回想法を活かした認知症リハビリとレクの実践方法
昔の写真や音楽などを活用する“回想法”。介護施設では、認知症の利用者さんへのリハビリとしてレクリエーションに取り入れられています。認知機能が低下すると、日常生活に支障が出て不安を感じる利用者さんもいるでしょう。そこで今回は、回想法の認知症リハビリへの効果、回想法を取り入れたレクリエーションの実例をご紹介します。介護施設で回想法を実施する際のポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。
回想法とは?
回想法は、認知症のリハビリに用いられる心理療法です。昔懐かしい写真・音楽・馴染みのある道具などを使い、見て、触れて過去の経験や思い出を語り合います。回想法では利用者さんが過去を思い出すためにさまざまな“物”を使うこともありますが、会話のみで行うことも可能。語り合う相手とコミュニケーションを取りながら、分かち合うことで充実した時間を過ごすのが回想法の狙いです。
回想法は個人でもグループでも実施できるので、介護施設のレクリエーションに取り入れやすいと言えます。認知症リハビリとしてはもちろん、コミュニケーションを促すことを目的に実施するのもおすすめです。
認知症リハビリへの効果
続いて、回想法が認知症リハビリにもたらす効果を解説します。
【認知症リハビリへの効果その1】自己の再確認
回想法で過去を思い出すと、これまで歩んできた人生や自身の存在について再確認する機会を作れます。高齢になると、今置かれている状況や周囲と自身の関係性を見失い、不安になることもあるでしょう。利用者さんの“自己の再確認”のきっかけになることは、回想法で期待できる効果のひとつと言えます。
【認知症リハビリへの効果その2】昔~未来をつなぐ
昨日から今日、さらに明日、といった時間の流れは、認知症により見当識が混乱することもあります。回想法で時間の流れをたどることは、認知症の利用者さんが“昔~未来をつなぐ”効果も期待できるでしょう。
【認知症リハビリへの効果その3】自信と希望を取り戻す
認知症リハビリの効果として、“自信と希望を取り戻す”ことも期待できると言われています。認知症を患うと、自分でできることが減ったり、失敗が多くなったりすることから、情けなさや失望を感じる方もいるでしょう。過去を思い出すことで多くを成し遂げてきた自身の人生を振り返れば、明日への活力を見出すことができます。
【認知症リハビリへの効果その4】相互理解を深める
同世代を生きる利用者さん同士で交流し、相互理解を深めることも効果のひとつです。共通の話題で盛り上がれば、不安や孤独感が和らぎ、自分の話を聞いてもらえる満足感も得られます。
回想法を介護施設で行う場合のポイント
回想法を介護施設で行う場合は、秘密保持や本人の尊厳を守ることなど、いくつか注意すべきポイントがあります。
<回想法の基本事項>
- 秘密保持
- 本人の尊厳を守る
- タブーに触れない
- 無理強いしない
- 気持ち良く終える
これらの基本事項をふまえたうえで、利用者さんが充実した時間を過ごせるよう配慮しなければいけません。特に、利用者さんのプライベートにおいて重要な話題に関しては、介護職員同士で情報を共有し、プライバシーの保護に配慮することが大切です。回想法の実施中に利用者さん同士で論争が起きそうな場合は、適度なタイミングで話を切り上げたり、話題転換をしたり、介護職員がフォローするといいでしょう。
回想法を取り入れたレクをご紹介!
回想法を取り入れたレクリエーションはいくつもありますが、ここでは2つの実例をご紹介します。
【回想法を取り入れたレクその1】“昔遊び”の再現
お手玉や花札、あやとりなどを使って“昔遊び”を再現します。道具を手に取って遊ぶだけでなく、遊び方や道具に関する思い出を語り合うとより盛り上がるでしょう。「よく遊んだのはいつ頃?」「どんな遊び方が好きだった?」と、介護職員が話題提供するのもおすすめです。
【回想法を取り入れたレクその2】写真や曲で“昔クイズ”
昔懐かしい写真を見せたり、曲を流したりするクイズ形式のレクリエーションです。利用者さんがクイズに回答する際は、合わせてエピソードもたずねると話題が広がります。集団レクリエーションとして楽しめるので、介護施設で取り入れやすいでしょう。
回想法を取り入れてみよう
回想法は、認知症リハビリに効果が期待できる手法のひとつです。自己の再確認や相互理解を深めるなどの効果をふまえたうえで、介護施設でどのように取り入れれば良いか考えてみましょう。回想法についてはこちらの記事でもご紹介しています。