遠距離介護とは?介護職はどのように対応していくのがベスト?

介護が必要な親のサポートを、離れて暮らす子供や親族が行うことを、遠距離介護といいます。核家族が増え、65歳以上の夫婦世帯や1人暮らし世帯が増加傾向にある今、遠距離介護という選択肢を選ぶ方は増えています。この記事では遠距離介護の概要やメリット・デメリットについて解説。介護職はどのように向き合うとよいのかについて、紹介していきます。遠距離介護の利用者さんとそのご家族をサポートする方は、ぜひご覧ください。

【簡単に解説】遠距離介護とは?

遠距離介護とは、高齢の親の介護を、離れて暮らす子供や親族が行うことです。内閣府の「高齢社会白書」の調査によると、かつては3世代の同居が当たり前だった日本でも、時代の変化とともに核家族が増加。2019年には、65歳以上がいる世帯のうち約3割が夫婦のみの世帯になっています。1人で暮らす65歳以上の世帯も合わせると、約6割が子供と同居していません。このように、それぞれが離れて暮らすことが一般的となりつつある今、遠距離介護を選択する方が増えているのです。

コロナ禍で帰省の頻度が減少!新たなサービス利用も

近年は、新型コロナウイルス感染症の流行により、多くの人が思うように帰省できない状況です。それにより、新たなサービスを利用する方も増えてきました。例えば、ビデオ通話を使ったコミュニケーションもその1つ。機械が苦手な方でも直感的に操作しやすいツールが増えており、高齢者でも使いやすい仕様のものが増えてきました。また、高齢者向けの配食サービスや日用品の買い物を代行するサービスなども登場。公的機関が行う介護サービス以外にも、遠距離介護をサポートする仕組みが増えています。

遠距離介護のメリットとは?

ここからは、遠距離介護のメリットについて見ていきましょう。

お互いの生活スタイルを変えずに介護が行える

親には親の、子供には子供の暮らしがあります。住み慣れた土地で過ごしたい親と、別の土地で仕事をもつ子供では、どちらかの生活に呼び寄せるのが難しいことも。遠距離介護であれば、それぞれの生活スタイルを変えることなくサポートできます。近づきすぎると「疲れた」と感じたときも、適度な距離感を保つことで相手を思いやる気持ちを維持しやすいでしょう。

同居だと利用しにくいサービスが使える

介護サービスの中には、同居する家族がいる場合だと利用しにくいサービスもあります。掃除や洗濯、日用品の買い物などを訪問介護のヘルパーに依頼する「生活援助」もその1つです。1人で暮らす高齢者や、同居する家族が病気で介護できない場合に利用できる制度のため、遠距離介護であれば使えるでしょう。また、入居までに期間がかかりやすい特別養護老人ホームも、遠距離介護だと入りやすくなることもあります

医療費や介護費用が軽減されることも

医療費や介護サービスにかかる費用は、世帯所得によって負担額が変わります。そのため、親の年金収入だけの場合と収入のある同居家族がいる場合では、かかる費用が異なるのです。遠距離介護では交通費などがかかるため、必ずしも費用負担が軽減するとは限りませんが、制度上のメリットとして知っておいて損はないでしょう。

遠距離介護のデメリットとは?

遠距離介護をする中では、次のようなデメリットも考慮する必要があります。

緊急時や体調の変化にすぐ対応できない

親と子供、それぞれ暮らす場所が離れている場合には、緊急時などにすぐに駆けつけることは難しいでしょう。また、認知症の初期症状など、同居していると気がつきやすいちょっとした変化にも気づきにくい可能性があります。遠距離介護を選択した方は、緊急時や日々の変化に対応する準備が必要です。遠距離介護の利用者さんがいるデイサービスなどでは、緊急時の対応について利用者さんのご家族と相談しておくことも大切でしょう。

交通費などの費用がかかる

遠距離介護は、交通費などの経済的な負担が大きくなります。介護にかかる交通費は控除の対象にはならないため、より負担を感じやすいでしょう。一方で、遠距離介護の増加に伴い、交通機関の中には介護の経済的な負担軽減を目的としたサービスを行う企業も増えてきました。

例えば、航空会社のJALでは「介護帰省割引」が、ANAでは「介護割引」が利用できます。新幹線や特急では割引制度は見られませんが(※)、遠距離介護経験者が交通費の節約方法をまとめているブログなど、参考にできる情報は豊富です。こうした情報にアンテナをたて、必要に応じて遠距離介護を行う利用者さんのご家族にお伝えすると、役立つこともあるでしょう。
※2022年2月時点

介護職は遠距離介護にどのように向き合うとよい?

遠距離介護を選択する方は、これからも増えていくことが予想されます。ここからは、そうした時代の中で、介護職はどのように向き合っていくとよいのかについて見ていきましょう。

専門職として適切な情報提供を行う

介護をきっかけに仕事を辞めてしまう「介護離職」は、社会問題の1つになっています。こうしたケースの中には、「介護に関する情報をもう少し知っていれば、仕事を辞めずに済んだ」という方も少なくありません。介護の専門職として、ご家族が適切に意思決定できるよう、情報提供を行うことが大切でしょう。

地域の社会資源を活用できるようつないでいく

自治体ごとに利用できる介護サービスは多様化しています。介護職の多くが知っている場所やサービスでも、利用者さんやそのご家族は知らないこともあるでしょう。地域の豊富な社会資源を把握し、活用できるようにしていくことも介護職ができることの1つです。ケアマネジャーを目指す方は、しっかりと把握しておくと安心でしょう。

自分だけで対応しようとしすぎない

遠距離介護では、親の身近にいる介護職員は頼りになる存在です。とくにケアマネジャーは、より多くのサポートを求められるケースがあるかもしれません。一方で、介護職が行える支援には限界があることも事実。例えば、仕事の両立に悩むご家族に対し、職場と交渉することは、介護職にはできないことです。すべてを自分だけで対応しようと思わず、必要に応じて連携できる外部の専門職を頼りましょう。

遠距離介護には適切な情報提供を!抱え込みすぎないことも大切

核家族が増えたことで、これからも遠距離介護を選ぶご家族は増えるでしょう。介護離職も社会問題の1つになっています。介護の現場では、利用者さんのご家族がこうした悩みを抱えている可能性も少なくありません。相談されたときには適切な情報提供を行い、ときには必要な機関へとつなげることでサポートしていきましょう。

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