パーキンソン病の高齢者を介護するポイント!知っておきたい基礎知識

50歳以上から発症しやすく高齢者にも多くみられる「パーキンソン病」は、動作が遅くなる、安静時に小刻みに震えてしまうなどの症状が特徴の病気です。そこで今回は、パーキンソン病の高齢者を介護する際に知っておきたい症状やケア方法、気を付けたいことなどポイントを解説します。早期の適切な治療とリハビリで進行を遅らせることが可能なパーキンソン病。高齢者に長く元気に過ごしてもらうためにも介護の際に知識を活用していきましょう。

パーキンソン病の原因と高齢者向けケア方法

まずはパーキンソン病の原因と、高齢者向けのケア方法について簡単に解説します。

パーキンソン病の原因は?

パーキンソン病は、中脳のドパミン神経細胞が減少し、神経伝達物質「ドパミン」の量が低下することが原因で起こると考えられています。発症の大半は非遺伝のため、誰でもなり得る可能性があり、発症率は60歳以上で100人に1人と高い数値です。指定難病に分類される進行性の病気のため、症状は時間が経つほど重くなり、介護度も高くなる傾向があります。

パーキンソン病の治療方法・対処方法は?

パーキンソン病は根本的な治療方法がなく、病気の進行を遅らせるためにドパミンを補う薬物療法が中心となります。しかしながら抗パーキンソン薬には副作用があり、便秘や吐き気、食欲不振、妄想、運動障害などさまざまな症状が現れるため、細かな投薬調整が必要です。また、薬以外で症状のコントロールをするために、ウォーキングやストレッチなどのリハビリテーションを毎日行うことも有効な対処方法として挙げられます。

【パーキンソン病】高齢者に表れやすい症状

ここからは、パーキンソン病を患う高齢者に表れやすい症状を解説します。人によってはパーキンソン病の症状と、高齢者特有の老化現象との違いがわかりにくく、早期発見が難しい場合もあります。手足の震えなどは左右差があるか注意して観察してみると、受診の判断がしやすいでしょう。

姿勢が安定しない、歩行障害

パーキンソン病で高齢者にとって危険性が高い症状が、姿勢と歩行障害です。
腰が極端に前のめりになる、首が垂れ下がる、傾いた体を整えにくいといった「姿勢の不安定」や、階段の上り下りはスムーズなのに最初の一歩が出にくい、歩行時に急に止まれないといった「歩行障害」が例として挙げられます。また、筋肉が固まることから歩行しにくくなることもあり、どの症状も転倒や骨折の危険があるため、介護の際は特に注意が必要です。

ふるえ

じっとしているときに自分の意思に反して体の一部が「ふるえ」てしまうのも、パーキンソン病では特徴的な症状のひとつ。
発症初期段階では片方から始まり、左右で差が出ますが病気が進行すると反対側もふるえるようになります。

嚥下障害

「嚥下障害」もパーキンソン病の高齢者を介護する際、注意しておきたい症状です。
噛む・飲み込む動作が遅くなり、水分や食事の摂取がうまくいかず脱水や栄養不足になる危険性が高まります。また、症状が進行すると飲食物が気管に入りやすくなり、窒息の危険が出てくるでしょう。

便秘、排尿障害

パーキンソン病の症状だけでなく、抗パーキンソン薬の副作用でもある「便秘」は、約8割以上のパーキンソン病を患う方にみられる症状です。頻尿など自律神経が乱れることによる「排尿障害」もあるため、トイレ介助が必要な高齢者の方にとってはQOLが著しく下がってしまいます。

むくみ、脱水

嚥下障害や薬の副作用からパーキンソン病の方は「脱水」が起きやすい状態です。高齢者は筋肉が痩せていて水分を貯めておくのが難しく、摂れる水分が少ないことも相まって脱水になりやすい状態に。
また、パーキンソン病により筋肉が固まる・動かない状態が増えると、脚が「むくみ」やすくなることも挙げられます。

幻覚、妄想、認知障害

パーキンソン病は「幻覚」「妄想」「認知障害」といった症状が起こしやすく、罹患していない人よりも4~6倍認知症を発症しやすいです。パーキンソン病から発現する認知症を遅らせるためにもリハビリを積極的に行うようにしましょう。体を動かす機会を増やすことが重要です。

【パーキンソン病】高齢者介護のポイント

ここからは、パーキンソン病の高齢者を介護する際に気を付けたいポイントをご紹介します。

転倒を防止する

歩行や姿勢に症状が出ている場合は、転倒しにくい環境づくりが必要です。例えば、床にテープを張ってそれを目印に歩いてもらう、「いちに、いちに」の号令をかけ聴覚からも刺激を与えることで歩き出しをスムーズにするなども有効でしょう。プロテクターや保護帽子を被るなど、転倒したときに衝撃を和らげる工夫も必要です。

脱水に気を付ける

パーキンソン病の高齢者介護で特に気にしておきたいのが脱水です。パーキンソン病になると暑さを感じにくくなり、発汗が減少する方も多いため「汗をかかないから水分をとらない」という方も出てきます。なんとなく元気がない、舌や脇の下が乾燥しているなど、脱水を起していないか気にかけることが大切です。

筋力維持に努める

パーキンソン病の進行を遅らせるには、体を動かすことが大切な要素。動くためにも筋力維持に努めましょう。なるべく見守りや介助で歩行してもらうことを意識し、疲れない程度に日課として行うのがポイントです。

手足の冷えに注意する

パーキンソン病では自律神経症状として手足などの血流障害が起こる場合があります。手足の冷えは運動などのリハビリで改善しないことも。手袋や靴下など直接温めることで改善が見られない場合には、例えば背中へ蒸しタオルを10分当てるなど、症状の軽減に努めましょう。症状が軽減することで、病気を治すことはできなくても、QOLが上がります

パーキンソン病に負けず高齢者が長く元気で過ごせるようにケアしよう

パーキンソン病は指定難病ということもあり、発症した事実だけでも気持ちが落ち込んでしまう方も多いものです。しかしながら、高齢者が少しでも長く元気で過ごすために、ちょっとしたケアや気づかいで病気の進行を遅らせる手助けはできます。どの症状もパーキンソン病特有ではあるものの、高齢者が感じやすい症状と似ているため、ご紹介したポイントは介護の現場でも活用できるものばかりです。この記事を参考に、日々のケアも見直してみてはいかがでしょうか。

この記事をシェアする