摂食嚥下障害とは?原因と放置した場合のリスクについて
高齢になると筋力の低下によって、食べ物が食べづらく飲み込みづらくなりやすいです。また、病気が原因で同じような症状に悩まされる方も。こういった症状を摂食嚥下障害と呼んでいます。摂食嚥下障害を引き起こす原因はさまざまですが、症状を放置するとさらに違う問題を引き起こしてしまうのです。そこで今回は、摂食嚥下障害の原因について学び、放置することでどういったリスクが考えられるのか見ていきましょう。
摂食嚥下障害とは?
まず摂食嚥下障害とは、嚥下障害と呼ばれることもあります。食べることや飲み込むことに何らかの問題が起きている状態を指し、食事や水分を食べられない、飲み込めないという状態です。
どういった症状が出るのかは人それぞれで、うまく食べ物を噛めないという方や口からこぼれ出てしまう方、飲み込もうとするとむせてしまう方などがいます。
摂食嚥下障害の原因について
なぜ摂食嚥下障害は起きるのでしょうか?ここでは、摂食嚥下障害の原因について見ていきましょう。
脳血管疾患によるもの
摂食嚥下障害の原因は加齢だけでなく、病気が影響している場合があります。実際、摂食嚥下障害の原因の約4割が脳卒中と言われており、病気のなり始めの時期にある(急性期)方の約3割が誤嚥を起こしているという結果もあるのです。
また、病状が安定してきたとしても誤嚥に悩む方がいることがわかっているため、できるだけ摂食嚥下障害にならないことが大切だと言えるでしょう。
加齢による筋力の低下
年齢を重ねると、舌やのどの筋力が衰えたり、唾液の分泌量が低下したりします。また、嚥下反射機能が低下することもあり、摂食嚥下障害を引き起こしやすくなるのです。
さらに加齢や口腔内のトラブルで歯を欠損すると、咀嚼する機会が減り唾液の分泌量が減ります。その状況で食べ物を飲み込もうとすると、しっかり咀嚼されていないことで誤嚥やむせを起こす原因にもなるでしょう。
口内炎
先ほど口腔内のトラブルが原因になることがあると触れましたが、口内炎もその1つです。口の中に痛みや腫れが起きると、年齢に関係なく食べ物や飲み物を摂りづらくなります。
がん
がんが摂食嚥下障害に影響することも。例えば、舌がんや咽頭がんなどの口腔内のがんの場合、腫瘍の影響でうまく飲み込めないことがあります。また手術による影響もあるでしょう。
その他には、放射線治療や化学療法によって、摂食嚥下障害が起きることもわかっています。
摂食嚥下障害を放置するとどうなる?
では、摂食嚥下障害であることを知りながら、そのまま放置したらどうなるのでしょうか?
誤嚥性肺炎のリスク
もっとも考えられることは、誤嚥性肺炎です。食べ物や唾液に含まれる細菌が気管に入り込むことで起きる肺炎のこと。通常であれば、咳込むことで気管に入った食べ物や唾液は排出されます。
しかし、反射機能が衰えた高齢者の場合、うまく排出できないために肺炎になってしまうのです。また、起きているときだけではなく、反応が鈍くなる睡眠中に誤嚥してしまうケースもあります。
窒息のリスク
咀嚼が不十分だったり、うまく飲み込めなかったりすると、食べ物や飲み物が気道をふさぐことがあるのです。また、飲み込んだとしても喉頭蓋がしっかり下がっていない場合や誤って気道に入ってしまうと、誤嚥のリスクが高まります。
窒息の可能性がある場合は、肩甲骨の間を強めにたたくなどして解消しましょう。難しい場合や意識がない場合は、一刻を争うため、救急車を呼ぶ、医師に相談するなどしてください。
低栄養のリスク
摂食嚥下障害を引き起こすと、スムーズに食べられなくなるため、食べる量が減ったり食事の形が限定されたりします。そのため、低栄養になりやすいでしょう。
低栄養の状態が続くと、免疫力や体力が低下して病気になりやすくなります。また筋力の低下も懸念されるため、身体機能の衰えにもつながってしまうのです。
脱水のリスク
人間は、1日に約2リットルの水分を摂取する必要があると言われています。最低でも1日に1リットルは必要とされていますが、摂食嚥下障害の場合、食べづらい・飲み込みづらいということで、脱水になりやすいです。
脱水になると、肌が乾燥するだけでなく、唾液の分泌量が減り口内が乾燥。より食べ物や飲み物を摂りづらくなります。また乾燥によって口内環境が悪くなり、虫歯や歯周病を引き起こすこともあるでしょう。
日々のケアと変化への気づきが重要
摂食嚥下障害の原因はさまざまですが、加齢による筋力低下などの場合は、日々のケアで変わってきます。レクリエーションで口輪筋や舌筋などの筋力低下を予防する体操を取り入れたり、口腔ケアを呼び掛けたりしましょう。万一誤嚥の可能性がある場合は、すぐに対応しなければならないため、誤嚥のリスクが高い利用者さんが食事をする際は、特に注意して見ておく必要があります。