真空低温調理とは?新しい調理方法が介護施設で人気のワケ

「利用者さんに健康的で美味しい食事を提供したい」と考える介護施設の調理スタッフは多いでしょう。一方で、早朝の出勤や時間帯によって仕事量に差があるなど、働く上での負担は決して小さくないという声もあるようです。そこでこの記事では、近年介護業界でも注目される新しい調理法「真空低温調理」についてご紹介します。この調理法を導入すると働き方に変化が生まれた事例もありますので、気になる方はぜひご覧ください。

真空低温調理とは?

真空低温調理とは、下ごしらえ済みの食材と調味料を専用の袋に入れて真空密封し、60~90℃前後の低温で調理する方法です。加熱調理を終えたら90分以内に3℃以下に急速冷却または凍結することで、細菌の増殖を抑えて食中毒を防ぎます。冷却保存された料理は、電子レンジや湯せんなどで再加熱すればそのまま提供可能です。こうした特徴から、近年では介護施設や病院などでも導入され始めています。

真空低温調理のメリット

真空低温調理には、作業の効率化はもちろん、次のようなさまざまなメリットがあります。

素材や栄養素を活かした食事を提供できる

真空低温調理は、低温でじっくりと加熱するため素材本来の風味や旨味を活かしながら調理が行えます。また、熱の伝わり方が穏やかなため、ビタミンなど素材が持つ栄養素を破壊することが少ない調理法です。さらに、調味料の浸透率が高いため、調味料は少量で済みます。塩分や糖分も控えられるため、高血圧が心配な利用者さんの健康にも配慮した食事が提供できるでしょう。

食材ロスやコストが削減できる

保存性の高い真空低温調理は、計画的に生産できるため食材のロスを軽減することが可能です。また、調理方法をマニュアル化しやすいため、調理する方によって品質が変わる不安定さがほとんどありません。加えて、空き時間を有効に活用しながら調理作業を行うことで、人件費や光熱費などのコスト削減にもつながります。このように、介護施設での食材や調理作業のロスを軽減したいときにおすすめの調理法です。

二次汚染や酸化のリスクが軽減できる

美味しい食事を提供することはもちろん、介護施設では調理器具や調理者の手などから生じる二次汚染を防ぐことも大切です。真空低温調理であれば、加熱調理後に急速冷却・凍結させることで細菌の増殖を防げるため、二次汚染のリスクを軽減できます。また、届いた食材を一気に調理し真空包装して保存するため、食材自体が酸化するリスクを減らすことも可能です。このように、二次汚染や酸化のリスクが減らせるのも真空低温調理のメリットといえるでしょう。

後片付けも少なく作業効率が上がる

真空低温調理の食事を提供する際は、湯せんや電子レンジで再加熱すれば済むため、フライパンやまな板など調理器具の後片付けの手間を減らすことができます。また、空き時間に調理を終えられるため、調理スタッフの作業効率向上にもつながりやすいでしょう。

介護施設での真空低温調理導入事例

真空低温調理法を導入している介護施設は少しずつ増えており、よりよい変化が生まれているといいます。具体的な例は、以下のとおりです。

早朝の出勤がなくなった

朝食準備をするためには、朝5時前後に出勤する方も多いでしょう。しかし真空低温調理を導入した施設では、調理は2日前の日中に終わらせておき、当日は温めて仕上げるだけと効率化が図れたといいます。当日の調理にほとんど手間がかからないため、出勤時間を2時間半ほど遅らせることもでき、早朝出勤もなくなったそうです。

専用機の購入コストやデメリットを上回るメリットが得られている

真空低温調理を導入する際は、専用機の購入はもちろん、下ごしらえには一定の手間がいることや一律的な味になることを考慮しておく必要があります。しかし、真空低温調理を導入した介護施設では、その懸念点を勝るメリットを得られているようです。とくに、経験値に頼らずに合理的に調理スタッフを配置できることや、利用者さんが食べたい時間に食事を提供できることなどが挙げられています。

真空低温調理を活用して健康的な食事を効率よく提供しよう!

真空低温調理は、美味しく健康的な食事を提供できることはもちろん、働く方の作業効率も上げやすい調理法です。また、二次汚染や酸化のリスクも軽減できるため、安全面でも大きなメリットがあるでしょう。調理の作業効率を高めたい、利用者さんのニーズに柔軟に応えたいと考える介護施設はぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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