入浴介助の注意点は?入浴の前・中・後に分けて詳しく解説
階は異なるものの、介護施設で生活する利用者さんの多くが入浴介助を必要とします。入浴介助ではスムーズな進行が求められますが、注意点への意識も欠かせません。今回は入浴介助の注意点をメインテーマに、入浴シーンを3つに分けて詳しく解説します。まずは入浴介助の目的をおさらいしてから、順を追ってチェックしてください。
目次
入浴介助の目的は?
入浴介助の目的は、利用者さんの身体の清潔を保って感染症を予防し、リラックスしてもらうことです。
皮膚が汚れた状態だと、感染症や床ずれの原因になります。また、清潔さが不十分だと体臭が気になるようになり、利用者さんご自身や周りの方を不快にさせるかもしれません。清潔を保つことは、社会的に良好な関係を維持するためにも必要です。
入浴介助のもうひとつの目的は、利用者さんにリラックスしてもらうこと。入浴で身体が温まると緊張がほどけるので、血液の循環が促されて新陳代謝が高まります。身体がリラックスすれば睡眠の質の向上も期待できるでしょう。
入浴介助の際に介護職員が心がけることは?
入浴介助中に気を付けたいのが、利用者さんの安全です。転倒などの事故防止対策を徹底しましょう。体調がすぐれないときには無理をせず、清拭や足浴などを取り入れるのもおすすめです。また、着替えや体を洗うなど自分でできることはやってもらうよう促すのもポイント。難しい部分をさりげなくサポートしすることを心がけましょう。
【入浴介助の注意点その1】入浴前はタイミングと温度変化に注意
入浴介助の注意点として、入浴前に“入浴のタイミングと温度変化へ配慮”することが挙げられます。
入浴のタイミングは空腹時と食後を避けましょう。空腹時は水分不足や血糖値の低下による体調不良の恐れがあり、食後は消化不良の原因になる可能性があります。また、入浴前の温度変化が大きいと利用者さんの身体へ負担がかかるため注意が必要です。入浴前に脱衣所と浴室を暖めて、ヒートショック対策をするとよいでしょう。温度変化が大きくなりやすい冬場は特に注意が必要です。
その他、入浴前の利用者さんの体調、転倒の原因になる障害物の有無をチェックすることも入浴介助の注意点として意識しましょう。
<入浴前の手順>
1.体調チェック | 体温、血圧、脈拍、呼吸、表情など |
2.脱衣所と浴室の温度確認 | 暖房器具や浴室暖房を活用 |
3.浴槽のお湯はりと必要な物の準備 | お湯は38~40度を目安に |
4.脱衣所への移動 | 移動前には利用者さんにトイレを済ませてもらう |
入浴前には、利用者さんご自身が入浴したいかどうかを確認することも忘れないようにしましょう。
【入浴介助の注意点その2】入浴中は身体への負担と時間に注意
入浴中は、利用者さんの身体への負担と入浴にかける時間に注意しましょう。
身体の負担を減らすには、心臓から遠い足元からお湯をかけるのがコツ。お湯をかけるときは声かけをし、お湯の温度が熱すぎずぬるすぎないように気を付けましょう。また、長湯をするとのぼせる可能性があります。熱中症や脱水症状の原因にもなるので、5分程度の入浴を意識してください。
<入浴中の手順>
1.肌が触れる部分を温める | 床や椅子などが冷たくないように |
2.椅子に座ってもらう | 手すりがあれば活用 |
3.お湯の温度確認 | 介護職員と利用者さんの両方で確認 |
4.足元からお湯をかけて順次洗う | 髪→顔→上半身→下半身の順に洗う。すすぎも入念に |
5.お湯に浸かる | 転倒と長湯に注意 |
6.浴槽から出る | 転倒に注意 |
浴室内は特に転倒のリスクがあります。利用者さんご自身に手すりを使ってもらうか、介護職員が身体をしっかり支え、転倒防止に努めましょう。
【入浴介助の注意点その3】入浴後は転倒と水分不足に注意
入浴後は、転倒のリスクと水分不足に気をつけてください。
足が濡れていて転倒しやすい入浴後は、浴室を出てすぐに足の裏を拭きましょう。また、身体の水分が不足しやすいのも入浴後です。着替え終わったら利用者さんに水分補給をしてもらい、脱水を防ぎましょう。
<入浴後の手順>
1.タオルで水分を拭き取る | 足の裏、身体、頭 |
2.着替え | 椅子に座った状態でゆっくりと着替えてもらう |
3.水分補給と体調チェック | 入浴前と同じく変化に注意 |
入浴後は、入浴の疲れで利用者さんの身体に変化が出やすいタイミング。体調の変化をじっくりと確認することも入浴介助の注意点です。
“無理なく、安全”な入浴介助を目指そう
入浴介助は、傷や内出血など利用者さんの身体の変化に気付きやすいタイミングです。入浴をサポートしながら「いつもと違うところはないか?」と目を配ることも意識しましょう。介護職員が入浴介助で心がけることは、“無理なく、安全に”。入浴介助の注意点をふまえたうえで、利用者さんご自身でできることはなるべく任せる、という点も大切です。