とろみ剤は危険?便秘になる?介護食に使う際の注意点

とろみ剤とは、水分にとろみをつけて嚥下しやすくするためのものです。嚥下機能が衰えた利用者さんのために介護現場ではよく使われています。しかしとろみ剤を使い過ぎると、誤嚥や脱水の危険、便秘になるなどのデメリットも。そこで今回は、介護スタッフが知っておきたいとろみ剤のメリットやデメリット、使用する際の注意点を紹介します。

とろみ剤とはどういうものか?

とろみ剤とは、飲み物や食べ物にとろみをつけるために使われます。主な成分は、でんぷんやキサンタンガムなどの増粘多糖類です。

嚥下機能が低下している利用者さんの場合、飲み物や食べ物をうまく飲み込めずに咳込んだり誤嚥したりするリスクがあります。とろみ剤は、こういったリスクをできるだけ低減し、利用者さんが飲食しやすいようにするために用いられているのです。

また、とろみをつけることで飲食物が舌に長くとどまるようになり、味を濃く感じやすくなります。結果、とろみ剤を用いる場合は薄味でも美味しく感じられ、減塩につながるというメリットも。

しかしメリットがある半面、デメリットもあります。次では、とろみ剤により起こるリスクについて見ていきましょう。

とろみ剤により起こるリスク

とろみ剤の使用量や使い方によっては身体に悪影響を及ぼすこともあります。誤嚥予防や減塩効果が期待できるとろみ剤に、どのようなリスクがあるのか見ていきましょう。

脱水・便秘

水分や栄養を補給しやすいようにとろみ剤を用いますが、以前のようなのどごしは体感できなくなります。のどごしの悪さから「美味しくない」と感じ、飲食の機会を減らす利用者さんも。

飲食の機会が減ってしまうと、体内の水分量が減少して脱水になる可能性があります。また、水分量が減ることで便秘になるリスクも高まるでしょう。

咽頭残留による誤嚥

とろみ剤を使えば飲食物が口からのどへ移動するスピードがゆっくりになり嚥下しやすくなりますが、その分粘着性も高まります。そのため、とろみ剤を多めに使う、とろみ剤がうまく溶けずにダマができてしまうことなどが起きると、逆に飲み込みづらくなることも。

最悪の場合、のどの喉頭蓋谷(こうとうがいこく)や梨状窩(りじょうか)に飲食物が残る咽頭残留が起き、誤嚥を引き起こすこともあります。

薬の効き方が変わる

高齢者になると服薬する機会が増える傾向にあります。嚥下機能が低下している方の服薬ではとろみ剤や服薬ゼリーを用いることが多く、特に安さや利便性を理由にとろみ剤が使われるケースも多いのだとか。

ある大学と薬品会社との共同研究の結果によると、とろみ剤の種類によっては薬の崩壊時間や溶出率に大きな影響を及ぼすことが分かっています。これによって薬の効き方が変わる恐れがあるため注意が必要です。

とろみ剤を使用する際に注意すること

最後に、とろみ剤を使用する際の注意点について見ていきましょう。

混ぜ方を工夫する

とろみ剤は混ぜ方によってはダマができてしまいます。例えばコップにとろみ剤を入れて飲み物と混ぜる場合、スプーンでグルグルと混ぜるととろみ剤がコップの中心に集まることに。コップで混ぜる場合は、前後に撹拌させるイメージで混ぜるとダマになりにくいでしょう。

とろみを加減する

食べ物や飲み物によってとろみのつき方が違います。食品にあわせてとろみを加減しましょう。

また、とろみ剤を入れたときはちょうど良くても、時間の経過とともにとろみが増すことも。とろみ剤を混ぜた直後のとろみ具合ではなく、時間が経った後のとろみ具合をチェックする必要があります。

利用者さんの嚥下機能によってとろみを加減することも大切です。

使い分ける

前述したように、とろみ剤の主成分は商品によって違います。主成分の影響でとろみが早くつくものや、温度によってとろみが変化するもの、時間の経過とともにとろみが変化するものなど、さまざまです。

また、味噌汁や牛乳などはとろみがつきにくいなど、飲食物によってもとろみ具合が変化するため、用途によって使い分けると良いでしょう。

とろみ剤は便利なものの使い方には注意が必要

とろみ剤は安価で手に入りやすいため、介護現場ではよく用いられます。嚥下機能が低下している利用者さんの誤嚥を防ぐために有効な手段ですが、使い方を間違うとかえって誤嚥を引き起こす危険なものになることも。また、脱水や便秘になるリスクもあるため、飲食物や利用者さんにあわせてとろみ剤の量を調整するなど、工夫して使うようにしましょう。

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