看護師資格は働きながら取得可能?取得方法や試験について解説

安定した収入が得られることやクリニックや病院、介護施設や保育園などさまざまな場所で勤務しやすいことから、介護業界で働きながら看護師の資格取得を目指す方も増えているようです。看護師として働くためには、法律で定められた教育を受け、国家資格に合格する必要がありますが、社会人や働きながら看護師資格を取得することはできるのでしょうか。ここでは働きながら看護師資格を取得する方法や、試験内容、看護学校の学費について解説します。

看護師とは?仕事内容について

看護師の仕事内容は、医療分野や施設の種類によって異なります。ここでは主な業務内容や施設ごとで異なる看護師業務の特徴について見ていきましょう。

主な仕事内容

看護師は医師のサポートや患者さんの看護を行うことが主な仕事です。医師のサポート業務では、血圧や体温、脈拍の測定、点滴や採血などを行い、患者さんの看護業務では、食事や排せつ、入浴などの介助業務や、自力で体を動かすことが難しい患者さんの体位変換などを行います。そのほか、手術の補助や夜勤巡回、患者さんの状態を共有し話し合うカンファレンスなども看護師の仕事です。

施設で異なる仕事内容の特徴

看護師が働く現場は、病院やクリニックなどの医療機関だけではありません。ここでは看護師が活躍する施設の一例と、施設で異なる仕事内容について見ていきましょう。

施設名仕事内容の特徴
病院医師のサポートのほか入院患者さんの生活補助など。病棟勤務の場合は夜勤の場合もある。
クリニック医師のサポートに加え、薬品や備品の発注、心電図などの医療機器操作を行う場合もある。
特別養護老人ホーム施設内の介護職員と連携し、入所者さんの服薬管理や定期健診の手配、介助業務なども行う。
訪問看護ステーション利用者さんの自宅などを訪問し、健康状態のチェックや訪問先の療養環境の設備などを行う。
幼稚園・保育園園内の衛生管理、保健指導、園児や職員の健診補助などを行う。
美容クリニック脱毛機器や美容機器の操作、整形手術の補助などを行う。

結婚や出産などライフスタイルの変化によって、夜勤のないクリニックに転職したり、パートに切り替えたりなど、看護師は、働く場所や働き方を見直せる職種でもあります。働ける幅が広がることで、スキルアップも目指せるでしょう。

働きながら看護師資格の取得は可能?

看護師資格を取得するには、4年制の大学や3年制の短期大学、3年制の看護養成所を卒業し、国家資格に合格する必要があります。年齢は関係ないため、社会人からでも目指すことも可能ですが、全日制で朝から夕方まで授業がある学校が多いようです。しかし、以下のような環境や条件が整えば働きながら資格取得を目指すことができます。

介護の仕事なら取得可能な場合も

日中勤務している場合は仕事を辞めて進学する必要があります。しかし、介護の仕事をしている場合は、職場の理解が必要ではあるものの、夜勤を続けながら看護師資格の取得を目指す方もいるようです。

准看護師は働きながら看護師資格を取得できる

准看護師免許を取得し、准看護師として働いている場合は、働きながら進学することができます。准看護師から看護師資格を取得する方法は以下の2つです。

定時制の看護学校に通学する

1つめの方法は、定時制の看護学校に進学し、看護師資格を取得する方法です。准看護師として働きながら3年間通う必要がありますが、職場の理解や協力が得られるのであれば、仕事を続けながら勉強することができます。

通信制の養成所で学ぶ

准看護師としての実務経験が7年あれば通信制の養成所で2年間勉強することで、看護師資格を取得することが可能です。2年間で65単位履修する必要があり、全単位を看護学校で履修することができる学校と、決められた単位数を放送大学で履修する学校があります。好きな時間を使って学習できるため、通信制の学習は生活スタイルを変えたくない主婦などの方にもおすすめの方法と言えるでしょう。ただし、自分で勉強時間を確保する必要があるため根気が必要です。

共通基礎課程制度の導入も検討中

「平成30年度全国厚生労働関係部局長会議資料」によると、厚生労働省は共通基礎課程制度の導入を検討しています。共通基礎課程とは資格取得の難易度が高いとされている医療福祉系の資格取得における教育内容を共通化し受講を免除するといった新しい資格取得制度のこと。対象となる見込み資格は、看護師や介護福祉士、診療放射線技師や作業療法士、保育士など17の職種です。共通基礎課程制度の導入が進めば、介護福祉士から看護師へのステップアップが現在よりも容易になりそうですね。

看護師学校の学費はいくらかかる?サポート制度も活用しよう

社会人から看護師資格の取得を目指す場合、仕事を辞めて進学する必要があるのですが、金銭面で不安な方も多いでしょう。看護師学校に進学する際にかかる費用はどのくらいなのでしょうか。

看護師学校の学費

4年制の看護学校や3年制の短大、専門学校など進学する学校によって費用は異なります。4年制の大学の場合は、私立の場合で年間180万円ほど、国立であれば年間で56万円ほど必要なようです。短大の場合は、4年制の私立大学と比べると費用を抑えることができますが、平均で年間112万円ほど必要になります。

専門学校は、公立であれば、年間10万円代というところもありますが、全体で平均すると年間で65万円ほど必要です。

准看護師から看護師資格の取得を目指すには、卒業までに規定の65単位を取得しなければなりません。通信制で2年間学ぶ場合は、2年間100万~200万円ほどの費用がかかります。

学費サポート制度

看護師資格取得のためには高額な費用が必要です。しかし、まとまったお金を用意するのはなかなか困難という方も多いでしょう。そんな方が利用できるのが学費サポート制度です。日本学生支援機構から貸与される奨学金や、自治体から貸与される看護師等修学資金、病院から貸与される病院奨学金があります。都道府県や病院から貸与される奨学金は条件次第で返済金額が減額されることや免除になることがあるため、奨学金を検討する場合は事前に確認しておくとよいでしょう。また、厚生労働省からは社会人を対象にした「教育訓練給付金制度」も用意しています。45歳未満であることや離職後1年以内に受講開始することなどの条件がありますが、条件を満たせば、学費の50%(年間上限40万円)の給付を受けることが可能です。

看護師国家試験の合格率や難易度について解説

看護師資格を取得するためには、看護師学校を卒業することと国家試験の合格が必要です。ここでは、看護師国家資格の合格率や難易度について見ていきましょう。

看護師国家資格の合格率

2012年から2020年までの10年分の合格率は以下の通りです。

受験者数(人)合格者数(人)合格率(%)
201253,70248,40090.1
201356,53050,22488.8
201458,89152,90089.8
201560,94754,87190.0
201662,15455,58589.4
201762,53455,36788.5
201864,48858,68291.0
201963,60356,76789.3
202065,56858,51389.2
202166,12459,76990.4

参考:【資料2】保健師助産師看護師国家試験の変遷・現状について
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000690819.pdf

厚生労働省が発表している2021年の看護師国家資格の合格率を見てみると、90.4%と高いことが分かりますね。また、過去10年で見ても毎年の合格率は90%前後を推移しているようです。

看護師国家試験の難易度

前述の表からも、合格率は比較的高い試験ですが、決して容易な試験ではありません。看護師国家試験の出題範囲は、看護学校で3~4年かけて学習した全ての内容です。看護師としての知識を習得しているかの最終確認で行われる試験のため、学習した知識を発揮することができれば、合格することができると言えるでしょう。

ちなみに、看護師国家試験では、プール問題と呼ばれる過去問に類似した問題が出題されます。類似問題は必ず出題されるため確実に解けるよう、過去問を使って勉強することもおすすめです。

国家試験の内容や日程について

最後に、看護師国家試験の内容や日程を見ていきましょう。

看護師国家試験の試験内容

看護師国家試験は、厚生労働省が定める「看護師国家試験出題基準」に基づき出題されます。出題される問題は、看護の基本について問われる必修問題や、一問一答で答える一般問題、実際の現場で起こりうる状況での判断力を問う状況設定問題の3つです。それぞれ問題数や配点が異なります。また、看護師国家試験の試験内容は社会情勢や法律の改正などにより、4~5年に一度改定されるのが一般的です。

2024年の試験日程は?

看護師国家試験は毎年2月中旬ごろに行われます。2024年の試験日は2月11日(日)です。詳しい日程については毎年8月ごろに厚生労働省のホームページに掲載されるためチェックしてみてください。

年齢は関係なし!看護師資格は社会人からでも取得可能

看護師資格は社会人でも取得可能な資格です。看護学校に進学する必要はありますが、さまざまな学費サポート制度を利用して経済的な負担を軽くしながら学習することができます。看護師国家試験は容易な試験ではないため根気や努力が必要ですが、病院だけでなく介護の現場での活躍を目指し、挑戦してみてはいかがでしょうか。

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