精神保健福祉士国家試験とは?資格取得のメリットや合格率を知ろう
2017年の厚生労働省の調べでは、心の病気を抱えている方は日本国内で約420万人いるということがわかっています。これは国民の30人に1人の割合で、生涯を通じて考えると5人に1人が心の病気にかかるとも言われているようです。大人だけの問題ではなく、子供でも心の病気を抱える可能性があります。こうした現状を鑑みて設立された資格が精神保健福祉士です。今回は、精神保健福祉士国家試験の概要や取得のメリット、合格率などを詳しく紹介します。
目次
【簡単に解説】精神保健福祉士とは?
精神保健福祉士とは、1997年の精神保健福祉法成立に伴い新設された資格です。精神障害者の社会復帰支援を行う人材と人材の資質確保のために作られました。
精神保健福祉士は精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)と呼ばれることもあります。主な仕事内容は以下の通りです。
- 精神障害者の社会復帰に関する相談に応じる
- 社会復帰のために助言や指導を行う
- 日常生活に適応するために必要な訓練やその他の援助を行う
精神保健福祉士の最大の目的は、これらの業務を行い、精神障害者の社会復帰を促進することです。精神保健福祉士は国家資格のため、国家試験に合格し、公益財団法人社会福祉振興・試験センターに登録しなければ名乗ることができません。
精神保健福祉士の国家試験に合格し資格を持っていなくても、実際の現場で精神障害者への相談支援を行うことは可能です。しかし、精神障害者を支援する職場では、知識や技術が国家試験によって保証されている精神保健福祉士の資格保有者を募集することのほうが多いのが現状。資格があるほうが職場の選択肢が広がり、優遇される可能性もあるでしょう。
介護現場で役立つ精神保健福祉士の資格取得メリット
精神保健福祉士は、介護現場でも役立つ資格です。ここでは、精神保健福祉士資格取得のメリットについて見ていきましょう。
専門性の高い知識を得られる
精神保健福祉士国家試験では、精神保健福祉に関わる専門性の高い知識が問われます。試験科目も多岐に渡り、17分野の内容を理解しておく必要があります。以下が試験科目です。
- 精神疾患とその治療
- 精神保健の課題と支援
- 精神保健福祉相談援助の基盤
- 精神保健福祉の理論と相談援助の展開
- 精神保健福祉に関する制度とサービス
- 精神障害者の生活支援システム
- 人体の構造と機能及び疾病
- 心理学理論と心理的支援
- 社会理論と社会システム
- 現代社会と福祉
- 地域福祉の理論と方法
- 福祉行財政と福祉計画
- 社会保障
- 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
- 低所得者に対する支援と生活保護制度
- 保健医療サービス
- 権利擁護と成年後見制度
精神疾患やその治療方法を学ぶのはもちろんのこと、心理的支援や自立支援、各種社会保険制度、成年後見制度などについて学べるため、介護現場でも役立つでしょう。
就職先の幅が広がる
厚生労働省が2020年に公表した「精神保健福祉士資格取得後の継続教育や人材育成の在り方について(概要)」によると、精神保健福祉士の配置状況は、主に医療現場や福祉現場、保健所や市町村などの保健関連の現場となっています。
具体例を出すと、精神科病院や一般診療所の医療機関、療養介護事業や自立訓練事業などの福祉施設、精神保健福祉センターなどさまざまです。精神保健福祉士資格を取得することで、就職先の幅が広がるというメリットもあるでしょう。
報酬面のメリットもある
厚生労働省の「令和2年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査(臨時調査)結果の概要」によると、福祉や介護職員の平均給与額は以下の通りでした(2020年2月の統計データ)。
- 介護福祉士:33万8,750円(平均勤続年数8.9年)
- 社会福祉士:35万5,200円(平均勤続年数8.0年)
- 精神保健福祉士:33万8,740円(平均勤続年数7.0年)
- 保有資格なし:29万5,620円(平均勤続年数6.9年)
勤務する施設によって給与体系は異なりますが、保有資格がない方よりも報酬が高くなる傾向にあります。利用者さんへのサービス向上のためはもちろん、自身のスキルアップや報酬アップのために資格を取得するも良いでしょう。
精神保健福祉士国家試験の受験資格は?
精神保健福祉士国家試験は、保健福祉系大学(4年制)において指定科目を卒業までに履修していれば、すぐに精神保健福祉士国家試験の受験が可能です。福祉系大学や保健福祉系短大などは、指定科目の履修し卒業する他に、実務経験を1~2年積む必要があります。
保健福祉系大学ではない一般大学や短大の卒業生、社会福祉士登録者も受験は可能ですが、精神保健福祉士国家試験を受験する前に実務経験を積まなければなりません。いろいろなルートがあるため、自分に受験資格があるのか知りたい方は、公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページを確認してください。
http://www.sssc.or.jp/seishin/shikaku/route.html
精神保健福祉士国家試験の合格率や難易度は?
最後に、精神保健福祉士国家試験の合格基準や合格率、難易度について見ていきましょう。まず、精神保健福祉士国家試験の合格基準は以下の通りです。
- 合格点の基準は、問題総得点の60%程度として問題の難易度で補正した点数以上の者
- 点数要件を満たし試験科目16科目群の各科目群すべてに得点があった者
(ただし、精神保健福祉士法施行規則第6条の規定による試験科目の一部免除を受けた受験者は5科目群)
試験は筆記で行い、出題形式は五肢択一を基本とした多肢選択形式です。出題数は163問、総試験時間数は275分となっています。
これまでの精神保健福祉士国家試験合格率は、以下の通りです。
第19回 | 第20回 | 第21回 | 第22回 | 第23回 | |
---|---|---|---|---|---|
合格率 | 62.0% | 62.9% | 62.7% | 62.1% | 64.2% |
60%以上の方が合格している試験のため、比較的難易度は高くないと思われます。しかし、国家試験のため、専門的な内容を問われることも。手を抜かずしっかり試験対策をする必要があるでしょう。
精神保健福祉士国家試験は、毎年1回2月ごろに試験を行います。2024年の試験は終了しているため、興味のある方は2025年の2月に向けて勉強を始めると良いでしょう。受験申込は例年、試験日前年の9月上旬から10月上旬となっています。
精神保健福祉士国家試験に合格して仕事に活かそう
精神保健福祉士は今後さらに注目される資格と言っても過言ではないでしょう。さまざまな職場で必要とされているため、精神ケアのスペシャリストとして、精神保健福祉士の知識を活かしてみませんか?興味のある方は、過去問をチェックしたり国家試験の受験資格を確認したりして、受験までにどういった過程が必要なのかを確認してみると良いでしょう。