介護記録の書き方のコツをチェック!テンプレートの作成例もご紹介
介護記録とは、介護保険法により義務付けられている介護サービスの記録です。重要な書類ですが、「日々書くのは大変」「時間がかかり苦戦している」という方もいるかもしれません。この記事では介護記録の概要や、介護記録の基本の書き方とともに効率良く書くためのコツをご紹介していきます。テンプレートを用意しておく方法もご紹介していきます。介護記録の基本をおさらいしたい方はぜひご覧ください。
介護記録とは法律でも義務付けられている重要な書類
まずは介護記録とはどのようなものなのか確認していきましょう。
介護記録とは
介護記録とは、介護サービスの内容、利用者さんの様子や健康状態などの記録です。介護記録の作成と保存は介護保険法により義務付けられていて、保管期間は2年または5年となっています。近年では介護記録の電子化が進み、テンプレートに沿って必要事項を記入していく方法で記録を残している事業所もあれば、紙ベースで介護記録を作成し保管している事業所もあるでしょう。
介護記録の目的
介護記録の記入には、「法律で義務付けられているから」という理由を超えた目的があります。以下の7つが代表的な例です。
- 提供サービスの報告
- 利用者さんの様子や変化の観察
- スタッフ間での情報共有
- 万一の際に利用者さんと介護スタッフを守るため
- 利用者さんやその家族との情報交換に利用するため
- ケアプランを活用し最適なサービスを提供するため
- 正当な介護報酬を得るため
介護記録は介護事業所の定期的な監査の際にチェックされます。また、利用者さんの日々の健康状態や変化を知り、スタッフ間で情報を適切に共有してサービス内容を統一、安定したものにするためにも必要です。利用者さんのご家族との情報共有にも役立ちますし、ケアプランの内容を見直す際にも活躍するでしょう。
介護記録を効率良く書くためのコツ2つ
介護記録が重要な書類であることは理解していても、書くのに時間がかかるから苦手…という方もいるかもしれません。そこで、介護記録を効率良く書くためのコツをご紹介していきましょう。
普段からメモをとるクセをつける
利用者さんの食事のお世話や介助、レクリエーションの補助…と1日のなかでさまざまな業務に関わることもあるでしょう。忙しくしていると、いざ介護記録を記入するときに、内容を思い出せず時間がかかってしまうことがあります。常に小さなメモ帳などを用意しておき、利用者さんに変化があったときやケアをおこなったとき、申し送り事項があったときに記録しておくクセをつけましょう。こまめに記録しておくと、時短になるだけでなく、漏れなく介護記録をつけることができるので安心です。
テンプレートを作成しておく
あらかじめ介護記録のテンプレートを用意しておくのも効率良く介護記録を残すコツのひとつ。毎回必ず記入するような内容は、テンプレートにしてコメントを加えるだけで完了するようにしておくとスムーズに介護記録を残すことができます。「食事」「入浴」など項目ごとに、介護サービスの内容、会話内容や利用者さんの反応を記入できるよう準備しておくと良いでしょう。
ただし、利用者さんや状況によって記入すべき内容は異なるので、テンプレートを埋めることにとらわれすぎないよう気をつけてください。
介護記録の書き方の基本をおさらい
ここからは、介護記録の書き方の基本をおさらいしていきましょう。5つにポイントを絞ってご紹介していきます。もし、手書きで介護記録を書く際は、内容を改ざんできないよう、消えないタイプのペン(ボールペンなど)で記入することが前提です。
内容は簡潔に!常体で記入
介護記録は読みやすさが重要です。長い文章を書けば良い、というわけではありません。事実をシンプルに記入するよう心がけましょう。また、常体で記録するのがポイントです。「~しました」「~でした」といった書き方ではなく「~だ」「~だった」という記載方法にします。
5W1Hを意識した内容で
介護記録を記入する際は、5W1Hを意識することで具体的な記録を残すことができます。5W1Hの5Wとは、When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)のこと。1Hとは、How(どうしたか)を表します。
推測や感情を加えるのはNG!客観的事実を
記録は作文とは異なります。推測の事柄を記載したり、感情を加えると事実が歪んでしまったり、内容がブレてしまうので客観的に判断できる事実のみを記載しましょう。
たとえば、利用者さんが介護スタッフの手を叩いたとしましょう。この事実を記す際は、「利用者さんが怒って暴力を振るった」といった表現しないようにします。「昼食の時間に利用者〇〇さんが介護スタッフ□□の手の甲を2回平手で叩いた」というように、事実のみを記載しましょう。
専門用語や略語はなるべく使用しない
介護記録は介護従事者や医療スタッフだけでなく、利用者さんのご家族なども目にする機会があるため、誰が見てもわかりやすいように記入することが大切です。専門用語や略語はできるだけ使わず、理解しやすい内容で正確に記録しましょう。また、利用者さんに対する侮蔑的な表現などの禁止用語にも気を配ることが必要です。
介護記録は4つの項目の流れを意識して書く
介護記録は、フォーカスチャーティングという4つの項目を整理しながら書く方法で記載すると分かりやすい内容となます。4つの項目とは以下です。
<4つの項目>
- フォーカス:利用者さんの言動や発生したことなど
- データ:利用者さんの心身の状態
- アクション:スタッフの対応(根拠と共に)
- レスポンス:結果(利用者さんの反応)
スタッフの対応内容については、なぜそのような対応をしたのか根拠も記載しておくことで、後ほど自分自身で振り返る際やスタッフと情報を共有する際に役立ちます。
介護記録の書き方の具体例をご紹介
最後に、介護記録の書き方の具体例をご紹介します。
介護記録の悪い例と良い例
利用者Aさんが食事のみかんを残した。嫌いなのかもしれないと思い、無理に勧めないようにしました。
例文では内容が抽象的で、記入者の主観も含まれています。この文章をフォーカスチャーティングの4つの項目を意識し、5W1Hを交えて、主観を除いて改善してみましょう。
<4つの項目の整理>
まずはそのときの状況を整理していきます。
- フォーカス:Aさんが昼食のデザートのみかんを残していた
- データ:特に表情に変化はない
- アクション:『お腹がいっぱいですか?』とスタッフFが聞いた
- レスポンス:Aさんは首を振った。特になにも言わなかった
このような流れを汲んで、5W1Hを交えて例文を書き直すと以下のようになります。
昼食時にAさんはデザートのみかんを残していた。Aさんの表情にはとくに変化がないご様子。食事はいつも通り召し上がっていた。隣にいた介護スタッフFが『お腹いっぱいですか?』と聞くとAさんは何も答えず首を振って反応された。それ以上みかんを勧めないようにした。食事は20分で終えた。
テンプレートの作成例
介護記録のコツで解説したように、食事や入浴など、項目ごとにテンプレートを作成しておくと日々の介護記録記入のスピードをアップさせることができます。例をご紹介しましょう。
「○○を△△(量)、□□を△△(量)召し上がる。□□を残していたため、『●●』と声をかけたところ『▲▲』とお答えになった。食事は■■分で終えた。」
このように、利用者さんの言動やスタッフからの声かけ、それに対する利用者さんの反応などを記載しやすいよう、介護記録のテンプレートを作成しておきましょう。日々の介護記録の記入がスムーズになりますよ。
介護記録はテンプレートを使用して効率良く記入を
介護記録は利用者さんの日々の健康状態や様子をスタッフや利用者さんのご家族と共有し、より質の良い介護サービスを提供するために大切な書類です。記入時間を短縮するコツは、こまめにメモをとっておくことや、テンプレートを活用すること。簡潔で分かりやすい介護記録を効率良く書けるよう、工夫していきましょう。