高齢者に多いめまいの原因は?日頃から意識したい予防策も
介護職のみなさんは、目の前で利用者さんがめまいやふらつきを起こす場面に遭遇したことはありませんか?めまいはすぐに回復する場合がほとんどのため軽視してしまいがちですが、実はその裏に深刻な病気が潜んでいることがあります。本記事では高齢者に多いめまいの症状について、詳しく解説。その原因や治療法、予防法についてもまとめました。利用者さんのめまいに正しい対処ができるよう、一緒に学んでいきましょう。
高齢者に多い「めまい」の症状
高齢者に多いめまいには、以下の4つの種類があります。それぞれご紹介しましょう。
回転性めまい | 自分や周りの景色がぐるぐると回るように感じるめまい。症状が強く出やすく、吐き気などの症状も出ることがあります。 |
浮動性めまい | 足元が宙に浮いているように感じるめまい。まっすぐ歩くことが難しくなる場合があります。 |
動揺性めまい | 自分や周りが大きく揺れているように感じるめまい。歩くときにふらつきが出ることもあります。 |
その他のめまい | 歩行時につまずいたり転倒しやすくなったりする「平衡失調」、目の前が急に暗くなる「立ちくらみ(眼前暗黒感)」など。 |
症状の特徴別に区分されてはいるものの、めまいの感じ方は人それぞれです。また、複数の症状が同時に現れることもあるため、タイプがはっきりしないこともあるでしょう。
高齢者のめまいに多い原因
高齢者に多いめまいの原因には、以下のような病気や機能低下による体の不調が考えられます。なかでも脳や耳の病気が関係する場合には、早めの治療が必要な可能性が高いため注意が必要です。
脳の病気
めまいを引き起こす脳の病気には、以下のようなものがあります。
- 脳梗塞
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 椎骨脳底動脈循環不全
- 聴神経腫瘍
なかでも脳梗塞・脳出血・脳腫瘍は緊急性が高いため、めまいの他に手足のしびれや麻痺、激しい頭痛などの症状が見られたら救急車を呼びましょう。
耳の病気
めまいの原因には、以下のような耳の病気が関係することもあります。
- 良性発作性頭位めまい症
- 前庭神経炎
- 突発性難聴
- 中耳炎
- メニエール病
高齢者に多いのは良性発作性頭位めまい症ですが、後遺症はなく、命にかかわることはありません。一方で、中耳炎や突発性難聴には難聴などの後遺症が残ることがあるため、早期治療が求められます。
心疾患や血圧異常
めまいは以下のような心疾患や循環系の異常によって引き起こされる場合も。とくに高齢者は血圧調整機能の低下によって、めまいが引き起こされやすくなります。
- 不整脈
- 貧血
- 高血圧や低血圧などの血圧異常
高血圧の方で血圧降下薬などを服用している場合には、治療薬の副作用によってめまいが出ることがあるため気をつけましょう。
ストレスや心の病気
ストレスや過度な緊張によって、精神的な負担が大きい場合にめまいが出ることがあります。また、めまいはうつ病など心の病の症状のひとつでもあるため、可能性がないかどうか探ってみることも大切です。
加齢にともなう機能低下
高齢になると徐々に平衡感覚や血圧調整の機能低下がみられるようになります。また、体内の水分量が減少しやすい割に、のどの渇きを感じにくくなることで脱水症状になることも。これらの加齢にともなう機能低下も、めまいを引き起こす発端となる場合があるようです。
薬による副作用
高齢者はさまざまな持病を抱える方が多く、日常的に薬を服用することも増えてきます。そのため、さまざまな体の不調や病気、薬の副作用がからみあい、めまいを発症することも少なくありません。
高齢者に多いめまいの治療法
めまいの治療はさまざまあり、原因となっている病気があれば並行して治療していくことになります。そのため、介護職は利用者さんの症状をしっかりと観察し、
- めまいの症状タイプ
- 発症日時
- 他の症状の有無
などを記録に残すようにして、詳細を医師に伝えられるようにしましょう。
一般的に、めまいを抑える治療薬としては、耳の血流をよくする薬や耳のむくみを解消する薬、神経の炎症を鎮静化する薬などが処方されるようです。
また、高齢者のめまいの原因として多いとされる良性発作性頭位めまい症では、平衡感覚の訓練を行うというのが一般的な治療法になります。具体的には小脳トレーニングや三半規管トレーニングがあり、いずれも簡単に取り組むことが可能。できるだけ体を動かした方が早く回復するともいわれています。
高齢者のめまいを予防する方法
高齢者のめまいは、バランスを崩して転倒につながるリスクもあります。そのため、利用者さんには、以下のような予防法を実践してもらいましょう。
適度な運動
平衡感覚や筋力を鍛えるだけでなく、心の健康にもつながる運動は、めまい予防に限らず普段から積極的に取り入れたい習慣のひとつです。めまいのタイプや原因によっては、体を休めた方がいいこともあれば、かえって体を動かした方がいいことも。その点については、病院を受診した際に医師から注意点を聞いておくと安心です。
ゆっくりと立ち上がる
高齢者は急に立ち上がると起立性低血圧になりやすく、めまいを生じやすくなります。そのため介護職は、利用者さんがゆっくりと立ち上がれるようにサポートしましょう。
規則正しい生活を送る
十分な睡眠やバランスのいい食事は自律神経を整えることにつながります。自律神経の不調によるめまいを予防するためにも、日頃から規則正しい生活が意識できるようにサポートしましょう。
ストレスをためないようにする
めまいの原因となる心の不調・病気を予防するため、日頃からストレスのたまらない生活を心がけることは大切です。利用者さんには趣味に没頭する時間やレクでリフレッシュする時間を積極的に取ってもらうようにしましょう。
高齢者のめまいの原因には、深刻な病気が潜んでいる可能性も…
高齢者のめまいには、回転性や浮遊性などタイプがあります。その原因には、加齢にともなう機能低下だけでなく、脳や耳などの病気が影響していることも少なくありません。介護職としては、まず利用者さんのめまいの症状をしっかりと観察することが大切。他にも深刻な症状が見られるようなら、すぐに病院を受診するようにしましょう。