【高齢者の爪トラブル対策】介護職が知っておきたい正しい手入れ方法
高齢者の爪トラブルは、介護施設ではよくあること。加齢の影響で爪がもろくなるうえに、身体的問題や認知症などで手入れがつい疎かになるようです。ただ、利用者さんの爪の処置について「医療行為になりそうだから、医師に任せるべき?」と迷った介護職の方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、高齢者の爪トラブルと適切な対応についてまとめました。介護の現場で働く方はぜひ読んでみてください。
高齢者に爪トラブルが多い理由
高齢者の爪トラブルが増えるのは、身体的問題に起因することが多いようです。例えば加齢によって視力・握力の低下や足腰の痛みが出てくると、腰を屈めて足の爪先まで手を伸ばすという姿勢が難しくなります。
さらに、利用者さんの中には、感覚障害や血行不良などで長時間靴下を履いて過ごす方も少なくありません。そうなると、指先は常に湿度や温度が高い状態になりやすく、雑菌が繁殖しやすくなってしまうのです。
高齢者に多い爪トラブルと対応
高齢者に多い爪トラブルと、その治療法・予防法について紹介しましょう。
爪白癬
「爪白癬」とは白癬菌(はくせんきん)というカビによって引き起こされる爪の水虫です。水虫自体は身体中に発症する皮膚感染症ですが、他の部位と比べて爪白癬は季節性がなく、高齢になるにつれて罹患率が上がるという特徴があります。
爪白癬の主な症状は、以下の3つです。
- 爪が厚く切りにくくなる
- 爪がボロボロと崩れる
- 切った爪の内側が厚く白っぽくなっている
爪白癬であれば、抗生物質による治療が必要です。利用者さんに症状が見られたら、すぐに皮膚科の受診をすすめましょう。
爪白癬は以下の方法で予防できます。
- 爪先を清潔に保つ
- こまめに手入れする
- 保湿する
白癬菌はアルコールでは除菌できませんが、水洗いだけで簡単に洗い流せる菌です。寝たきりで足を洗うことが難しい方は、水で濡らした清潔なタオルで拭き取るだけで構いません。また、肌が乾燥した状態だと菌が入り込みやすくなるため、入浴やケアの後にはしっかりと保湿しましょう。
肥厚爪
肥厚爪とは、爪が厚くなり、もろくなった状態の爪のことです。悪化すると靴を履くときに痛みが出るだけでなく、爪の見た目を気にして消極的になってしまう方もいます。
初期の肥厚爪であれば爪切りやヤスリで整えることで改善が見込めますが、悪化すると自力では治せません。放置する前に、医師による治療を受けることが大切です。
予防法には、以下の3つがあります。
- 足に合った靴を履く
- こまめに手入れする
- 栄養バランスに気をつける
肥厚爪はきつい靴を履くことで爪に圧力が加わると発症しやすくなります。高齢になると靴まで意識が向かない方も多いため、介護スタッフや家族が気にかけるようにしましょう。
爪を清潔に保つことはもちろんのこと、栄養バランスに気をつけることも効果的な予防法です。爪の主成分であるたんぱく質を積極的に取り入れることで、肥厚爪を発症しにくくなると考えられます。
巻き爪
運動量が減少することで、高齢者は巻き爪を発症しやすくなるといわれています。また、爪白癬との合併も多いようです。
巻き爪を発症してしまったら放置せず、すぐに矯正治療をスタートさせましょう。治すためには、ワイヤーやテープを使って爪の形の矯正を行います。
巻き爪の予防法は、正しい方法でこまめに爪切りを行うこと。その際、爪の端は深く切らず、四角くカットすることがポイントです。爪の端は引っ掛かりを防ぐためにも、ヤスリで丸くしておきましょう。
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爪トラブルの放置によって起こること
高齢者の中には、爪トラブルを放置する方も多いです。適切なタイミングで処置が行われないと、悪化して痛みが出たり、転びやすくなったりすることも。最悪の場合、転倒して骨折するなど、他のトラブルのもとになってしまうこともあるのです。
また、爪の状態悪化には、たんぱく質不足や貧血が影響している可能性もあります。爪は利用者さんの健康状態を推し測る重要なバロメーター。爪に異変を感じた場合には、他にも気になる症状がないか確認しましょう。
高齢者の爪トラブル予防にはこまめなケアが大切!
高齢者の爪トラブルは、加齢の影響だけでなく、誤った手入れやケア不足が原因のことも多いもの。介護職としてできることは、爪の異変にすぐに気づき、適切な処置をしてあげること、そしてこまめな手入れを心がけてあげることです。爪トラブルを放置すると利用者さんの心身に深刻な影響を与えることもあるため、しっかりと正しい知識を身につけておきましょう。