介護清拭の手順とは?利用者さん別の注意点もチェック
入浴などができない利用者さんに対し、介護職が行う業務の1つが「介護清拭」です。介護清拭では、蒸しタオルなどを用いて、利用者さんの体を清潔にしていきます。血行を促し、筋肉や関節のこわばりを緩和する働きもあるため、健康をサポートする目的でも活用されている方法です。この記事では、介護清拭とは何か、またその流れや利用者さん別の注意点について解説していきます。
介護清拭とは?
介護清拭(かいごせいしき)とは、介護職が行う業務の1つで、利用者さんの体を蒸しタオルなどで拭いて清潔にしていくことを指します。主に入浴ができない利用者さんに対して行うことが多いでしょう。介護清拭の目的は、以下のとおりです。
- 体を清潔にする
- 細菌感染などを防ぐ
- 皮膚や爪の異常を早期に発見する
- 血行を促進する
- 拘縮(こうしゅく)や褥瘡(じょくそう)を防ぐ
拘縮は関節の動きが制限されるため動かしにくくなる状態、褥瘡は一般的に床ずれと呼ばれており、どちらも寝たきりの利用者さんなどに起こりやすい症状です。介護清拭を行うことで、こうした症状を緩和することにもつながるでしょう。
介護清拭の流れ
清拭の方法は、全身を拭く「全身清拭」と、体の一部を拭く「部分清拭」、足や手などの体の一部をお湯に入れる「部分浴」に分けられます。ここでは一例として、ベッド上で全身清拭する場合の流れについて見ていきましょう。
準備するもの
準備物は以下のとおりです。
1. 蒸しタオル:4~5枚(体用・顔用・陰部用)
2. 乾いたタオル:3~4枚(体用・顔用・陰部用)
3. バスタオルなど(利用者さんの保温用)
4. ボディーソープまたは石けん
5. 洗面器
6. 使い捨て手袋
7. ビニールシート
8. 着替え一式
※必要に応じて準備するもの
- 陰洗ボトル
- 保湿剤またはパウダー
蒸しタオルは、50~55℃程度のお湯または電子レンジで温め、ビニール袋に入れて保温しておきます。また、陰部洗浄時や感染症が疑われる場合には、使い捨て手袋の着用が必要なため、準備しておきましょう。
介護清拭を行う前に確認するポイント
介護清拭を行う前には、次のような利用者さんへの配慮や準備も必要です。
【利用者さんへの配慮】
- 清拭を行う了承を得ておく
- 体調が変化しやすい空腹・満腹時は避ける
- トイレは清拭前に済ませておく
- 利用者さんの体にバスタオルなどをかけて保温する
- 清拭を行う介護職の手も温めておく
【室内環境の準備】
- 部屋の温度は25℃くらいに保ち、すき間風に配慮する
- カーテンや扉は締めておく
介護清拭の手順
介護清拭の基本は、「上半身→下半身→陰部」の手順で行います。身体を拭く際には、末梢部分から心臓に向けて行いましょう。大まかな手順は以下のとおりです。
1. 顔
顔用のタオルを使い、目頭から目尻に向けてやさしく拭きます。次に、「額→頬→あご」の順に、S字を描くように拭きましょう。この際、小鼻や耳の後ろなども忘れずに拭いていきます。
2. 上肢
体用のタオルを使い「手首→腕のつけ根」の方向に拭き、指の間やひじの内側、わきの下などを念入りに拭きます。ひじは関節を支えながら拭きましょう。
3. 胸部・腹部
寒さを防ぐため、下半身をバスタオルなどで保温し、「首→胸」の順に拭きます。胸部は、鎖骨や胸骨、肋骨などの骨に沿って拭きましょう。腹部は「の」の字を描くように、時計回りに拭きます。
4. 下肢
上半身をバスタオルなどで保温。ひざを立てて「足首→足のつけ根」の方向に拭き、ひざの裏や足裏、足の指の間を丁寧に拭きましょう。
5. 背中
利用者さんに横向き(側臥位)で楽な姿勢をとっていただきます。「腰→肩」の方向に、円を描くように拭きましょう。
6. 臀部・陰部
陰部用のタオルを使い、臀部は「外側→内側」の方向で円を描くように拭きます。陰部はデリケートな部位のため、可能であれば利用者さんにはご自身で拭いていただくよう提案しましょう。
すべての清拭が完了したら、保湿剤やパウダーで肌を保護しておくことも大切です。
利用者さん別の注意点
介護清拭を行う際は、利用者さんに応じた次のような注意が必要です。
男性の利用者さんの場合
陰部や臀部などは、可能な限り利用者さんご自身で拭いていただきますが、介助する場合には「陰茎→陰のう→肛門」の手順で行います。この際、陰茎の包皮は伸ばして、シワの間に溜まった汚れも拭き取りましょう。
女性の利用者さんの場合
女性の利用者さんの場合は、胸部の清拭を行う際に、乳房の下側を入念に拭きます。また、陰部や臀部の介助に入る際は、恥骨から肛門までを一方向に拭くようにしましょう。この際、汚れが溜まりやすい大・小陰唇は丁寧に拭きます。汚れが多い場合は、石けんやボディーソープ、陰洗ボトルなどを用いて陰部洗浄を行いましょう。
皮膚が弱い・皮膚疾患がある利用者さんの場合
皮膚が弱いまたは皮膚疾患がある利用者さんは、タオルで強くこすらずにそっとあてる程度で清拭を行いましょう。また、乾いたタオルで水分を拭き取っておくと、水分蒸発によるエネルギー消耗が軽減できます。
拘縮やマヒがある利用者さんの場合
関節などに拘縮やマヒがみられる利用者さんは、無理にその部位を動かそうとすると脱臼や骨折につながるため、注意が必要です。動かす際には時間をかけて開くようにしましょう。
介護清拭の流れを知って仕事に活かそう!
介護清拭は、利用者さんの健康をサポートする業務の1つです。とはいえ、慣れないうちは難しいと感じる方も少なくありません。また、利用者さんに応じた注意点もあるため、流れを改めて確認しておくと安心でしょう。介護清拭のポイントへの理解を深めて、業務に活かしてみてはいかがでしょうか。