福祉用具専門相談員の資格とは?メリットや難易度について解説
車いす、歩行器などの「福祉用具」は、要介護者の方にとって生活をサポートしてくれる便利な道具です。介護の現場でも福祉用具を目にすることは多いでしょう。福祉用具をうまく活用するには、利用者さんに合わせたものを選ぶことが重要です。今回は、福祉用具に関するスペシャリストである、福祉用具専門相談員の資格について解説します。資格の詳細に加えて、取得した際のメリットや受験概要についても紹介するので、資格取得を検討している方は参考にしてください。
目次
【簡単に解説】福祉用具専門相談員とは?
福祉用具専門相談員とは、介護が必要な高齢者の方の生活環境や心身の状況を踏まえ、利用者さんに最適な福祉用具を選定する専門家のこと。担当ケアマネジャーなどと連携し、利用者さんが自立した生活を送れるよう、福祉用具を通してサポートすることがおもな仕事内容です。
福祉用具の貸与・販売を行う事業所には、専門的な知識を持つ福祉用具専門相談員を2名以上常勤で配置することが義務付けられています。そのため、有料老人ホームやデイサービスなど、福祉用具の貸与を行う事業所には必要不可欠な人材なのです。
福祉用具にはさまざまな種類があるため、利用者さんそれぞれに合った適切なものを選ぶ必要があります。福祉用具とは、厚生労働大臣が定めた要介護者の方が機能訓練や日常生活を快適に送るための用具のことです。
福祉用具には、車いす・特殊寝台・体位変換器・歩行器・歩行補助つえなどの貸与用具、腰掛便座・簡易浴槽などの販売用具が含まれます。これらの福祉用具は、居宅において自立した生活を営むための道具なので、介護保険給付の対象です。ただし、一部の貸与用品については要支援及び要介護1の方は原則、給付の対象外となります。
また、高齢者の自立を目的に、手すり取付や段差解消などの住宅改修を行った場合も、福祉用具とみなされるため介護保険給付の対象です。介護保険制度を利用して福祉用具を利用する際には、ケアマネジャーなどと相談の上、「福祉用具サービス計画書」の作成を行います。
福祉用具専門相談員は、国家資格ではありませんが、公的な資格です。都道府県の指定を受けた研修事業者による指定講習を受講、50時間のカリキュラムを修了し、講習の最後に筆記による修了評価を受けることで、資格取得となります。
介護現場で役立つ資格取得のメリット
これからさらに高齢化の加速が予想される現代において、福祉用具の需要は増えていくでしょう。福利用具を取り扱う事業所も増加し、さらにホームセンター・ドラッグストアといった介護とは異なる現場にも活躍の場は広がっています。福祉用具専門相談員として専門知識を有していれば、介護の現場での活躍はもちろん、幅広い現場で活躍できるはずです。
福祉用具専門相談員は、利用者さんから直接喜びの声を聞く機会が多い職種のひとつと言えます。福祉用具を使うことによって、人の助けを借りることなくスムーズに移動や食事ができるため、ご家族の介護負担軽減も可能です。介護を必要とする方の状態は、良くなることもあれば悪化することもあり、日々変化していきます。変化にいち早く気づき、適切な福祉用具の使用を提案できれば、利用者さんやご家族の負担を減らせるでしょう。そうしたサポートを通じて掛けられる声は、モチベーションアップにつながるはずです。
福祉用具専門相談員の仕事のひとつ、福祉サービス計画書の作成は、ケアマネジャーが作成するケアプランと密接に関わっています。福祉サービス計画書の作成を通してケアプランに関する知識を身に付けることも可能です。将来的にケアマネジャーを目指すなど、キャリアアップの第一歩にもおすすめの資格と言えるでしょう。
福祉用具専門相談員の受験資格や費用は?
福祉用具専門相談員は、受講資格に制限はなく、誰でも受講することが可能です。
福祉用具専門相談員の講習を修了していなくても、特定の国家資格保持者は、福祉用具に関する知識を保持しているとみなされ、福祉用具専門相談員の業務を行うことができます。上記の国家資格保持者とは、看護師・准看護師・保健師・作業療法士・理学療法士・介護福祉士・社会福祉士・義肢装具士のことです。
福祉用具専門相談員の指定講習は、都道府県で指定を受けた研修事業者が東京や大阪をはじめ全国各地で開催しています。通信教育大手のニチイでは、通学・受講期間:8日間・受講料:69,259円(税込)のコースを用意。通学が難しい場合には、講義・演習・修了評価まですべてオンラインで受講できる研修事業者もあるので、自分にあった学び方で取得を進めることが可能です。
福祉用具専門相談員の合格率や難易度は?
福祉用具専門相談員の資格の取り方は、受講したカリキュラムの最後に用意されている修了評価試験に合格すれば、資格取得です。試験は、それぞれの研修事業者が作成しており、合格率や難易度などは公表されていません。試験の内容は、知識や技術の習得がきちんとできているかを確認するためのものなので、これまで受講した内容をしっかり復習して試験に臨むことが大切です。
万が一修了試験に不合格した場合も、合格するまで何度も受験できるため、難易度はあまり高くないと言えるでしょう。受講期間が1週間程度の講座がほとんどなので、比較的取得しやすい資格と言えます。家事や仕事の合間などを活用して、無理なく学習できるでしょう。
資格取得後もスキルアップができる資格
福祉用具専門相談員という資格は、業務や研修などを通して、実践力を磨くことができるという特徴があります。しかし、業務スキルは向上するものの、知識面においては最新の知識との間にギャップが生じてしまう可能性も。
こういった現状を踏まえ、福祉用具専門相談員のスキルアップを図るため、更新研修を実施している事業所も多数あります。
介護業界では、法律や制度の改正・新しい仕組みの構築など、情報の更新がとても早いもの。一定期間ごとに更新研修をはさむことで、日々の経験を通して業務スキルが向上し熟練度が上がっているかのチェックとともに、最新情報を獲得することができます。
福祉用具専門相談員は福祉用具を扱う事業所では欠かせない資格
福祉用具専門相談員の資格は、福祉用具の貸与や販売を行う事業所では必要な存在です。福祉用具は、利用者さんの心身の状態を確認しながら選定する必要があるため、利用者さんやご家族とふれあう機会も多くなります。業務を通して大きなやりがいを感じることができる資格なので、介護業界にいる方はぜひ取得を目指してみてはいかがでしょうか。