認知症の周辺症状と中核症状はどう違う?基本をおさらい
認知症には中核症状と周辺症状があります。中核症状についてご存知の方でも、周辺症状については原因や症状を把握している方は少ないかもしれません。本記事では認知症の概要を解説し、中核症状と周辺症状の特徴を整理。周辺症状がみられる方への接し方のポイントをご紹介していきます。「介護施設で認知症の方と接する機会がある」「周辺症状について詳しく知りたい」といった介護スタッフの方々に読んでいただきたい内容です。
認知症の基本をおさらい
日本では65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症ともいわれ、施設利用者さんのなかにも認知症の方は少なくないかもしれません。まずは認知症がどのような疾患かおさらいしていきましょう。
認知症とは
認知症は、脳の変性疾患や脳血管障害により認知機能が低下して、日常生活に不便や影響が出る状態のことをいいます。認知症の代表的な種類をみていきましょう。
<認知症の種類>
- アルツハイマー型認知症
- 脳血管性認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
認知症にはいくつか種類がありますが、一般的に多いのはアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症です。
アルツハイマー型認知症は、脳神経の変性で脳が萎縮していく過程で起こる認知症。脳血管性認知症は、脳梗塞・脳出血といった脳血管障害が原因で起こる認知症です。この2つが合併して起こるケースもあります。
レビー小体型認知症は手足が震えたり身体のこわばりがみられたりする認知症で、パーキンソン病の近縁疾患です。前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉が委縮することで起こります。
認知症には中核症状と周辺症状がある
認知症になると、さまざまな症状が出ます。記憶障害のほか、理解力や判断力の低下、徘徊などを思い浮かべる方もいるでしょう。こういった認知症の症状は、大きく2つ「中核症状」と「周辺症状」に分けられます。
中核症状は脳の神経細胞の障害によって起こる症状です。一方、周辺症状は中核症状に加えて環境、心理、身体、薬物の影響など複合的な要因が重なって起こります。
次の項からそれぞれを詳しくご紹介していきましょう。
認知症の中核症状とは
認知症の中核症状がどうして起こるのか、どのような状態がみられるのか整理していきます。
中核症状が起こる主な原因
認知症の中核症状は、脳の機能低下がダイレクトに影響して出る症状です。脳の細胞が死んでしまう、脳の働きが低下する、といった要因が挙げられます。
中核症状で起こること
中核症状の例を確認していきましょう。
<中核症状の例>
- 記憶障害
- 見当識障害
- 理解力や判断力の低下
- 言語障害
- 実行機能障害
記憶障害は、新しいことを覚えるのが難しくなり、聞いたことやしたことを忘れてしまうといった症状です。見当識障害では「いつ」「どこで」といった自分が置かれている状態の把握が難しくなります。
理解力や判断力の低下は、一度に複数のことを言われたり、いつもと違うことが起こったりすると対応できなくなることです。言語障害では、言葉を聞き取れても理解ができない、考えていることを分かりやすく相手に伝えられないといったことが起こります。
実行機能障害では物事を順序だてて考えて行動したり、効率良く動いたりすることが難しくなる症状です。
認知症の周辺症状とは
周辺症状は、BPSD(Behavior and Psychological Symptoms of Dementia)とも呼ばれます。認知症の中核症状に対して周辺症状がどのような原因で起こるのか、どのような状態がみられるのか、整理していきましょう。
周辺症状が起こる主な原因
周辺症状は前項で解説した中核症状にプラスして現れる症状ですが、すべての方に共通して起こる、というわけではありません。周辺症状は認知症の方の周辺環境が大きく影響し、症状にも個人差があります。
中核症状に加えて環境要因・身体的な要因・心理的な要因などが相互に作用しあって、結果として周辺症状が出るイメージです。
周辺症状で起こること
周辺症状では次のような例がみられます。
<周辺症状の例>
- 興奮
- 徘徊
- 妄想
- うつ状態
- 睡眠障害
周辺症状は「過活動状態の周辺症状」と「非活動状態の周辺症状」に分けることができ、前者では興奮、徘徊、妄想などが例です。後者ではうつ状態となることや、睡眠障害が現れるといった例が挙げられます。
これまでで触れているように、中核症状にさまざまな要因が加わって現れるのが周辺症状です。たとえば、中核症状で「約束を忘れてしまった」としましょう。これに対して自身が混乱した、相手に怒られた、といった要因で「うつ状態になる」「不安で眠れなくなる」などの状態がみられる場合、これが周辺症状です。
中核症状や周辺症状が出ている高齢者への対応のポイント
介護施設で認知症の症状がみられる高齢者の方々に接する際は、相手への気遣いが重要です。ご本人のペースを尊重して話をゆっくり聞く、明るくゆっくり分かりやすく話しかける、といったことをベースに、相手の尊厳を傷つけない接し方を心がけましょう。
認知症の進行自体をおさえることは困難ですが、周辺症状に関しては接し方の工夫次第で軽減することができます。ポイントは3つです。
<周辺症状がある方への接し方のポイント>
- ご本人の自尊心を傷つけない
- 原因に幅広く目配りする
- 周辺症状に関しては一時的であることを説明する
認知症の方への接し方のベースと共通しますが、まずはご本人の自尊心を傷つけない応対を心がけます。さらに、周辺症状はさまざまな要因が重なって起こるため、原因となり得る物事にアンテナを張っておくことも大切です。
周辺症状は一生続くものではありません。要因を取り除くことで軽減すること、一時的であることをご本人にお話しして、不安を除いてあげることも大切です。周辺症状がみられる施設利用者さんには、できるだけ笑顔で過ごしていただけるよう工夫していきましょう。
周辺症状は接し方次第で軽減できる
認知症には中核症状と周辺症状があり、周辺症状は中核症状にプラスしてさまざまな要因が重なって現れます。興奮、徘徊、うつ状態などがその例です。認知症の進行自体をおさえるのは簡単ではありませんが、周辺症状は介護スタッフの接し方ひとつで軽減のチャンスがあります。周辺症状の原因に目を配り、できるだけ施設利用者さんが楽しく、不安なく過ごせる環境を整えることがポイントでしょう。