【介護報酬改定2024】何がどう変わる?介護職が知っておきたいポイント
介護報酬改定が2024年4月に行われます。介護報酬は、事業者が要介護者・要支援者へ介護サービスを提供したときに支払われる報酬です。介護保険制度改定において定期的に見直されており、2024年は介護報酬だけでなく診療報酬・障害福祉サービス等報酬も含めて「トリプル改定」としてその動向が注目されています。介護を取り巻く環境がどう変わるのか、動向をチェックしていきましょう。
※内容は2023年9月現在のものです。
2024年度「介護保険制度改定(介護報酬改定)」のポイント
2024年度の介護保険制度改定(介護報酬改定)は、持続可能な社会保障制度のための重要なものです。日本では2025年以降、高齢者が急増し、現役世代の急減が見込まれ、2040年には高齢者が現役世代を上回る予測が立てられています。社会保障の財源確保や社会保障サービスにおける人材不足が大きな課題です。
介護保険制度改定(介護報酬改定)の根源にあるのは「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」です。2023年5月に、改正の概要として以下の4つが公布されました。
〈「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」改定概要〉
- こども・子育て支援を拡充させる
- 全世代で公平に支え合えるよう高齢者医療制度を見直す
- 医療保険制度の基盤を強化する
- 医療と介護の連携機能と提供体制などの基盤を強化する
介護保険制度改定(介護報酬改定)においては、4つ目の「医療と介護の連携機能と提供体制などの基盤を強化する」が命題となっています。
介護保険制度(介護報酬改定)の主な改正事項
介護保険制度改定(介護報酬改定)においては、2024年は以下のポイントに重きがおかれます。
〈介護保険制度改正(介護報酬改定)のポイント〉
- 介護情報の基盤を整備
- 介護サービス事業者の財務状況を見える化へ
- 生産性向上のための取組を強化
- 看護小規模多機能型居宅介護のサービス内容の明確化
- 地域包括支援センターの体制整備
それぞれ詳しくご紹介していきましょう。
介護情報の基盤を整備
介護保険制度改定(介護報酬改定)では、現在は分散している介護情報を収集・整理して、自治体・利用者・介護事業所そして医療機関が閲覧できるデータベースを整える方向で議論されています。介護情報とは、介護レセプトや要介護認定情報、ケアプラン情報、LIFE情報などです。
これにより、介護施設と医療機関や自治体との連携がよりスムーズになることが期待されます。また、利用者さん自身が介護情報を確認できることで、自立支援や重度化防止への関心を深め、対策を講じることにもつながるでしょう。
介護サービス事業者の財務状況を見える化へ
近年話題となっていますが、全ての介護サービス事業者において詳細な財務状況の報告が義務付けられ、情報が公表されることもポイントです。各事業所や施設の財務状況を把握して政策に活かすため、財務状況を分析できるデータベースの整備が進められています。介護現場の処遇改善への一手としても期待できるでしょう。
生産性向上のための取組を強化
介護現場における生産性の向上に関してより一層の取り組みの推進も行われます。2024年度からは、以下が決定しました。
- 都道府県に対して努力義務規定を新設
- 都道府県介護保険事業支援計画に生産性の向上に関する項目を追加
介護サービス事業所における生産性の向上については、「ムリ・ムダ・ムラ」をなくし、効率をアップさせることが重要です。介護現場革新に関するワンストップ窓口の設置、介護ロボットやICT機器の導入支援、処遇改善加算の見直しや介護サービス施設の大規模化など、さまざまなテーマが議論されています。
看護小規模多機能型居宅介護のサービス内容の明確化
看護小規模多機能型居宅介護は訪問看護と、「泊まり」や「通い」および自宅での介護に対応した小規模多機能型居宅介護を組み合わせた幅広いサービスを提供します。「看多機」とも呼ばれ、利用者さんやご家族のニーズをくみ取ったサービスを提供できるのがメリットです。
これを複合型サービスの「一類型」として、法律で位置付けることになります。今後はサービス拠点での「泊まり」や「通い」においても看護サービスが提供される旨を明確にして、さらなる普及を進めていくことになりました。
地域包括支援センターの体制整備
地域包括支援センターと地域にある施設が連携をとりながら地域住民の支援を行えるよう体制が整備されるのもポイントです。
要支援者への介護予防支援や総合相談支援業務は、これまで地域の拠点である地域包括支援センターが行ってきました。しかし、介護保険制度改正(介護報酬改定)により2024年からは居宅介護支援事業所(いわゆるケアマネ事業所)も市町村から指定を受け、こうした業務を請け負います。
結論が先送りとなっている項目
これまで議論が続けられていますが、2024年の介護保険制度改正(介護報酬改定)で結論が見送りとなった項目や、引き続き議論に時間をかけている項目も明らかになってきました。
結論が見送りとなった項目
今回の改定では結論を出さない、とされた項目の例がこちらです。
- ケアプランの有料化
- 要介護1・2における生活援助サービスへの給付
これらは2027年の改定に向けて結論が先送りとなりました。
議論に時間をかけていて現段階で結論が出ていない項目
2023年9月時点で議論中の項目の例がこちらです。
- 自己負担2割・3割対象者の見直し
- 1号保険者のあり方
- 介護老人保健施設における多床室費用の自己負担化
介護保険制度では、介護サービスを受けたときの利用者負担は所得によって異なり、1割~3割です。自己負担1割が大部分を占めますが、財源確保のため「自己負担2割以上の範囲を拡大しては…」と検討されてきました。また1号保険者のあり方についても議論されています。しかし、慎重に判断すべき事項として現段階では結論に至っていません。
また、老健施設や介護医療院について、多床室の室料の自己負担化が議論されていますが検討中となっています。
介護保険制度改定(介護報酬改定)で2024年から変化あり
2024年度の介護保険制度改定(介護報酬改定)について、詳細が明らかになってきた項目をご紹介しました。介護情報をデータベース化して関係各所が閲覧できる仕組み作りや、財務状況の見える化に関しては、多くの施設に影響する項目でしょう。財務状況の見える化は介護現場の処遇改善にもつながります。改定にスムーズに対応できるよう、今後の動向にも注目していきましょう。