終末期ケア専門士とは?資格取得のメリットや難易度を解説
終末期ケア専門士という資格をご存知ですか?2020年から取得できるようになった比較的新しい資格で、終末期ケアに関する知識を持っている方のことを指します。死は誰にでも訪れますが、どういった最期を迎えるかで利用者さんの心の安定度は違うでしょう。超高齢社会の日本にとって、終末期ケアは今後さらに注目が集まるはずです。そこで今回は、終末期ケア専門士の概要や資格取得のメリット、受験資格や難易度についても紹介します。
【簡単に解説】終末期ケア専門士とは?
終末期ケア専門士とは、終末期ケアについて学び、科学的根拠に基づいたケアを実践していく、終末期の臨床ケアのスペシャリストのことです。一般社団法人日本終末期ケア協会が「終末期ケア専門士」の資格を2019年に設立し、2020年より試験を開始しました。
終末期ケアでは、何が正解なのか答えを見つけることはとても難しいもの。科学的根拠に基づいた終末期ケアを学ぶことで、利用者さんに最適なケアを施すことができるでしょう。利用者さんや利用者さんのご家族の想いに寄り添い、終末期を迎えた利用者さんがどうしたら自分らしく生活できるのかなどを考えて支援を実施します。
そもそもどうして終末期ケアが注目されているのかというと、日本で急速に進む高齢化がその背景にあります。厚生労働省が発表した「令和2年度厚生労働白書」によると、1990年の高齢化率は12.1%でした。しかし2019年では28.4%に上昇しており、2040年では35.3%になると予想されています。
高齢者が増えればそれだけ亡くなる方も増える可能性があり、2019年には1日当たり約3,800人の死亡数が、2040年には1日当たり約4,600人になると予測されているのです。介護現場や医療現場にいる方にとっては、今後必然的に終末期ケアの課題に出くわすことが増えてくるでしょう。
こうした事態に備え、業種・地域・立場を越えて多職種連携が可能となるように、終末期ケア専門士資格と、そのプラットフォームとして日本終末期ケア協会が誕生しました。
介護スタッフが終末期ケア専門士を取得するメリット
次に、終末期ケア専門士の資格を介護スタッフが取得するメリットについて考えていきましょう。
終末期ケアの知識が得られる
終末期ケア専門士の受験のために使われる公式テキストより、どのようなことが学べるのか紹介します。内容は以下の通りです。
- 概論
- 終末期におけるチームケア
- 日常生活を支えるケア
- 身体症状とそのケア
- 意思決定支援
- 家族ケア
- スピリチュアルケア
- グリーフケア
- 看取り期ケア
- 終末期を取り巻く社会資源
- 疾患別終末期ケア
公式テキストでは、終末期ケアを円滑に行うためのチームづくり、利用者さんの日常生活を支えるケアの内容などが学べます。心理的なサポートの方法や家族ケアなどについても学習。社会保障や社会保険制度に関する知識も得られるため、終末期を迎える利用者さんや家族に対し、介護保険や医療保険についてのアドバイスも可能です。幅広い内容を学べるため、高齢者に限らず、終末期を迎える利用者さんのケアに役立つでしょう。
スキルアップにつながる
終末期ケア専門士では、科学的根拠に基づいた内容が学べます。疾患別のケアや身体症状別のケアなど、より実践的な内容を学べることも特徴です。資格取得によって終末期ケアのスペシャリストを目指すことは、自分のスキルアップにもつながり、仕事の幅も広がるでしょう。
多職種の方との交流ができる
一般社団法人日本終末期ケア協会では、さまざまなセミナーを開催しており、終末期ケア専門士の資格を持つ多職種の方が参加します。こうした場を活用して意見交換を行ったり、他の業界・職種の状況や話などを聞いたりすることも可能です。
他の現場の話を聞くことで、自分の職場にも活かせることを見つけられるかもしれません。資格を取得し、意見交換ができる場があれば、積極的に参加してみると良いでしょう。
終末期ケア専門士の受験資格は?
終末期ケア専門士は、誰でも受験できるわけではありません。医師や看護師といった国家資格を持っている方など、下記のいずれかの免許、および実務経験年数が必要です。
条件 | 実務経験2年以上 | 実務経験3年以上 |
---|---|---|
保有資格 | 医師 歯科医師 看護師 保健師 薬剤師 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 臨床工学技士 歯科衛生士 管理栄養士 介護支援専門員 社会福祉士 精神保健福祉士 臨床検査技師 公認心理師 救急救命士 放射線技師 介護福祉士(介護士と介護福祉士の実務経験が合算して3年以上あれば受験可) | 栄養士 准看護師 臨床心理士 音楽療法士 介護士 |
2022年2月時点の受験料は1万円、合格後の登録料は1万円、更新料は5,000円です。更新は3年ごとに行います。
一般社団法人日本終末期ケア協会では、終末期ケア専門士以外にも、「終末期ケア上級専門士」や「JTCAアドバンスインストラクター」の資格を設立。終末期ケア専門士に合格した方が1年後に終末期ケア上級専門士を受験でき、その1年後にJTCAアドバンスインストラクターを受験できるというステップアップ方式を取り入れています。
終末期ケア上級専門士は、終末期ケアの知識はもちろんのこと、チームマネジメントができる人材を育成するための資格でもあります。JTCAアドバンスインストラクターは、終末期ケアを広く社会に伝える役割を持った方を育てる資格です。JTCAアドバンスインストラクターを取得すれば、病院や地域コミュニティなどで終末期ケアの勉強会や研修などを行えるようになります。
このように、日本終末期ケア協会では、「支える人」・「育む人」・「伝える人」を育成する取り組みを行っています。
資格合格率や難易度は?
終末期ケア専門士の試験は、1年に1回受験可能です。全国260ヶ所のテストセンターにて、パソコン受験を行います。
2020年の第1回目は、受験者数2,310人のうち合格者は1,516人で、合格率は65.6%でした。2021年は、受験者数3,775人・合格者2,623人で、合格率は69.5%。受験者の7割弱が合格している試験のため、比較的合格を狙いやすいと言えるでしょう。勉強時間を確保し、しっかり公式テキストを使って内容を理解し受験しましょう。
終末期ケア専門士は利用者さんに寄り添うための資格
終末期ケア専門士はまだ新しい資格のため、認知度は低いかもしれません。しかし1年で1,400人以上の受験者が増えている点を考えると、今後さらに注目が集まり、受験者が増加する可能性があります。
興味のある方は、終末期ケア専門士の資格を取得してみると良いでしょう。自分のスキルアップだけではなく、利用者さんやそのご家族に寄り添ったサポートができるようになるはずです。