ケアマネジャー廃止論の噂は本当?真相について詳しく解説

ケアマネジャーが廃止されるのではないか?そんな噂をご存知でしょうか。ケアマネジャーは介護を提供する事業所と利用者さん、その家族をつなぐ重要な役割を担います。しかし、ケアマネジャーの仕事が正しく理解されないために、廃止・不要論が浮上しているようです。では、本当にケアマネジャーは廃止される可能性があるのか、噂の真相を詳しく解説していきましょう。ケアマネジャーとしての将来に不安のある方、キャリアアップしてケアマネジャーを目指したい方は、ぜひ参考にしてください。

ケアマネジャー不要論、廃止論の噂とは?

ケアマネジャーが不要である、または廃止されるのではないか、と噂される背景にはいくつかの理由があります。

ケアマネジャー試験の受験者数の激減

2018年にケアマネジャー試験の受験資格が厳格化されたことにより、受験者数が減少しているという実態があります。改正前である2017年の受験者数は約13万人でしたが、改正後の2018年は約5万人に激減し、合格率は10%ほどと狭き門になりました。ケアマネジャーの質を高めるために行われた改正でしたが、“なり手”を抑制する結果になっています。

また、ケアマネジャーは1人で担う仕事が膨大になりやすいことも特徴です。居宅のケアマネジャーは1人で35人まで、施設に所属する場合は100人まで受け持てるという基準があります。高い能力が求められる割に、給与が現場の介護職とさほど変わらなくなっていることも影響しているようです。従来はケアマネジャーの給与が高かったため、現場で働く介護スタッフがキャリアアップとして目指す人が多くいました。しかし、処遇改善加算により実際に介護を担う介護職員の給与が上昇。給与差がなくなってしまったことで、あえてケアマネジャーを目指す魅力が減っていることも、受験者数減少の一因となっています。

これらの要因によって、ケアマネジャー受験者数は大幅に減少し、廃止論を助長させる原因となっているようです。

AIの導入

AI(人工知能)を導入すればケアマネジャーの仕事は不要になると考えられていることも、廃止論を強めている要因と言えるでしょう。確かに、利用者さんに適したサービスの選択・提示、事業所と利用者さんをつなぐマッチング業務などAIにできることは多くあります。しかし、利用者さんの状態は一人ひとり異なるうえに、性格まで配慮したサービス選びをすることはAIにはできません。実際には、AIが提示したものをケマネジャーが参考にして案を練り、利用者さんに適したプランを完成させます。AIはいわばケアマネジャーの優秀な助手というポジションです。AIは業務効率の向上、質の平準化といった効果が期待される便利ツールであるという認識を持っておくといいでしょう。人の気持ちに寄り添うことが難しいAIには、ケアマネジャーの代替はできません。よって、AI導入によるケアマネジャーの廃止はないと考えられます。

法改定により管理者が主任ケアマネジャーに限定

介護保険法の改定により、2021年から居宅介護支援事業所の管理者が主任ケアマネジャーに限定されました。主任ケアマネジャーは、ケマネジャーとして通算5年以上従事、かつ主任介護支援専門員研修過程を修了することで資格が取得できます。法改定されても、中にはすぐに対応できない事業所も多く、廃業になってしまうのではないかと不安の声が高まりました。しかし、経過措置期間を設ける見直し案が発令。2021年3月31日時点で主任ケアマネジャー以外が管理者である事業所は、経過措置期間が2027年3月31日まで延長されました。事業所が閉鎖されるかもしれないという危機感から、ケアマネジャー廃止・不要論が助長されていたようですが、その心配も当面はなくなったようです。

2021年の法改定による処遇改善とは?

2019年に厚生労働省が出した「介護保険制度の見直しに関する意見」によると、「適切なケアマネジメントを実現するため、ケアマネジャーの処遇の改善等を通じた質の高いケアマネジャーの安定的な確保や、事務負担軽減等を通じたケアマネジャーが力を発揮できる環境の整備を図ることが必要である。ケアマネジャーを取り巻く環境や業務の変化を踏まえ、ケアマネジャーに求められる役割を明確化していくことも重要である(資料より一部抜粋して引用)」と、ケアマネジャーの処遇改善、環境の整備を求める意見があることを発表。そして2021年の介護報酬改定では、ICT(情報通信技術)を導入した居宅介護支援事業所はより多くの利用者さんを担当できるという内容が盛り込まれました。ICT導入が進めばケアマネジャーの事務負担軽減につながるため、処遇改善を推進できる改定と言えます。

また、2019年より介護報酬改定の基礎資料となる厚生労働省の「介護従事者処遇状況等調査」では居宅ケアマネジャーが対象外となっていました。しかし、反対意見が相次ぎ今年度より再び調査対象へ含まれることに。今後も必要とされる役割だからこそ、処遇改善が求められていると考えられます。処遇改善が進めば、ケアマネジャーを目指す方が増えるため、廃止論を弱める結果となるでしょう。

求められるケアマネジャーになるには?

今後は、コミュニケーション力や専門知識、事務処理など従来必要とされてきた能力以外に、AIではまかなえない部分に対応する能力が必要と考えられます。AIでは判断が難しい、利用者さんの非言語的な部分をどれだけ汲み取れるかが大切です。また、居宅介護支援事業所の管理者が主任ケアマネジャーに限定されたこともポイントとなるでしょう。管理者として主任ケアマネジャーになってほしいと求められる可能性があります。利用者さん一人ひとりとそのご家族だけでなく、地域のケアマネジャー、地域の方や医療機関と連携する能力が管理者には必要です。時代に合ったケアマネジャーになることが求められるポイントとなるため、今後の法改定にも注目しておきましょう。

廃止論の噂を恐れずにケアマネジャーを目指そう

ケアマネジャーが廃止されるのではないかという噂の真相について理解できたでしょうか?なり手が減り、ケアマネジャー自体の高齢化が進んでいる現代では、新たな担い手となるケアマネジャーが求められています。今後処遇改善の対象となっていく可能性の高いケアマネジャーは、キャリアアップとして目指すには魅力的な職業です。不要論、廃止論を恐れず、今後も必要とされるケアマネジャーをぜひ目指してみてはいかがでしょうか。

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