サルコペニアとフレイルの違いとは?原因と対策法について

サルコペニアとフレイルの違いをご存知ですか?どちらも高齢により身体の機能が低下する状態のことを指しますが、細かく見ていくと違いがあります。ただ、似ている言葉のため、違いについて答えられないという方もいるかもしれません。そこで今回は、サルコペニアとフレイルの基本概要を見直し、それぞれの違いについて見ていきましょう。サルコペニアとフレイルの原因や対策法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

サルコペニアとフレイルについて

まずは、サルコペニアとフレイルの基本概要、それぞれの違いと共通点について見ていきましょう。

サルコペニアの概要

サルコペニアとは、加齢によって筋肉量が減っていく現象のことです。老化現象のため、高齢になってから起きると考えている方もいるかもしれません。しかし実際には、20代半ばから30歳頃から進行が始まります。

症状が進むと、つまずきやすくなったり、立ち上がるときに手をついたりするようになるでしょう。一見すると注意不足によってつまずいたようにも見えるため、筋力低下が進んでいることに気づきにくいという面があります。そのまま放置すると、歩行困難になることもあるでしょう。

フレイルの概要

フレイルとは、加齢にともなって起こる筋力の低下や心身の活動の低下によって、健康障害を起こしやすい状態のことです。フレイルは、身体の虚弱・心と認知の虚弱・社会性の虚弱の3つの要素が影響するため、多面的にケアする必要があります。

フレイルの状態が悪化すると、要介護状態になることがあるため注意が必要です。ただし、フレイルのときに生活習慣などを見直すと、健康な状態に戻る可能性もあります。

サルコペニアとフレイルの違いと共通点

サルコペニアとフレイルの違いは、サルコペニアは筋力や身体機能の低下に着目するものの、フレイルはそれらに加えて認知機能や社会生活面などからも判断する点です。

共通点は、症状を放置すると悪化していくばかりで、歩行困難や要介護状態になる可能性が高まること。そして、これらを予防する方法が、運動と食事であることです。

サルコペニアの原因と診断基準

ここからは、サルコペニアとフレイルの原因や診断基準を紹介します。まずは、サルコペニアについてです。

原因

サルコペニアの主な原因は加齢ですが、具体的に以下のようなものが考えられます。

  • 神経系の問題
  • 運動量の減少
  • 栄養不足
  • ホルモン分泌の減少
  • 酸化ストレス
  • 慢性的な炎症

若い頃は、さほど運動しなくても筋肉量は落ちず、栄養バランスが少々悪くても身体に影響が出たりしないでしょう。しかし、高齢になると上記の原因によって普通に生活をしていても少しずつ筋肉量が減ったり、身体を思うように動かせなくなったりするのです。

診断基準

日本サルコペニア・フレイル学会では、2019年に発表されたサルコペニアの診断方法である「AWGS2019」に基づいたサルコペニア診断を推奨しています。筋肉の力・機能・量の3つの指標で判定し、筋肉の力は握力で判定します。

サルコペニアと判定するには、筋肉量が低下していることが必須条件です。そして、他の2つのうちいずれかが低下している場合に、サルコペニアと診断されます。また、3つすべて低下している場合には、重症サルコペニアと診断されます。

フレイルの原因と診断基準

次に、フレイルの原因と診断基準について見ていきましょう。

原因

フレイルを引き起こす原因には以下のものが考えられます。

  • 生活習慣病などの病気
  • 加齢
  • 喫煙
  • うつ病
  • 孤立

フレイルは、サルコペニアによって引き起こされることもあるため、フレイルとサルコペニアは密接に関係しているといえるでしょう。

診断基準

フレイルでは、以下の5項目のうち3つ以上当てはまるとフレイルだと診断されます。1つや2つに該当する場合は、フレイル前段階の状態です。

  • 体重減少:6ヵ月で2~3kg以上の減少
  • 筋力低下(握力):男性26kg以下、女性18kg以下
  • 疲労感:2週間以上、理由もなく疲れを感じる
  • 歩行速度:1m/秒より遅い
  • 身体活動:軽い運動や体操や、定期的な運動のいずれも、週に1回もしていない

高齢者が要介護状態になる原因の多くが、脳血管障害などの病気に加えて、フレイルだといわれています。フレイルによって要介護状態に陥るケースは、高齢者特有のものといえるでしょう。

サルコペニアやフレイルにならないために

最後に、サルコペニアやフレイルにならないための対策法について、見ていきましょう。

サルコペニア

サルコペニアに陥らないために注意したいことは、筋肉量の低下です。筋肉量の低下を防ぐには、適度な運動と栄養バランスが整った食事が必要になります。

ウォーキングや軽い筋トレなどがおすすめですが、椅子から立ったり座ったりするだけでも効果が期待できるでしょう。その他には、立った状態で「もも上げ」や「つま先立ち」をするのも有効です。バランスを崩しやすいため、壁や椅子につかまりながらすると良いでしょう。

フレイル

フレイルを予防するためには、栄養と運動、社会参加の3本柱で考える必要があります。栄養面では、栄養バランスの良い食事をよく噛んで食べることがポイントです。運動面では、軽い筋トレやウォーキングなどを行いましょう。

社会参加とは、仲の良い友人と会話や食事を楽しんで、前向きな気持ちになれるような取り組みをすることです。趣味に没頭するのも、地域のボランティア活動に参加するのも良いでしょう。

▼過去記事

まずはできることから始めよう

サルコペニアとフレイルの違いはありますが、予防面を考えると重なる部分が多いことがわかったはずです。利用者さんにこまめに話しかけたり、ちょっとしたすき間時間があれば軽い運動を一緒にしたりすると、楽しみながらサルコペニアやフレイルを予防できるでしょう。利用者さんの様子を見ながら、まずはできることから始めてみると良いかもしれません。

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