介護職として働く外国人が増加!受け入れ制度の違いや注意点を知ろう

急速に進む高齢化に伴い、介護業界では2025年度までに約32万人の人材が不足すると見込まれています。そこで注目されているのが、外国人の介護職員です。現在日本には、介護現場で外国人労働者を受け入れる制度が4つあり、これらを活用して入国する方も増えています。この記事では、介護現場で働く外国人介護職員の制度や、一緒に働く際の注意点などを解説。これからの介護現場で求められる対応などについても、お伝えしていきます。

介護現場で働く外国人労働者は増えている

厚生労働省が2021年7月に公表したデータによると、2023年度に約22万人2025年度には約32万人2040年度には約69万人の介護職員の確保が必要だといいます。つまり、急速な高齢化に伴い、介護業界では人材不足が問題になっているということです。国内でも、小中高生など若者に向けた福祉・介護職の啓発や介護職員の待遇改善など、さまざまな取り組みが行われています。さらに、2017年頃から力を入れ始めたのが、外国人労働者の採用です。さまざまな制度を創設し、介護現場で外国人労働者を積極的に採用し始めました。

参考:「経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れ概要」|厚生労働省

上記のグラフは、2019年度までに、外国人労働者受け入れ制度の1つを利用して入国した介護福祉士候補者の推移を示しています。2010年度には149人だった介護福祉士候補の外国人労働者も、2019年度には761人にまで増加しました。また、このほかの制度を利用して介護現場で働く外国人労働者の割合は増えており、高齢化が進む今後も増加が見込まれています

【簡単に解説】介護現場で外国人の受け入れを促進する4つの制度とは?

介護現場で外国人労働者を積極的に受け入れるため、4つの制度が設けられています。ここからは、それぞれの制度のポイントを簡単に解説していきましょう。

日本の介護福祉士養成校を卒業した在留資格「介護」

在留資格「介護」とは、日本の介護福祉士を養成する学校に留学・卒業して介護福祉士の資格をもつ外国人に、永続的に働ける権利を付与する制度です。特徴は、介護福祉士の資格取得後、日本の介護施設などに就職すると「留学ビザ」から「介護ビザ」に変更できること。これにより、本人が望む限り介護福祉士として永続的に日本で働くことができます。ただし、この制度には介護事業所と外国人介護職員をマッチングする機関がないため、自主的な求人活動が必要になるでしょう。

一定の介護知識と経験をもつ「EPAに基づく外国人介護福祉士候補者」

「EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士候補者」とは、お互いの国の経済活動を連携強化する目的で外国人労働者を受け入れる制度のことです。日本は、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3ヶ国とEPA協定を結んでいます。特徴は、本国にて介護や看護の一定の知識と経験をもつ方が、日本語研修を受けてから日本に入国するということ。入国4年目に介護福祉士の国家資格を受験して、合格すれば永続的な就労も可能です。

日本から本国へ技術や知識を移転する「外国人技能実習制度」

「外国人技能実習制度」とは、日本で働きながら技術や知識を習得して本国の経済発展に役立てることを目的に、外国人を一定期間受け入れる制度です。特徴は、日本に滞在できる期間が最長5年と決まっていること。また、原則として介護職以外へ転職ができない点は、ほかの制度との大きな違いの1つでしょう。ただし、技能実習の期間内で介護福祉士の国家資格を取得できれば在留資格「介護」に変更でき、永続的に働くことが可能です。

就労を目的とした在留資格「特定技能1号」

在留資格「特定技能1号」とは、就労を目的として外国人労働者を受け入れる制度です。特徴は、働くために必要な技能水準や日本語能力を、入国前に試験で確認すること。日本での滞在期間は、最長5年と決まっています。就労を目的とした制度のため、技能実習生には制限がある夜勤にも対応可能です。入国後は自分の意思で転職することもでき、介護福祉士の国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更し永続的に働くこともできます。

介護現場で外国人労働者を受け入れるときの問題や注意点とは?

ここからは、介護現場で外国人労働者を受け入れるときの問題や注意点について見ていきましょう。

雇用のための手続きや法律などの知識が必要

前述したとおり、利用する制度によって外国人の在留期間や就労目的は異なります。とくに技能実習生の場合は、就労ではなく技能の移転が目的であることをしっかりと理解しておかなければなりません。介護現場で外国人労働者を雇用したいときには、それぞれの制度や手続きについて、しっかりと学んでおく必要があるでしょう。

宗教や文化の違いに配慮する

介護現場で働く外国人労働者の中には、日本とは異なる宗教や文化をもつ方もいます。中には食事の制限や、お祈りの時間を要することもあるでしょう。外国人労働者を受け入れる際には、こうした文化的な違いにもきちんと理解を示し、尊重していくことが大切です。

利用者さんの不安を招かないよう注意する

日本での介護には、利用者さんと日本語で会話することが欠かせません。しかしながら、言語の習得には時間もかかるもの。介護業界で働く外国人労働者全員が、流ちょうに日本語を話せるとは限りません。利用者さんの不安を招かないために、はじめのうちは周囲がサポートしていくことも大切です。とくに基本的な専門用語や利用者さんの訴えを理解するために必要な言葉などは、積極的に共有していきましょう。

介護職に就く外国人労働者の研修体制はどうすべき?

介護現場で行う外国人労働者への研修は、4つのうちどの制度を利用しているかによって体制が異なります。技能実習生であれば、働きながら業務を覚えるOJTが基本です。技能の移転を目的とするため、原則として指導員が常につきっきりで仕事をこなす必要があります。そのため、介護職員の負担は大きいと言えるでしょう。技能実習生を採用する場合は、日本人介護職員への事前周知・理解が重要になります。

一方それ以外の制度を利用する外国人介護職員であれば、仕事を覚えたら指導員は不要で、日本人介護職員と同じように働くことが可能です。ただし、それぞれの制度によって、勤務できる場所や行える仕事には細かな制約があります。外国人介護職員の採用が決まった段階でどの制度を利用するのかを考慮しながら、研修体制を整えていくとよいでしょう。

今後、介護現場で外国人労働者と働く際に求められることとは

急速に進む高齢化の影響を受け、介護現場で働く外国人労働者が増えてきました。2017年頃より、就労するための制度も拡充されています。また、仕事へのモチベーションの高い外国人介護職員によい影響を受けているという事業所もあるようです。一方で今後は、言葉や文化、宗教の違いなどを尊重しながら共に働くことがより大切になります。未来を見据えて、外国人介護職員に対して理解をしっかりと深めていきましょう。

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