高齢者の入浴拒否。声掛けなど対応を紹介
多くの介護スタッフが経験したことのある利用者さんの入浴拒否。どう声掛けすればスムーズに入浴を促せるのか、対応法を知りたいと思っている方も少なくないことでしょう。そこで今回は、高齢者の方が入浴拒否をする理由や、シーン別での対応法を詳しくご紹介。認知症で入浴という言葉そのものを忘れてしまっているときの声掛けや、入浴拒否時に絶対やってはいけないことにも触れています。利用者さんの入浴拒否時の対応を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
高齢者が入浴拒否をする理由
まずは、高齢者の方が入浴を拒否する理由を確認していきましょう。
入浴の必要性を感じていない、もしくは面倒くさい
そもそも、入浴の必要性を感じていない高齢者の方は意外と多いです。認知症ではない利用者さんも「どこにも出かけてないからキレイ」「今日は汗をかいてない」などを訴え、入浴を拒むケースがあります。認知症の方なら、記憶の時系列にずれが生じ「さっき入ったじゃない」といい出すことも。
これらの発言の根本には、入浴という行為が負担に感じ、面倒くさいと思っている可能性があります。服を脱ぐ、身体を洗う、浴槽をまたぐなど、やるべき動作が多いのも入浴の特徴です。入浴は入ってしまえば気持ちのいい行為ですが、億劫になっている利用者さんもいることを理解しておきましょう。
▼関連記事はこちら
入浴に対し嫌悪感がある
利用者さんのなかには、自立しているようでも、できないことが増えている方もおられます。「おむつ内の失禁」や「下着の汚れ」「入浴の手順が分からない」など、人に知られたくない事実を介護スタッフに見られ「嫌だ」と感じてしまう場面も。そのほか「無理やりお風呂に誘導された」経験は、介護スタッフが付き添う入浴に対し嫌悪感を抱く原因になりやすいです。前回は入浴をしたのに今回は嫌がる、ということがあれば、上記のような場面がなかったか、振り返ってみるとよいでしょう。
入浴自体が理解できず不安がある
入浴自体が理解できない不安で拒否をするケースは、認知症の利用者さんに多いです。「入浴」そのものの言葉が理解できないため、どこに行き、これからなにをするのか分からないことが不安となり、入浴を拒否してしまうようです。
裸を見られることに抵抗がある
介護施設での入浴は介護スタッフが付き添うため、裸を見られることに抵抗がある利用者さんも少なくありません。「服を脱ぐ=無防備になる」と感じ、恐怖心を抱く方もおられます。
さらに、認知症の方は「物盗られ妄想」という症状が現れ、脱いだ服を盗まれてしまうのではないかと考えることも。どうすれば安心して入浴してもらえるのか、利用者さんのプライベートに配慮した対応を考える必要があるでしょう。
身体の不調がある
入浴を拒否する原因には、身体の不調が隠れていることがあります。いつもは入浴拒否がないのに、突然嫌がるという場合は、このケースに当てはまりやすいです。風邪っぽい、痛いところがあるなどの不調があっても口には出さず、入浴したくないとだけ訴えていることがあるので、注意しましょう。
【シーン別】高齢者の入浴拒否に効果的な声かけや対応法
では、入浴拒否にはどのような声掛けや対応が効果的なのでしょうか。シーン別で解説していきます。
入浴の必要性を感じていないとき
「汗をかいてないから大丈夫」と入浴拒否をしているときは、「お風呂に入りましょう」とストレートかつしつこい声掛けは逆効果になりかねません。そんなときは、「昨日と同じ服装になるので着替えだけでもしませんか?」「湿布薬の張替えだけでもしませんか?など、別の理由を作って脱衣所に誘うのがおすすめです。そして、服を脱いだタイミングで「ついでにお風呂に入りませんか?」と声を掛けると意外とスムーズに入浴できることがあるので、試してみてください。
入浴に対し嫌悪感があるとき
入浴に対し嫌なイメージがある利用者さんには、自尊心に配慮した対応が求められます。無理やり入浴をさせるのではなく、利用者さんのペースを尊重した声掛けで、ゆっくりと誘導しましょう。
また、自分でできることは自分でやってもらうことも大切です。何もかも介護スタッフが手伝うのではなく、自尊心を傷つけない対応を目指しましょう。
入浴自体が理解できず不安があるとき
認知症の利用者さんで「入浴」という言葉の意味が理解できないときは、違う言葉で分かりやすく説明する、お風呂の絵を見せて理解してもらうなどの対応方法があります。風呂桶やタオルなど、入浴グッズを見せてみるのも効果的です。
「入浴」「お風呂」といった言葉を使わなくても、脱衣所へ行き、お湯が貯まったお風呂を見れば「今から入浴するのか」と理解が進むこともあります。まずは、利用者さんが理解できるワードで脱衣所へ誘導してみるのがおすすめです。
裸を見られることに抵抗があるとき
裸を見られることに抵抗があるときは、普段よりもプライバシーに配慮した対応が求められます。いつも同じ介護スタッフが対応する、ほかの利用者さんとは別の入浴時間を設けるなどの工夫をしましょう。
身体の不調があるとき
身体の不調があっても、介護スタッフにうまく伝えられず入浴拒否に至っているケースでは、入浴前の血圧や体温などの健康チェックが大切です。そのほか、歩く動作、食事量などいつもとは違う様子がないかなども、注意深く観察しておきましょう。
高齢者の入浴拒否でしてはいけない対応とは
最後は、利用者さんの入浴拒否でしてはいけない声掛けや対応についてです。
無理やり入浴させない
入浴拒否している利用者さんに強い口調で入浴を求める、無理やり脱衣所へ連れていく、といった対応はやめましょう。嫌なお風呂体験は今後の入浴拒否に繋がります。今日は入れても次回以降は拒否し続けることになってしまうので注意しましょう。
叱らない
何度も入浴拒否をされるとイライラがつのり、つい叱り口調になってしまうケースもあるでしょう。しかし、叱るという対応も嫌悪感に繋がるため絶対にNG。平常心で対応できないときは、一時的にでもほかスタッフに対応を変わってもらうなど、まずは自分の心を落ち着かせる行動をとるようにしましょう。
利用者さんの入浴拒否は対応次第で解決できる可能性あり
利用者さんが入浴拒否をする理由はさまざまです。まずは何か原因で拒んでいるのか観察してみるとよいでしょう。原因が分かれば、適切な声掛けや対処法が見つけやすくなります。しかし、何度も拒否をされれば、イライラがつのることもあります。感情的な対応は絶対にNGなので、冷静になる方法も見つけておくと、より対応しやすいでしょう。