高齢者の低血圧はなぜ起こる?原因や予防法を知っておこう
血圧の数値が正常値よりも低いことを、低血圧と言います。低血圧になると、立ちくらみやめまいが起こり、ひどい場合には失神してしまう方も少なくありません。高齢者の3人に1人は一過性の低血圧の症状をもつと言われており、立ち上がる際や食事後はとくに注意が必要です。この記事では、高齢者の低血圧がなぜ起こるのかを、予防方法や対応策と合わせて紹介していきます。
【簡単に解説】低血圧とは?
低血圧とは、正常の数値よりも低い血圧のことです。体内を流れる血液が「血管の壁を押し広げる力」を血圧と呼びますが、この力が強いと高血圧に、弱いと低血圧になります。低血圧は立ちくらみやめまいなどの症状を引き起こすほか、頭痛や動悸、胸痛などを順に発生させることも。
高血圧のように明確な数値が示されていないため、どの数値から低血圧と捉えるかは医師によっても異なると言います。厚生労働省のe-ヘルスネットによると、血圧の正常な基準値は以下のとおりです。
<血圧の正常な基準値>
- 病院で測定する血圧の場合/ 120mmHg~80mmHg
- 自宅で測定する血圧の場合/ 115mmHg~75mmHg
高齢者の低血圧に注意が必要な理由
高齢者の3人に1人は、一過性の低血圧の症状をもっていると言われています。とくに立ち上がったときや食事の後に、低血圧の症状が現れることが多いでしょう。高齢者の場合、立ちくらみやめまいが原因で転倒や事故が発生し、寝たきりになる危険性もあります。また、動脈硬化や自律神経調節障害などの病気に関係している可能性もあるため、注意する必要があるでしょう。
高齢者の低血圧にはどんな原因がある?
ここからは、高齢者にも見られる低血圧の原因について見ていきましょう。
起立性低血圧
起立性低血圧とは、急に立ち上がったり体を動かしたりしたときに、急激に血圧が下がる状態のことです。主に、立ちくらみやめまいなどの症状を引き起こします。原因は、下半身にたまった血液が、心臓に戻りにくくなること。脳への血液循環が減ってしまうことで、めまいや吐き気が引き起こされます。入浴時の温度変化によっても発生することがある低血圧です。なお、日常生活では血圧に問題がない方や、高血圧の方でも起こる可能性があります。
食後低血圧
食後低血圧とは、食事を終えた後に急激に血圧が下がる状態のことです。だるさや胃もたれ、吐き気などの症状が起こります。ひどい場合は、立ちくらみから失神してしまう方もいるため注意が必要です。食後低血圧の原因は、消化のために胃や腸に集まった血液が、脳や心臓へと戻りにくくなること。高齢者の3人に1人に見られる低血圧で、とくに誤嚥を防ぐため、寝たきりの方の体を起こして食事をする際に起こりやすくなります。
薬や病気による低血圧
薬や病気が原因となって発生する低血圧もあります。とくに、原因疾患としてよく見られるのが、糖尿病です。そのほか、内分泌疾患や心筋症などの疾患によって、低血圧が引き起こされている方もいます。低血圧の症状が見られる方の中には、降圧剤やパーキンソン病治療剤などが原因となっている場合も。ただし、低血圧の症状が薬によって引き起こされた場合でも、服薬の有無は必ずかかりつけの医師に相談することが大切です。
本態性低血圧
本態性低血圧とは、体質が原因で起こる低血圧のことです。特別な原因がないにもかかわらず、慢性的に血圧が低い状態のことを指します。この場合は、本人を悩ませる症状が出ないこともあるため、一概に治すべき病気とは言えません。ただし、何かしら症状が現れた場合には、必ずかかりつけの医師に相談しましょう。
介護施設で高齢者の低血圧を予防する方法とは?
ここからは、介護施設で実践したい高齢者の低血圧予防方法について見ていきましょう。
食べ物や食べ方を工夫する
高齢者の低血圧は、食後に起こりやすくなります。そのため、まずは食べ物や食べ方を工夫するよう提案してみましょう。例えば、水分を多くとりながら食事をすることも予防法の1つです。高血圧の症状がなければ、適度に塩分を摂取すると低血圧を予防できます。食べ過ぎに注意し、1回の食事量を減らして回数を増やしたり、大量の飲酒や早食いを控えたりすることも大切です。
食後はゆっくり過ごす
食後の低血圧は、胃や腸に血液が集中することで起こります。そのため、食後1時間ほどはゆっくりとした時間を過ごすことが大切です。カフェインの入ったコーヒーやお茶を飲むことも、低血圧の予防につながります。食後に眠くなりやすい利用者さんは、そのままウトウトして眠ってしまっても問題がない環境を整えてあげるとよいでしょう。
立ち上がり方に注意!環境も整える
低血圧の症状が見られる利用者さんには、ゆっくりと立ち上がるよう提案することも大切です。急いで立ち上がると血液が急激に下に流れやすく、立ちくらみやめまいの原因となります。転倒や事故にもつながるため、ゆっくりと立ち上がる習慣を身に付けてもらいましょう。また、暑い場所や長時間立つことも低血圧の原因になります。こうした環境を作らないことも予防につながるでしょう。
高齢者の低血圧が起こったときはどう対応する?
高齢者に次のような症状が突然現れたときには、起立性低血圧の可能性があるため注意しましょう。
- 頭痛
- 目の前が白くなる
- 物が二重に見える
- 視野が狭くなる
- 手足や全身がしびれる
ひどい症状の場合は、意識を失って倒れることもあります。これらの症状が見られる場合には、応急処置としてあお向けに寝かせ、ふくらはぎの下に毛布などを入れて15~30センチメートルほど足を高く上げましょう。この状態で、できるだけ早く医師の判断を仰ぐことが大切です。
また、食後低血圧では、めまいやふらつき、気が遠くなるなどの症状が現れます。このような症状がよく現れる利用者さんは、食前食後の血圧を測定すると原因が分かるでしょう。繰り返し低血圧の症状が見られる場合には、早めに医師に相談して適切な判断を仰ぐことが大切です。
高齢者の低血圧は食事や生活習慣で予防を!
高齢者は一過性の低血圧の症状をもつ方が多く、とくに急に立ち上がったタイミングや食後に低血圧の症状が現れやすいでしょう。低血圧の症状を引き起こさないためには、食べ過ぎを控えて食後にゆっくり過ごすことや、急に立ち上がらないことも大切です。食事や生活習慣を見直し、症状が見られた場合にはできるだけ早く医師に相談しましょう。