。

その一方で「介護職の事務負担の増加」といった懸念事項もあります。これまでも介護事業所に対する経営状況調査は行われていたものの、一部を対象としたサンプル調査にすぎませんでした。

しかし、財務諸表の公表が義務化となれば、より細かい資料の提出が求められます。複数拠点や併設サービスがある場合には、拠点ごと、サービスごとの損益計算書を提出しなくてはならないのです。さらに、その損益計算書は厚生労働省が定める「会計の区分」に従った内容でなくてはなりません。

とはいえ、このような業務は表向きには規定の運営基準であるため、大規模施設の中にはすでに専任事務員が担当していることも多いです。しかし、中小施設では会計管理を経営者自らや外部の会計事務所が行っていることも多く、詳細な会計管理ができていないケースも少なくありません。そのため、特に中小施設において事務負担増が懸念されているのです。

介護業界の変化に向けて今から準備できること

2024年度からの制度改正に向けて今から準備しておくこととしては、会計管理体制の強化が挙げられます。場合によっては、新たな会計専任者の雇用や、会計事務所の再選定も必要となるでしょう。特に、会計事務所の選定基準としては、介護業界の「会計の区分」について知識があるかどうかが重要なポイントです。仮に「会計の区分」を理由に記帳代行を任せられないとなると、別途処理料金が発生することもあるため、慎重に選ぶようにしましょう。

今後の動向に目を向け、早くから備えておくことが大切

財務諸表の公表義務化について方針が固まったものの、「現場の事務負担増やコスト増を招かない対策を」との声もあります。2024年の施行に向けて詳細が決まっていくため、今後の動向に目を向けつつ、さまざまな備えをしていく必要があるでしょう。

この記事をシェアする