パワーリハビリとは?効果や危険性など指導員向けの情報をチェック

パワーリハビリとは、高齢者の老化に対するリハビリテーション手法のひとつです。高齢になると、「身体を動かしにくい」と感じやすくなり、その結果身体を動かす機会が減ってくる方も少なくありません。パワーリハビリは、身体的な不調の改善や予防を考える高齢者に効果的とされています。今回はパワーリハビリをメインテーマに、効果や危険性など指導員に向けた情報をチェックしていきましょう。

パワーリハビリとは

パワーリハビリは、老化により低下した身体・心理の活動性を回復させるもの。高齢者の自立性とQOLの向上を目指すリハビリです。軽負荷のマシントレーニングを通じて高齢者の普段使われていない筋肉を動かす内容で、一般的な筋力トレーニングとは異なります。
パワーリハビリに使うのは、高齢者の身体に過剰な負担がかかりにくい、安全で効果的なマシンです。軽負荷の運動からはじめ、“やや楽に感じられる程度”を目安に徐々に負荷を増やしていきます。そのため、一人ひとりに合わせた運動量を見極めることが大切です。

パワーリハビリの効果は?

パワーリハビリには、主に4つの効果があります。

自立支援と介護量の軽減につながる

パワーリハビリは対象者の幅が広いという特徴があります。サポートの必要がない介護予防の方をはじめ、要介護度1~5の方が対象です。要介護度の低い方にとっては自立支援に、要介護度の高い方にとっては介護量の軽減につながります。

身体的な回復を期待できる

高齢者の動作性が低下するのは、“使わなくなった筋肉”と“過剰な負担のかかった筋肉”のアンバランスが原因です。パワーリハビリで使わなくなった筋肉にアプローチし、使える状態に誘導することで、バランスが取れるようになり動作性が向上します。筋肉のバランスが取れれば身体を動かすことを楽に感じられるので、行動範囲も広がるでしょう。

<パワーリハビリの改善事例>

  • 杖を使って歩行していたが、杖が不要になった
  • 立つ、座る動作が楽になった
  • 腕が上がりやすくなった
  • 猫背が改善された

病気や障害への成果

パワーリハビリは、病気や障害に対する効果を期待できます。
たとえば認知症や陳旧性脳卒中の麻痺、腰痛、膝の痛みなど。脳卒中で動かなくなった手足が、パワーリハビリの反復的な動きにより動くようになるケースもあります。また、パワーリハビリを行うと姿勢が良くなるので、腰や膝の痛みに不安のある方にも効果的と言えるでしょう。

行動に良い変化をもたらす

パワーリハビリによって動作や体力が改善してくると、「身体が動くようになった」「疲れを感じにくくなった」と実感でき、自信につながります。自信は行動に変化をもたらすので、鬱の改善など心理面への効果も期待できるでしょう。

パワーリハビリはどんな方に有効なのか

パワーリハビリは身体に不安のある高齢者を対象としますが、特にこれらの項目に該当する方に有効とされます。

  • 脳梗塞などの後遺症で腕や脚に麻痺のある方
  • 神経難病で筋力が低下している方
  • 骨折などの手術後で、リハビリが必要な方
  • 長期臥床や手術後に体力が低下し、リハビリが必要な方
  • 膝や腰の痛みから身体を動かす機会が減った方

その他、認知症やパーキンソン病、パーキンソン症候群の方にも有効とされています。

高齢者の筋力トレーニングにはさまざまな危険性が!

高齢者に軽負荷のパワーリハビリを推奨するのは、筋力トレーニングに危険な要素があるとされているからです。こちらをチェックして、軽負荷で行うパワーリハビリの大切さを再認識しましょう。

骨折や関節の損傷

高齢になると骨粗しょう症の方が増えます。筋肉から骨や関節に伝わる負荷は大きく、骨折したり関節を損傷したりすることもあるでしょう。要介護度の高い方ほど普段の活動量が少ないので、骨粗しょう症も重く危険度が増します。

脳梗塞や心筋梗塞につながる

力を入れて手を動かす、重い物を持ち上げる、などの動作には“いきみ”が伴うもの。いきむと肺の圧力が高まり、交感神経が興奮状態になって血管が収縮し、血流が止まります。筋肉に強い負荷をかけることが脳や心臓の血流を止める原因になり、脳梗塞・心筋梗塞を引き起こす可能性があるので注意が必要です。

不整脈になる

高齢者の心臓は激しい運動に応える力が弱くなっており、規則正しいリズムが乱れて不整脈になりかねません。不整脈で血栓が生じれば、脳梗塞や肺梗塞につながる可能性もあるでしょう。

安全に行うために…パワーリハビリ指導員の心得

パワーリハビリを安全かつ効果的に行うには、指導員として3つの項目を意識することが大切です。

パワーリハビリと筋力トレーニングの違いを理解すること

筋力トレーニングと比較すると、パワーリハビリは運動によるリスクが少ないものです。パワーリハビリを通じて高齢者が運動することの快適さと効果を実感できるよう、筋力トレーニングとの違いを理解したうえで取り組む必要があります。

パワーリハビリの技術を習得すること

パワーリハビリで大切なのは、正しいフォームと一定のリズムです。普段使われていない筋肉を動かすには、正しいフォームでパワーリハビリを行う必要があります。リズムは“往”と“復”で乱れがないように心がけましょう。
負荷の上限を意識して一人ひとりていねいに指導することも、指導員に欠かせない技術のひとつです。高齢者がご自身でフォームとタイミングを把握するのは困難なので、指導員が適切に指示を出しましょう。

適切なマシンを選ぶこと

パワーリハビリに使うマシンは、上肢・下肢・体幹をバランス良くトレーニングできるものを選びましょう。身体の一部にアプローチするのではなく、全身の普段使われていない筋肉に対し同時に再活動化を図ることが大切です。

レッグエクステンション起立・歩行の安定、膝関節周りの可動性・安定性の向上に効果的。
チェストプレス身体を支える動作、肩関節および胸郭の可動性・安全性の改善に効果的。
ホリゾンタルレッグプレス起立・歩行の安定、膝関節周りの動作向上に効果的。 体重負荷をかけることなく起立訓練ができる。

パワーリハビリに使用されるマシンは、他にもいくつか種類があります。より効果的に筋肉へアプローチできるよう、それぞれの特徴をふまえたうえで使用するマシンと組み合わせを考えましょう。

指導員として高齢者をしっかりサポートしよう

パワーリハビリの狙いは、高齢者の身体を動かしやすくして生活に自信を持ってもらい、行動範囲を広げることです。実施することで楽しみや生きがいを感じられるようになれば、QOLが上がって“日々の充実度”が増します。指導員としてしっかりサポートできるよう、知識と技術を身に付けてパワーリハビリに取り組みましょう。

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