行動援護従業者養成研修とは?受講資格やメリットについて知ろう
1人での外出が難しい、知的障害や精神障害をもつ方をサポートするのが、行動援護従業者です。行動援護従業者養成研修を修了し、一定期間の実務経験があると、行動援護従業者として認められます。知的障害や精神障害への深い理解と細やかな配慮を要する仕事のため、2021年4月からは、行動援護従業者養成研修の受講が必須となりました。この記事では、行動援護従業者養成研修についてくわしく紹介していきます。
目次
【簡単に解説】行動援護従業者養成研修とは?
行動援護従業者養成研修とは、1人での行動が難しい知的障害者や精神障害者の方を、適切にサポートする知識と技術を身に付ける研修です。主に対象の方が外出するときにサポートできるスキルを身に付けていきます。研修の運営方法は各自治体に委ねられており、自治体が指定するスクールなどが開催していることが多いようです。
内閣府の「令和3年版 障害者白書」によると、日本国内では身体障害をもつ方が436万人、知的障害をもつ方は109万4000人。精神障害をもつ方は419万3000人います。実際に知的障害や精神障害をもつ方のサポートをする際には、十分な知識と細やかな配慮が欠かせません。そのため、介護・福祉の現場では、行動援護従業者の増加を望む声が大きくなっています。
行動援護従業者養成研修を受講すると対処できる行動とは?
行動援護従業者養成研修を受講すると、知的障害や精神障害によって引き起こされる問題行動などに、適切に対処できるようになります。具体的な内容を、以下で確認していきましょう。
- 何が起こるか分からない初めての場所に対する不安や、不安による不適切な行動の予防。あらかじめ目的地や道順などを、言葉以外のコミュニケーションもとりながら理解を促す。
- 問題行動の引き金になりやすい刺激が、本人の視界に入らないよう防ぐ。また、問題行動が起こるタイミングを熟知し、予防できる。
- 問題行動が起きたときに、本人や周囲の安全を確保しながら、適切に対処でき
- 車道への飛び出しなど、危険が認識できないために起こる行動や自傷行為にも適切に対処できる。
- 本人の思い込みや意志、強いこだわりによって引き起こされる極端な行動に対処できる。
- 便意を自身で認識できない場合の介助や後始末などの対応。
- 外出前後の着替えや、外出先での食事介助。
強度行動障害支援者養成講座(研修)との違い
行動援護従業者養成研修に似ているものに、「強度行動障害支援者養成講座(研修)」があります。この研修は、自分を傷つけるだけでなく他者にも危険を及ぼす行動が見られる方や、日常生活を送る中で著しい不適応行動が見られる方をサポートする知識と技術を取得する研修です。主に、介護・福祉施設で働く方を対象としています。一方、行動援護従業者養成研修は、訪問介護やデイサービスなどの居宅系サービスで働く方が対象です。自治体によっても異なりますが、東京都では行動援護従業者養成研修を修了した場合、強度行動障害支援者講座(研修)を受講する必要はありません。
行動援護従業者養成研修を受講するメリット
ここからは、行動援護従業者養成研修を受講するメリットについて見ていきましょう。
加算対象のため就職に有利
行動援護従業者養成研修では、対象となる加算がいくつかあります。具体的な項目には「特定事業所加算」や「行動障害支援指導連携加算」、「喀痰(かくたん)吸引等支援体制加算」などです。また、放課後等デイサービスで働く場合は「児童指導員等加配加算」の対象となります。そのため、行動援護従業者養成研修を修了した方は、履歴書に記載しておくと就職の際に有利になる可能性が高いでしょう。
行動援護を行うさまざまな施設で働ける
行動援護従業者養成研修の修了者が、資格を活かしながら働ける場所は以下のとおりです。
- 訪問介護事業所
- 相談支援事業所
- 移動支援事業所
- 障害者グループホーム
- 障害者支援事業所
- 児童発達支援事業所
- 放課後等デイサービス
など
このように、幅広い介護・福祉施設で働くことができるでしょう。
行動援護従業者養成研修の受講資格や概要は?
行動援護従業者養成研修の受講資格に制限はありません。介護・福祉の実務経験がない未経験の方でも受けられます。ここからは、行動援護従業者養成研修の概要について見ていきましょう。
自治体や自治体指定のスクールで受講!要件は都道府県で異なる
行動援護従業者養成研修の運営方法は、各自治体に任せられています。そのためまずは、各自治体の公式ホームページなどから行動援護従業者養成研修の詳細を確認しましょう。東京都や大阪府など研修の開催地や、どのスクールで受けるかによっても費用や期間、受講方法などが異なります。運営企業によっては、行動援護従業者養成研修の資料を無料送付してくれるところもあるため、活用して違いを比較するとよいでしょう。
2021年4月から資格要件が変更!行動援護従業者養成研修が必須に
経過措置がとられていた2021年3月31日までは、行動援護従業者養成研修を修了していない方でも行動援護従業者として働くことができました。一定の実務経験があれば、対象の方のサポートが認められていたのです。しかし、2021年4月より資格要件が変わり、行動援護従業者として働く場合は同研修の受講が必須になっています。2021年4月以前の資格要件と混同しないよう注意しましょう。
行動援護従業者養成研修の難易度は?
行動援護従業者養成研修は、講義と演習を組み合わせて、3日前後かけて行われることがほとんどです。研修期間や内容は自治体や運営会社ごとに多少の違いはありますが、研修に参加すれば修了者として認定されます。そのため、修了資格を得ることは、あまり難しくないでしょう。
ただし、行動援護従業者として認められるためには、実務経験も問われます。従業者(ヘルパー)資格では、知的障害者または精神障害者の直接的なサポート業務に1年(従事経験180日)以上。サービス提供責任者資格では、直接的なサポート業務に3年(従事経験540日)以上携わる必要があります。
研修自体は未経験の方でも受講できますが、行動援護従業者になるためには実務経験も必要なことを覚えておきましょう。
行動援護従業者養成研修は知的障害・精神障害をもつ方のサポートに欠かせない!
知的障害や精神障害をもつ方の外出をサポートする、行動援護従業者。2021年4月から資格要件が変わり、実務経験だけでなく行動援護従業者養成研修の修了が必須になりました。ただし研修は、介護・福祉業界での実務経験のない方でも受講できます。行動援護従業者を目指す方は、必ず研修に参加しましょう。