【認知症の徘徊対策・予防編】徘徊事故を防止するためにしておきたいこと5つ
セキュリティがしっかりしている施設だから、認知症の徘徊対策はバッチリ!と過信してはいませんか?認知症の方が行方不明になる事故は、どんなに予防策を講じても完全に防ぐことは難しいものです。そこで今回は、徘徊により行方不明になる事故を予防するポイントを解説しました。日常で取り組める予防法にも触れています。どんなことに注意して徘徊対策をすればいいのか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
行方不明を未然に防ぐ!認知症の徘徊事故対策ポイント5つ
行方不明は完全に防ぐことは難しいですが、発生すれば施設の監督責任が問われる事故のひとつです。したがって施設外に出てしまう徘徊は、できる限り対策し予防していく必要があります。では、認知症の徘徊対策のポイントをご紹介していきましょう。
施設のセキュリティを過信しない
エントランスのドアを閉める・認知症の利用者さんが外に出ようとするとセンサーが反応して音が鳴るなど、ハード面で徘徊対策をしている施設は多くあります。しかし、それでも行方不明事故は発生しているのが現状です。外には出られないはず…と、施設のセキュリティを過信するのはNG。施設内に姿がなければ、すぐに外を捜索する体制を取り、対応遅れにならないようにしましょう。
事務室から出入りする方が絶えず見えるよう工夫する
エントランスに設置されていることが多い事務室は、利用者さんの徘徊を防ぐ最後の砦といっても過言ではありません。事務室からは、玄関を出入りする方の顔や姿が必ず確認できるよう、工夫しましょう。
また、徘徊しそうな利用者さんをリストアップし、事務スタッフと共有しておくことも大切です。センサーだけに頼らず、エントランスのドアが開くと音が鳴るよう鈴をつけておく・利用者さんの興味を引くものをドア前に置いておくなど、簡単にできる対策も取り入れて、認知症の徘徊対策を行っていきましょう。
認知症の方の運動能力を侮らない
認知症の方は、疲れるという感覚が鈍くなるため、一般の高齢者よりも歩き続けてしまうといった特徴があります。「高齢だからこんなことはできないだろう」「それほど遠くまでは歩けないだろう」と侮ってはいけません。外へ出られる場所は玄関だけでなく、窓もあります。認知症の方が窓から施設を脱出した事例もあるため、簡単に開けられる窓には注意が必要です。
徘徊リスクが高い利用者さんは見守りを強化しておく
どんなに認知症の徘徊対策を練っても、完璧に防ぐことは不可能です。したがって、徘徊を未然に防ぐ対策だけでなく、不在に早く気づけるような体制づくりが重要になります。
とくに夜間はスタッフ数が減るため、見守りの目が減り、行方不明になるリスクが高まる傾向にあります。毎日、徘徊リスクが高い利用者さんをピックアップし、適宜巡回頻度を多くするなど、見守り強化を行いましょう。
また、短期的に入所している利用者さんは環境の変化から認知症症状が強まる可能性があります。一見穏やかそうな利用者さんも徘徊リスクが高いと判断し、準備しておくのがベターです。
早期発見するための対策を講じておく
認知症の徘徊対策は予防が大事ですが、発生後の対応も非常に重要です。できるだけ早く見つけることが利用者さんの安全につながります。
しかし、行方不明が発覚すると、どのような対応を取ればいいのか冷静な判断が難しくなることもあるでしょう。非効率な捜索をすれば、対応に遅れが生じる可能性も否めません。したがって、明確な初期対応のルールを作成しておきましょう。
ルール例
- 施設内を効率よく探せるよう、担当エリアを決めておく
- 施設内を10分、敷地内を10分など、捜索時間を決める
- 施設外へ出たと判明したら連絡する場所を、リストアップしておく など
介護職の経験年数に関係なく、だれでも同じ対応が可能な、分かりやすいルールづくりが大切です。
認知症の利用者さん一人での外出を防ぐポイント
認知症の利用者さんが施設外へ出てしまうのは、認知症症状が強く出ている可能性があります。外へ出たいという衝動を抑え、穏やかな生活を送れるよう工夫することも徘徊対策につながるので、ぜひ取り組んでいきましょう。
適度に運動を促す
夜の徘徊は、昼間に運動を取り入れることで改善する傾向があります。昼間に適度な運動をしてエネルギーを発散すれば、心地良い疲労感や充実感を得られ、外に出たいという衝動を抑えられることがあるようです。
また、徘徊時に遠くまで歩いてしまう原因には、活動する体力が余っているという側面も。昼間に運動すれば、適度に体力を消耗するので、徘徊対策に有効といえます。
さらに運動は、徘徊予防だけでなく、介護予防、施設周辺の道や交通ルールを忘れないためのトレーニングにも効果的です。機能面、認知面どちらにも働きかけができるので、体が動かせる認知症の方には、適度な運動を促していきましょう。
生活リズムを整える
朝は起きて、夜は寝るといった規則正しい生活リズムは、心身を健康に保つための重要なポイントです。生活リズムが乱れると、便秘になる・昼寝をしすぎて夜の眠りが浅くなる・眠れないといった事態になりかねません。便意を感じてトイレに行こうとした結果、場所が分からなくなりウロウロ…というように、徘徊へとつながってしまうのです。
不眠が続けばストレスがたまり、認知症を進行させる原因になる可能性があります。生活リズムを整えることは徘徊対策だけでなく、認知症の進行を抑える効果も期待できるので、生活リズムを意識してかかわりを持ちましょう。
趣味や仕事などを取り入れる
昼間に起きていても、何もやることがない、話し相手もいないという状況は、認知症の方を不安にさせてしまいます。「自分はここにいてはいけない」「ここはどこ?」と考え、落ち着く居場所ではなくなってしまうのです。
そんなときは、若いころにしていた仕事や趣味を活かして、利用者さんが集中できる作業に取り組んでもらいましょう。専業主婦だった利用者さんなら、調理や掃除の手伝いなどをお願いするのがおすすめ。夢中で手を動かす時間ができれば、充実感が生まれ、外に出たい欲求も治まるかもしれません。
認知症の徘徊は予防するところから始めていこう!
認知症の徘徊対策は、生活リズムを整える、適度な運動を促すなど、日常生活から取り組めることがたくさんあります。センサーの設置などハード面のほか、介護スタッフの目を使う、ドアに鈴をつけるなど、ちょっとした工夫でできる予防法も多いです。あらゆる視点から利用者さんの安全を守っていきましょう。